トニー・ブレアというリーダー、ロンドン同時爆破テロにて思う 

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トニー・ブレアに最初に会ったのは、7年前の1998年初めのことである。英国大使館からトニー・ブレア首相との朝食会への招待状が届き、喜び勇んで会場であるホテルニューオータニに向かったときのことを良く覚えている。(参照コラム:「トニー・ブレアとの朝食会」

僕は、樋口廣太郎氏(元アサヒビール会長)から聞いた逸話によって、首相就任後2年程度しか経っていないトニー・ブレアに興味を持っていたのだ。樋口氏によると、トニー・ブレアが首相になる前の野党労働党党首の時代、年末年始に来日し、樋口氏にどうしても会って欲しいと懇願されたのだという。本来は、年末年始に公務をしたくないのだが、経団連の欧州委員会の委員長を務めている立場から、渋々会うことになった。そして会った相手が、若き日の野党党首のトニー・ブレアであったという。

野党党首のトニー・ブレアが、樋口氏に会いたがった理由は、ただ一つだと言っていた。トニー・ブレアは確信を持って樋口氏に、こう伝えたという。「私は、近い将来、英国の首相になります。その際に、労働党が政権をとったからと言って、不安に思わないで欲しい。首相就任後も、政策は大きくは変更しないので、日本からの投資をぜひ継続して続けて欲しい」、と。樋口氏が、トニー・ブレアの人物に大変感銘を受けたと仰っていたので、僕も関心をよせることになった。

トニー・ブレアが首相になったのは、僕の今の年齢の43歳のときである。トニー・ブレアと7年前に東京で朝食をともにしてから、今年のダボス会議まで直接会うことはなかった。しかも、ダボス会議では、僕が一方的に聴衆として、スピーチを聞いた程度である。トニー・ブレアは、昔に比べて、貫禄がついた感じがしていた。

彼は、ダボス会議初日に、キーノートスピーチを行い、二日目にミュージシャンのボノやマイクロソフトのビル・ゲイツなどと共にアフリカの貧困問題に関するパネル・ディスカッションに参加していた(参照コラムダボス会議の「12の難題」)。

いつも思うのだが、彼のコミュニケーション能力の高さには感服せざるを得ない。ダボス会議で偶然お会いした、トニー・ブレアの専属スピーチライターに直接聞いたのだが、彼は、重要な機会では、スピーチ原稿を自分で書くのだという。そして、何度も何度も練習するそうだ。ダボス会議の感動的なスピーチもロンドンから飛んでくるヘリコプターの中で、推敲していたのであろう、とのこと。やはり、これは努力の賜物か。

さらに、彼は、独特のチャームとウィットで人々を魅了する。オリンピック招致活動でもそのコミュニケーション力は、いかんなく発揮されたのだと思う。彼がシンガポールまで出向き、国際オリンピック委員会(IOC)の委員と面談し、オリンピックの招致活動をしたからこそ、ロンドンが本命パリを抜いて、2012年オリンピックの開催地に決まったのだと思う。こう言っては申し訳ないが、他国の大統領・首相に通訳つきで説得されても、あまり心は動かないのであろう。

やはり、国際舞台では、英語でのコミュニケーション力が重要になる。トニー・ブレアの場合には、フランス語も堪能なので、英語を母国語としていることの優位性を越える国際的なセンスを兼ね備えているのだと思う。

今年、英国がサミットの主催国かつEUの議長国になるにあたり、トニー・ブレアはダボス会議で、「貧困の撲滅そして地球温暖化の防止を二大テーマにする」、と高らかに宣言していた。

そして、その宣言どおり、G8ではその2大テーマを中心に議論される予定だった。だが、その矢先に、ロンドンで同時多発テロが発生した。トニー・ブレアは急遽サミットの会場を離れてロンドンの被災地に向かったのだ。結局、サミットの議題は、テロによって掻き消されてしまった。とても残念である。

彼との朝食会を思い出し、ダボス会議でのあのエネルギッシュなスピーチを聞くにつれて、ぜひ彼には、地球を良い方向に引っ張っていくリーダーとして更なる貢献をお願いしたいと思っている。今や、主要国のリーダーは、世界を引っ張っていくという自負を持たなければならない時代に入っている。国内問題や自国の利害のみを考えた外交をしていると、世界のリーダーとはみなされない。

日本からもぜひ信念を持ったエネルギッシュな政治家を輩出したいものだ。小泉首相は過去のリーダーから比べると格段とよくなった気がしている。改革に怯むことなく挑み、常に自分の言葉でコミュニケーションをしているから、他国のリーダーからも評価は高いと思われる。

そのリーダーを選任するのは、僕ら国民である。国民がもっと声を上げる必要があるのだと思う。20-30代の若者が選挙に行かないのはちょっと残念である。若者達にも立ち上がってもらい、一緒になって、あの改革を阻止しようとしている自民党の守旧派に鉄拳をくらわしたいものである。そういう意識の醸成が、良いリーダーを日本から輩出するエネルギーになっていくのだと思う。

これからは、ブログを通して、そういう声(ボイス)を伝えていく時代になりつつあるのかもしれない。


2005年7月9日
ロンドンの同時テロの犠牲者に冥福を祈りつつ
堀義人

 

京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事株式会社を経て、1992年株式会社グロービス設立。1996年グロービス・キャピタル、1999年 エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年4月、グロービス経営大学院を開学。学長に就任する。若手起業家が集うYEO(Young Entrepreneur's Organization 現EO)日本初代会長、YEOアジア初代代表、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders日本代表、米国ハーバード大学経営大学院アルムナイ・ボード(卒業生理事)等を歴任。現在、経済同友会幹事等を務める。2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設。2011年3月大震災後に、復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げ、翌年一般財団法人KIBOWを組成し、理事長を務める。2013年6月より公益財団法人日本棋院理事。いばらき大使、水戸大使。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人(ごじん)の任務』 (東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)等がある。

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