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ベンチャー企業の成長ステージごとの課題とは

投稿日:2023/04/07

昨年12月発売の『ベンチャーキャピタルの実務』から「Chapter3 Section1 成長ステージによって異なる支援ニーズ」を紹介します。

ベンチャーキャピタル(VC)の仕事の中でも、投資後の経営支援は非常に重要な意味を持ちます。主役はもちろんベンチャー企業ですが、彼らが自分たちだけではクリアできない課題を乗り越えられるようにすべく、VCはさまざまなサポートを提供します。

ここで大事なポイントは、成長ステージによってベンチャー企業の抱える課題は変化し、それを見据えたうえで適切なサポートを行う必要があるということです。子育てに例えれば、よちよち歩きの子どもと、成人間近の青年では当然必要なサポートは変わってくるということです。

一部のシリアルアントレプレナー(何度も起業する人)を除くと、起業家は過去にベンチャー企業を立ち上げた経験がありません。それゆえ、いつどのような課題が降りかかってくるかを適切に見極めることは困難です。それに対してVCは過去の経験から典型的にベンチャー企業が陥る罠を知っています。それゆえ、成長ステージに応じた適切な支援ができるのです。

良いVCは、そうしたノウハウはもちろん、課題解決のためのネットワーク(例:人材紹介会社との関係)を持ち、さらに時代の変化に合わせて自らのサービス内容も拡張・高度化していくことで、最適なサービスを提供していくのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

成長ステージによって異なる支援ニーズ

どのタイミングのスタートアップを対象と捉えるかによって、投資金額の規模、リスク、必要な支援などが変わり、VCの投資戦略やスタイルの差となる。

スタートアップの多くは、当初は自分や家族から集めた資金で起業し、初期的なプロダクトができた段階で外部のエンジェル投資家やシードのVCから数千万円程度を調達する。起業家が事業コンセプトに沿って初期的なプロダクトを開発し、PMF(プロダクト・マーケットフィット)、すなわちターゲットユーザーにとってプロダクトが必須になっており収益化できる状態を実現させるために、VCはペースメーカーや応援者としての役割を担う。

その後、単一のプロダクトから事業化し、スケージング(規模拡大)に向けた要素の検証活動(ユニットエコノミクスの確立、再現性の確立、グロースドライバーの特定等)に舵を切っていく。そして数億円単位の資金を調達し、事業化に向けた体制構築を進める。VCの支援内容は、事業化・スケーリングに向けた課題抽出、戦略立案、仮説検証の支援、後述の経営資源の提供などに変化する。

事業化が順調に進み、本格的なスケーリングを目指そうとする段階では、再び数億円単位から数十億円単位で資金を調達し、組織規模拡大のための人材採用、顧客獲得に向けたマーケティング活動などに資金を投下していく。VCの支援内容は、戦略立案や課題抽出もさることながら、組織や事業の拡大に関する支援が主なテーマとなる。

さらに順調に規模化していくと、IPOを意識するフェーズに入り、上場後に社会の公器たる会社になるためのガバナンス整備などが必要となる。社外取締役として取締役会を構成するVCにおいては、ガバナンスを効かせながらIPOへの道のりを応援する立場へと変わっていく。

スタートアップ・エコシステムの発展がもたらす影響

このように成長とともに、スタートアップにVCが果たす役割は変わっていくが、最近では新たに無視できない要素がある。それはスタートアップ・エコシステムの発展がもたらす影響だ。

特に2010年代以降、エグジット時の企業価値が数十億~数百億円から、数百億~数千億円へと拡大し、マザーズ上場時に時価総額でいきなり上位に食い込むスタートアップが続々と出現している。

こうした大型スタートアップが育つのは、未上場市場でのリスクマネーの供給量が増え、上場前でも資金調達をしやすい環境があるからだ。実際に、従前の未上場市場での調達規模は数億~数十億円だったが、近年は数十億円、時には数百億円の調達も可能になっている。それとともに、事業展開のスコープを広げて、海外市場も視野に入れた事業を目指すスタートアップが増えている。

より大きな市場で、より多くの資金を活用しながら、より大きな事業を経営するとなれば、経営チームにもこれまで以上に高い要求水準が求められる。従来も事業のステージを上げるために学習や成長の必要はあったが、成長角度がさらに急勾配になった結果、継続的なトランスフォーメーション(変容)が不可欠になり、創業時メンバーがただ学習するだけでは必要なスキルが追いつかなくなってきた。経営チームに参画するプロ人材がさらに増えないと、適切な事業運営ができなくなりつつあるのだ。
過去にはあまり見られなかったことだが、スタートアップ・エコシステムの発展により、最近では上場企業や外資系日本法人の役員レベルなど、従来であればバイアウトファンドの投資先である規模の大きな企業で経営層を務めたプロ人材などが参画するケースが増えている。 このようなスタートアップ・エコシステムの変化に応じて、社外取締役としての経営参画を通じた経営支援に加えて、経営支援の専門チームを擁するなど、近年VCとしての支援体制を進化・拡張させる動きが活発になっている。


ベンチャーキャピタルの実務

著・編集:グロービス・キャピタル・パートナーズ (著), 福島 智史 (編集) 発行日:2022/11/25 価格:3,740円 発行元:東洋経済新報社

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