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中国人の友達との徹底討論(その1)靖国問題・東京裁判

投稿日:2005/08/03更新日:2019/08/26

中国の友達が初来日した。この友達とは、ダボス会議で出会って、日本と中国のヤングリーダーの会を開催しようと語り合った仲である(コラム:中国の若手リーダーとのネットワーク 参照)。

僕は華僑、香港・台湾の中国人、更には米国在の中国系のアメリカ人には、友達が多い。だが、メインランド・チャイニーズつまり、中国で生まれ育った生粋の中国人は、ほとんど友達がいなかったが、一昨年より、ダボス会議主催のニューアジアンリーダー(NAL)の活動に参加するにつれて、何人かの中国人の友達ができ始めていた。

ただ、いつも会合の合間でせわしなかったので、彼らと日中関係などについてを徹底的に腹を割って議論をする機会が今まで無かった。しかし今回、ダボス会議で知り合った中の一人が、休日を利用して来日することになったのである。米国からフィアンセとお姉さまも呼んでの来日である。3人とも初めての日本訪問である。ビザを取得するために、僕が招待状を書いて、一週間程度滞在することになった。

僕らは、一緒に泊り込み旅行でもしようと計画していた。なぜならば、徹底的に議論をして、分かり合うように努力をするためには、ゆったりとした時間が必要であった。さらに、以前からの構想である民間レベルでの日中(中日)友好フォーラムのようなものを少しでも前に進めたかったからでもある。

色々と計画をしていよいよ来日となった。ところが、彼らが成田に着くなり、東京での震度5(13年ぶりの強さ)の地震があり、さらに強烈な台風が北上して関東地方を直撃するルートをとっていた。

僕は、彼らの来日から二日遅れてシリコンバレーから帰国した。帰国翌日の夜9時過ぎに、グロービスのオリジナルMBAプログラム(GDBA)の理事会(アルムナイ・ボード)終了後すぐに彼が宿泊しているホテルに向かった。その夜は、雨模様でもあったので、比較的街中は静かであった。

僕ら二人は、フロントでがっちりと握手した後、バーに向かった。一対一でバーカウンターに座った。久しぶりの再会ということで、シャンパンのボトルを注文してお祝いすることにした。男二人でシャンパンというのも絵にならないな〜と思ったが、そこは、「友あり遠方より来たる」である。気にせずに、楽しむことにした。

地震のこと、台風のこと、来日後に訪問してきた場所(銀座、明治神宮など)や日本の印象を、聞いてみた。
暫くして、彼は、直球勝負の質問をしてきた。

「なぜ小泉首相は靖国神社に参拝して、国民はそれをどう思っているのか」
靖国問題にはかなり関心が高いようだ。僕は、自分なりの考え方をつたない英語で、一生懸命に正直に話をすることにした。

「小泉首相の靖国参拝に関しては、世論が真二つに分かれている。反対する理由の多くは、近隣諸国との関係を考慮すると参拝すべきでない、という見解である。参拝自体が間違っているから参拝すべきでないというのは、少数意見である。では、僕がどう考えているかというと、靖国神社への参拝は、小泉首相自らが個人の信念に従い決めるべきものであって、他の人がとやかく言う問題ではないと思う。

僕は、靖国神社の近くに住んでいる。子供がよく保育園の散歩で出かけているし、神社の夏祭りである「みたま祭り」にも毎年一家全員浴衣に着替えてでかけている。それだけ近所では親しまれている神社である。

太古の昔より、日本では、亡くなった人々を祀る神社が各地でつくられていた。つまり、死んだら神様になるのである。生きている人々はそこに参拝して、その後の安寧を見守ってもらうという風習があった。日本各地にある神社な誰かしらの魂が祀られていて、そこに僕らが手を合わせてお参りするのである。

僕の場合には、受験の前には湯島天神でお祈りをするし、明治神宮で結婚式を挙げたし、子供が生まれる前に水天宮に行き、正月や初宮詣や七五三では再度明治神宮に行くのである。神社に行くことはそれだけ日本人の生活に浸透しているのである。

これらの神社にはそれぞれ実在していた方々が神として祀られている。死んだ人が神様になり、お参りした方々をお守りするという考え方も当然のように思われてきているのである」。

「あなたが行った明治神宮には、明治天皇が祀られているんだよ」、と友達に言ったらビックリした表情をしていた。それでもかまわず僕は、続けた。

「靖国神社には、明治維新の時代から国家のために戦ってきた人々が祀られている。日本のヒーローである何人か吉田松陰、坂本竜馬、高杉晋作も祀られている。祀られている人々は、家族もある軍人として徴兵されて戦地に赴いた。「死んだら靖国神社に祀られる」、と言うのが一つの暗黙の約束であり、それを国家が慰霊するのが当然のこととして思われてきた。

国家のために死んでいった人々を、国として慰霊するのはある意味当然のことだと思う。さもなければ、誰も国のために命をささげようとは思わないであろう。靖国神社は墓地とは違うので、比較が正しいかどうかはわからないが、たとえて言うと米国大統領がアーリントン墓地に出向き、国家のために命をささげた方々に敬意を評するのと同じだと思う。

そう考えると小泉首相が一国の首相として靖国神社に参拝することは、本人が行きたいならば、彼の信教の自由の範囲であるので、それを辞めさせる理由は無いと思う」。

彼は、その点は納得した様子であったが、当然のごとく切り替えしてきた。彼の表情は穏やかで、一生懸命に理解したいという気持ちでいっぱいに見えた。

「中国政府も靖国神社への参拝自体を問題にしているわけではない。それよりも、A級戦犯が合祀されていることに問題があるのだ。その点に関しては、どう考えるのか?」

「この点に関しては、東京裁判に対する見解によって変わってくると思う。東京裁判の判決に関しては、日本政府はサンフランシスコ平和条約締結に際して裁判判決を受諾している立場ではあるが、その裁判のあり方に関しては、さまざまな見解がある。

まずは、定義を明確にしなければならない。「戦犯」をどう捉えるかである。裁判では二つの罪が問われたのである。平和に対する罪と人道に対する罪である。人道に対する罪であれば、国際法に照らして問題がある行為(例えば捕虜の虐殺・拷問、化学・細菌兵器の使用、民間時の虐殺)は、これらは明らかな戦争犯罪であるので、議論の余地が無い。

ただ問題は平和に対する罪である。国際法の解釈では、戦争を始めたこと自体は戦争犯罪には当たらない、と言われている。もしも戦争を始めたことが戦争犯罪にあたるならば、米国のイラク侵攻自体も戦争犯罪ということになってしまう。

A級戦犯には外交官や政治家もふくまれている。つまり、直接的に戦争行為にたずさわっていないのに、戦犯として処刑された人もいるのである。これでは、勝者による敗者への一方的裁判であるという考え方が残り続けるのは致し方ないことである。

だからと言って、僕らは戦争を正当化する気は毛頭無いし、近隣諸国に対して与えた精神的なダメージを軽視しているわけではない。日本の首相は、既に23回も公式に謝罪をしている。先日の中国の反日デモ後のバンドン会議でも小泉首相は再度謝罪をしたのである。

また、小泉首相が最初に中国に訪問した際には、盧溝橋などを訪問し、中国に対する「侵略」を謝罪しているのである。これだけ常に謝罪をしているのである。もうそろそろ未来志向になっても良いのではないかと思えている」

※参照コラム:中国と韓国の友達へ。Dear Friends in Korea and China

バーカウンターでは、シャンパンボトルがワインクーラーの中に置かれていた。比較的は早いベースで二人が飲み干していっていた。目の前には、牛の燻製が置かれていた。薄く切られたハムをつまみながら、僕ら二人はお互いを理解しようと議論を続けていた。静かであったがとても充実した内容の濃い議論が続いていた。

その②に続く。

2005年7月30日
軽井沢の別荘にて
堀義人

 

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