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今年5月発売の『入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳』から「Lesson15 感情を乗せ、感情に寄り添う」の一部を紹介します。

他人に自分の思うように動いてもらうのは容易ではありません。仮に自分が上司で相手が部下の立場であれば、命令や指示という形で相手を動かすことも可能ではあります。とはいえ、相手がその指示に対して懐疑的であったり、共感を持てないようであれば、モチベーションも上がらず、良いアウトプットにもつながりません

では相手にしっかり理解してもらい、なおかつ前向きにそれに取り組んでもらうにはどうしたらよいでしょうか? ポイントはロジカルに自分の主張や依頼の根拠を示すことと、相手の情動(感情)に働きかけて共感を促したり心を揺さぶることです。

これらは状況によってその比重は変わってきます。すでに自分の意見や指示の必要性が分かっている相手であればくどくど根拠を説明する必要性は下がります。むしろ、相手の情動に働きかけるように、ワクワクするビジョンを語ったり、相手の心に火をつけるような言葉を選ぶ方が効果的です。相手と心象風景や自分の思いを客観的に理解したうえで、これらをバランスよく用いることが必要です。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

感情を乗せ、感情に寄り添う

「ロジックだけでは、人は動かないよね、やっぱり、想いが大事だよね」。よく聞かれるコメントです。

確かに、ロジックだけでは人は動きません。また、相手の想いに寄り添いながら話をすることも必要です。では、「想い」はどのように表現していけばよいのでしょうか。

事例

(A)
これからプログラミングを学ほうと考えているんだ。
なぜなら、これからの必須スキルになってきているから。

(B)
これからプログラミングを学ほうと考えているんだ。
なぜなら、これからの必須スキルになってきているから。
お年寄りにも使って喜んでもらえるアプリを作りたいんだ。

前述の(A)と(B)2つの文の違いは、「お年寄りにも使って喜んでもらえるアプリを作りたいんだ」という一言があるかどうかです。どういう目的でプログラミングを学ぼうと考えているのかが加わっていると捉えることもできます。

ここでは、言いたいことに対して、論理性の観点からのメッセージか、感情の観点からのメッセージかという点で整理をしてみます。

まず、「プログラミングを学ぼうと考えているんだ」は、この人が今、取り組もうとしていることです。この会話を通じて伝えたいことと考えられます。

それに対して、(A)では、「なぜなら、必須スキルになってきているから」とその理由を説明しています。これは言い換えると、必要性が高まっているから学ぼうという意味で、論理的につながりがある内容です。

それに対して(B)で追加されている「お年寄りにも使って喜んでもらえるアプリを作りたいんだ」というのは、論理的な帰結というよりは、感情的に何かやりたいかの観点でのメッセージです。

論理性は聞き手の納得につながりますが、納得だけで人は動く訳ではありません。一方、感情は共感につながります。納得と共感を揃えることを意識していくようにしましょう。

(A)
これからプログラミングを学ほうと考えているんだ。
なぜなら、これからの必須スキルになってきているから。(論理)

(B)
これからプログラミングを学ほうと考えているんだ。
なぜなら、これからの必須スキルになってきているから。(論理)
お年寄りにも使って喜んでもらえるアプリを作りたいんだ。(感情)

POINT
  1. 言いたいことを明確にする
  2. 論理性の軸で「1.」の理由を明確にする
  3. 感情の軸でどのようなことを加えればよいかを考える

入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳
著・編集:グロービス (著)、岡重文(著) 発行日:2023/5/31 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社

グロービス出版
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