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パッションこそが良い仮説の原動力

投稿日:2017/11/25更新日:2019/04/09

『ビジネス仮説力の磨き方』から「仮説とパッション」を紹介します。

仮説、特に新事業の仮説は、机の上で淡々と仕事をしていたら閃くといったものではありません。積極的に人に話を聞き、実際に潜在顧客をしっかり観察するからこそ生まれてくるといった部分が大です。また、誰よりもその件について考え抜いたからこそ、最も的を射た仮説に到達するということも少なくありません。そして、こうした行動や粘り、諦めない執着心を生む源泉は、結局は自分自身のパッション(情熱)、あるいは渇望です。

よくパッションは個人の資質として片付けられることも多いですが、そんなことはありません。一般のビジネスパーソンであっても、対象を適切に選び、自らを鼓舞する自問を繰り返すことで、ある程度パッションを高めることは可能です。ライバルとの大きな差を生むのは、IQ以上にパッションであるという点は再確認しておきたいものです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

仮説とパッション

本章の最後に、意味・意義のある仮説を立てるための心構えとして、パッション(情熱)を持つことの重要性を強く指摘しておきたいと思います。

パッションは、「強い内発的動機」と言い換えてもかまいません。これがないと、結局はものの見方が表層的になってしまうし、集中力も出ません。結果として、ありきたりの仮説しか出てこないからです。パッションを持つことの効果についてもう少し整理して考えてみましょう。

創造性を高める

第一に、パッションは集中力やエネルギーを高め、好奇心や能力開発、そして創造性へとつながっていきます(これは最近の研究でも明らかになってきています)。パッションがあるからこそ、知識や情報を貪欲に吸収し、それまでに誰も考えつかなかったような新しい仮説が生まれてくるのです。

グラミン銀行の創始者でノーベル平和賞を受賞した社会起業家のムハマド・ユヌス氏や、アップルを率いるスティーブ・ジョブズ氏などはその典型でしょう(余談ではありますが、ジョブズ氏が2005年にスタンフォード大学卒業式の講演で学生たちに贈ったかの有名なメッセージ、”Stay hungry, stay foolish.”は私も大好きな言葉です)。

筆者はアメリカン・フットボールも好きなのですが、近代フットボールを変えたとまで言われるNFLの偉大なイノベーター・ヘッドコーチの故ビル・ウォルシュ氏も情熱と創意の人でした。筆者が好きな彼のエピソードにこんなものがあります。ウォルシュ氏が息抜きで奥さんとダンスパーティに出かけたとき、奥さんの肩に回した指が、思わず新しいパス攻撃パターンを描いていました。奥さんはなかば呆れながら「それでそのプレイは成功したの?」と聞いたそうです。そこまでのパッションと集中力が、彼を歴史に残るパイオニアたらしめたのです。

行動を促す

第二に、パッションは行動を促します。ビジネスを大きく変えるような仮説は、机にかじりついて考えるだけではなかなか出てきません。実際に街に出かけて顧客の動向を見たり、さまざまな人々と議論をしたりするなかで、その種が育っていきます。

これらは難しいことではないにもかかわらず、意外におっくうなもので、強い動機がないとなかなか実行できないのです。しかし行動をすることは、検証のスピードを速めることにもつながり、仮説の再構築を促します。

人を惹きつける

第三に、パッション(を持っている人)は人を惹きつけます。そこには自社の同僚だけではなく、顧客や外部パートナーも含まれてくるでしょう。

そうした人々がもたらしてくれる情報や新たな視点は、仮説を作りブラッシュアップしていくうえで大きな力となります。もちろん、それがたとえば事業アイデアであれば、実行の際にも大きな味方となるのは言うまでもありません。

「パッションを持つこと=ひたすら真面目にやること」ではない

創造力に関する書籍などを読むと、「新しいアイデアや仮説を生むために、歯を食いしばって考えることは必要ない」「リラックスできる環境が必要」などと書いてあるケースが多いようです。これらは一見、パッションを持つということと相反するようにも見えますが、私は必ずしもそうは思いません。

確かに、強いパッションが視野狭窄や独善をもたらしたり、過度な長時間労働による生産性低下を引き起こしたりするケースは少なくありません。しかし、これらは工夫で回避できる話であって、本質的な二律背反ではありません。強いパッションを持つからこそ、他人(時には素人)の話にも耳を傾け、また強制的にリラックスできるようにする、という方法論を検討することが望まれます。

繰り返しますが、パッションがあるからこそ、誰も考えなかった領域にまで踏み込んで物事を考えようとするのです。

パッションを高める

本書は仮説思考を主眼としており、パッションそのものは主眼ではありません。したがって、さまざまなテクニックは専門書に譲り、ここでは「自分の心の声を聞く」という点に絞って話をしましょう。

情熱あるいは内発的な動機は、人に与えられるものではありません。他人は、きっかけを与えることはできるかもしれませんが、情熱そのものを喚起し続けることはできません。あくまで自分で高め続ける必要があります。そしてパッションを高めるための最大のポイントは、自分が真にやりたいことを発見するとともに、自分自身を駆り立てる自問を繰り返すことです。

そのためには、図に示したような質問を自分に投げかけてみるといいでしょう(これらの質問はあくまで一例です)。

(本項担当執筆者:嶋田毅)

 

『ビジネス仮説力の磨き方』
グロービス経営大学院/嶋田毅  (著)
1600円(税込1728円)

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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