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起業家を選ぶ際の判断軸は多様な「面白さ」

投稿日:2023/04/28

昨年12月発売の『ベンチャーキャピタルの実務』から「Column GCPのキャピタリストが『面白い』と感じる起業家とは?」を紹介します。

VCによるベンチャー企業への投資は、ビジネスモデルへの投資という以上に起業家や経営チームへの投資という側面が大きいものです。通常、ビジネスモデルはピボット(方向転換)することが可能ですが、起業家を入れ替えることは難しいことからもそれがわかるでしょう。

では、キャピタリストはどのような起業家であれば投資したいと思うのでしょうか。あるいは投資ステージ以前の早い段階から「青田買い」的に付き合っておきたいと思うのでしょうか? 重要なキーワードは「面白さ」です。

これは話術などがユーモラスといった意味ではありません。「この人は見えている世界が違う」「何か大きなことを成し遂げるだろう」といった意味での面白さです。英語のinterestingに近い意味合いと考えるといいでしょう。

ここで重要なのは、キャピタリストによって彼/彼女が感じる起業家の「面白さ」が異なるという点です。ビジョンの壮大さ重視の人もいれば、時代に対する先見性重視の人もいます。
多様な面白さが集まることで、VCとしても多様性を担保することができ、リスクヘッジにもつながるのです。 (このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

GCPのキャピタリストが「面白い」と感じる起業家とは?

年間何百人もの人と会う中で、公私の分け目なく付き合える相手は、そう多いわけではない。また、ステージが早いほど、事業やビジネスモデルは完成していない。

そのため、自然体で「この企業は面白い」「この人は何かすごいことをしでかしそうだ」「なぜか馬が合う」という感覚が大事になる。ビジネス上の打算ではなく、面白い人と楽しいから付き合っているうちに、エコシステムのど真ん中で面白い人たちとつながることができ、必ず何か面白いことが始まる。また、面白いと思う対象は必ずしも起業家に限らない。大企業の中にいる人でも、将来的には何らかのつながりが出てくる可能性がある。

キャピタリストによって、当然ながら「面白い」の定義は異なる。そうした多様性があるからこそ、ファンド全体で見ると、いろいろなタイプの「面白い」に投資を行い、不確実性の塊であるベンチャー投資においてリスク分散を図ることができる。

実際に、GCPのキャピタリストに、面白いと思う起業家像を挙げてもらった。

  • スケールの大きさと言語化能力

    スタートアップは結局、起業家が描いたビジョン、ミッション以上のものにはならない。起業家のビジョン、ミッションに共感して入ってきたメンバーと共にそれを成し遂げるので、描けるものの壮大さと魅力がすごく大事である。
    また、一言で語れるビジョンよりも、いろいろなハードルを乗り越えてその事業ないしは営みが大きく成長したときに、我々の生活がどのように変わるのかについて、映像を見ているかのようにごく細部まで多くを語れる人が面白い。
  • 強い好奇心と一次情報への執着

    壮大なビジョン、ミッションは重要ではあるが、「絵に描いた餅」ではなく、現実的なプランに落とし込めるかどうかがそれ以上に重要である。ビジョンと実現可能な戦略の双方を伴う起業家は、目的達成のためにどんな些細なことでも本質を理解しようとする好奇心を有しており、また、伝聞の情報に踊らされることなくしっかりと一次情報を取りに行く姿勢が一貫している。その結果、戦略の解像度が高まり、事業の成功確率及び仲間集めの説得力が増していると思われる。

  • 必ずしもバランス型でなくても良い、足りない部分はチームで補完

    レーダーチャートを描いてみたときに、突出した部分もあれば、へこんでいる部分もあり、ややバランスが崩れているほうが、何かをしでかしそうな面白さを感じる。また、異なる領域で能力や実績を有する仲間を集める点においても、必ずしも全方位型のリーダーである必要はない。同様にキャピタリストとしても、起業家が必ずしも得意としていない領域を埋める支援ができ、補完関係になれる。

  • ブレない大局観、柔軟な戦略性、適切な時間軸のフレーミング

    「面白い」を出発点としつつも、成功する起業家にはこの3つの特徴がある。

    ブレない大局観とは、大きな方向感として、この市場が伸びると見通せることを指す。たとえば米国でiPhoneが登場した瞬間に、スタンダードとしてこのデバイスがガラケーからスマホに置き換わる(シフトする)だろうと考える。そして、デバイスシフトが起きたときに、ガラケーではiモードメールがメッセージングツールとしてデファクトになっているなら、スマホではiモードメッセージの代替のメッセージングサービスにビジネスチャンスがありそうだと思いつく。しかしすぐに、後発プレーヤーが大量CMを投下して、メッセージングを制覇するかもしれない。それでも、スマホがデファクトになりうるという大局観を変えずに、少しピボットしてスマホベースの新しいアプリ開発をしようと考える。

    このように、大きな方向性は変えずに、走りながら考える柔軟性を持ち、外部環境を読みながら合理的な戦略を立てられることは得がたい能力である。人より一歩先では早すぎるし、人と同じペースでは乗り遅れる。半歩先の未来を対象にするのがミソである。

ベンチャーキャピタルの実務

著・編集:グロービス・キャピタル・パートナーズ (著), 福島 智史 (編集) 発行日:2022/11/25 価格:3,740円 発行元:東洋経済新報社

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