2018年読み初め、あなたはどんな本を手に取っただろう。読もう読もうと思いつつ、これからという方には、思考と行動が促される本書をお勧めしたい。
勝手ながら、ビジネス書には大きく3種類あると考えている。
1. 聞いたことがないことを教えてくれる
2. 聞いたことがあることを整理して理解を深めてくれる
3. 聞いたことがあることに意味付けして思考や行動を促してくれる
この本はまさに3つ目に該当する。情報過多といわれる毎日、私たちは見聞きしていることの多くを流してしまいがちだ。筆者は、「これ聞いたことあるでしょ」「自分はこう考えるよ」「あなたにとってはこんな意味があるのでは?」と、親戚のお兄さんのように語りかけてくれる。そして、「自分はどうかな?」という問いへ思考と行動を促してくれる。読後も重要な1冊だ。
筆者の尾原氏は、マッキンゼー、リクルート、Google、TEDxからドコモ、楽天まで13職を経て、「リゾートワーカー」としてリゾート地を飛び回りながらクリエイティブに働く生き方を実践している。それを可能にしたのがネットの進化だ。
「この本は、人の心、仲間のあり方を書いた本でありながら、人の良さ、チームの楽しさ、すごさを引き出すことにネットはすごく役に立つんだぜっていう本でもあります」(あとがきより)
前著『ITビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?』の読者にとっては、ビジネスモデルを熱く語る著者のイメージが強いかもしれない。そして、もしかすると、タイトルにある「モチベーション」や「世代」といった言葉に苦手意識を持つ方もいるかもしれない。安心してほしい。いまどきの若い者はといった世代論が展開されているわけではない。私は、筆者の思いは、次の一言に集約されていると感じた。
「あなたは、隣の席で働く人と自分との違いを楽しんでいますか?」
世代を1つの切り口としつつ、自分と異なる他者がいることを受け入れ、相手を想像・理解しながら前向きに関わろうという姿勢を自ら実践している。その実践の鍵が、相手の「モチベーション」とその背景に着目することなのだ。
自分の想定した「モチベーション」で動かない相手は、反応が鈍く思えたり、無力に見えたりすることがある。あなたにとって、「自分と異なる他者」はどんな人たちだろう。筆者の思いは、特に若い世代にあるようだ。
たとえば、ポジティブ心理学の第一人者であるマーティン・
筆者の提案するこの姿勢は、私たち自身に何をもたらすのだろう。
・他者への想像が、翻って自分自身を理解し受け入れることにつながる
・他者との関わりからの気づきが、自分の世界や能力を広げてくれる
・これからの仕事やテクノロジーや人生そのものとの向き合い方を考えさせてくれる
こういった可能性を開いていくのは、私たち一人ひとりだ。世代を問わず同じ今を生きる全ての人に贈る、筆者からのエールに背中を押される1冊だ。
『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』
尾原和啓(著)
幻冬舎
1,620円