『MBA生産性をあげる100の基本』――ビジネススキル向上の要諦を凝縮したフレーズ集 

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「学ぶために忘れよ」――あたりまえのことのようで意外に怠っていることかもしれない。

私自身、研修講師としてセッションで次のような問いを投げかけることがある。「既存のやり方に固執せず、どうしたら『自己否定』できると思いますか?」。すると、受講者の多くは、「代替手段が思いつけば、『自己否定』は難しくない」という。「では、どうしたら代替手段が浮かんできますか?」とさらに問いかけると答えに窮する。新しい発想が、捻り出せば何とか出てくるものなら苦労しない。まずは忘れることから始めなければ、何も進まないだろう。

さらに、日頃クリエイティブな発想を求められている人にヒントはないかと聞いてみると、「積極的に社外の人と会う」とか「土地勘のない分野の本を読んでみる」といった行動習慣を持っていたりする。常に新しい刺激に触れることを心掛けているのだ。要は「インプットなくしてアウトプットなし」だ。

グロービスの同僚・嶋田毅の新著『MBA 生産性をあげる100の基本』には、上記のようなビジネスを進める上でのエッセンスを凝縮した100のフレーズが載っている。「学ぶために忘れよ」と「インプットなくしてアウトプットなし」という言葉は、096番と090番、「学び続ける」というカテゴリの中に出てくるフレーズだ。

本書は、「土台スキル」「実行スキル」「成長スキル」の3部構成になっており、「土台スキル」の中に「マインドセット」「情報収集・データ分析」「意思決定」「伝える」の4つの章が、「実行スキル」の中に「PDCAを回す」「やり抜く」の2つの章が、「成長スキル」の中に「仕組み化」「人に任せる」「アイディアを生み、ビジネスをつくる」「学び続ける」の4つの章が設けられている。

たとえば024番「ファクトと直感に頼ってもいいが感情で決めるな」というフレーズが「意思決定」の章に出てくる。これを読むと、自分の判断が感情に左右されていないかを内省するきっかけが得られる。あわせて書き添えられている「感情をコントロールする方法」などEQ(心の知能指数)のノウハウに目を通すことで、気持ちを鎮める実践的方法を知ることもできる。

フレーズごとに関連する知識も確認できるところには、これまでグロービスで出版してきた大半の書籍を手掛けてきた筆者ならではの編集力が活かされている。「伝える」の章に出てくる038番「しゃべらないことこそメッセージになる」を読むと、自分の服装や姿勢、表情や声色など非言語コミュニケーションの構成要素が気になってくる。自身の一挙手一投足が共に働くメンバーにどんな風に伝わっているのかを振り返る契機となるだろう。

経営者の中には、自身の経営論をしたためた「語録」を冊子化し、社員に読み聞かせる人も少なくない。会社単位でやっていなくても、個人として自分自身の「持論」を手帳に書きためている人も多いだろう。本書も、例えるなら、そうした実践知の「汎用版リスト」ともいえよう。

100のフレーズの内、どれが既に自分の引き出しにあって、どれはまだ入っていないかをチェックしてみると、自分自身の得意・不得意、経験の偏りに関する気づきが得られるかもしれない。また折に触れ読み返すことで、知っていてもできていないことを思い出させてくれる内省ガイドとして読むこともできる。さらに、MBAの基礎を合わせて勉強されたい方は、9万部超えのシリーズ前作『MBA 100の基本』を読むと効果的だろう。

新しい年を迎えるにあたり、本書を片手に自身の実践知の棚卸をしてみてはいかがだろう。

『MBA 生産性をあげる100の基本』
嶋田毅 (著)
東洋経済新報社
1620円

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