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どれだけ優秀なツールも魔法の杖ではない

投稿日:2023/03/03更新日:2023/03/13

昨年9月発売の『改定4版 グロービスMBAアカウンティング』から「第4章2 BSC導入を成功に導く」を紹介します。

BSC(バランススコアカード)は第一義的には戦略遂行のためのマネジメントツールです。「20世紀後半の管理会計の3大発明」の中でも非常に優れものであり、発案者であるノートンやキャプランが当初想定した以上のさまざまな副次的効果(人々の意識変容を促すなど)をもたらすこともわかってきました。特にアメリカでは活用されています。

しかし、特に我が国においてこのツールが有効に用いられているかというと残念ながらNOです。企業を支援してくれる、BSCに長けたコンサルタントや学者などが少ないといった要因もありますが、導入や運営がアバウトで組織に浸透しなかったというケースがほとんどです。その典型例は本文で示しますが、効果があるツールほど、その導入は大変ということは多いものです。

特に現場からすると、新しいマネジメントツールに最初は違和感を抱くものです。そもそもそれは何なのか(What)、なぜ導入するのか(Why)、どう使えばいいのか(How)をしつこくかみ砕いて説明しないと現場には浸透しないのです。どのような良いツールであっても、結局は経営陣がその設計と運用にコミットしなければ形骸化してしまうと点は強く意識すべきでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

BSC導入を成功に導く

BSCは非常にパワフルだが、ただ導入すればそれだけで企業の業績が上かっていくような魔法のツールではない。実際、BSCを導入しても、それを活かし切れない企業は少なくない。BSC導入に失敗する典型的パターンとしては、次のようなものが挙げられる。

  • トップのコミットメントがない
    BSCの導入に失敗するパターンとしてまず挙げられるのは、トップのコミットメントがないケースだ。経営者が「BSCが流行っていると聞いたから、わが社でも取り入れよう」と安易に導入を決めるケースは多いが、BSCの導入にはそれなりの手間暇がかかるし、結果が出るまでにはタイムラグが生じるため、トップのコミットメントは必要条件である。トップが真剣に向き合わない場合、大抵は効果を発揮できないまま形骸化してしまう。
  • 業績評価のみに用いてしまう
    BSCは多様な効用をもたらすツールである。一方で、各事業部や従業員の評価するツールとしても使い勝手が良いために、単なる人事考課の採点シートとしてしか使われなくなってしまうことが多い。戦略の本質を理解せずに、KPIとして挙がっている数字しか気にしなくなってしまうと、かえって従業員の偏った行動を促しかねない。
  • ICTシステムとの連携が弱い
    20~30個ものKPIを測定し適切かつタイムリーに処理するには、ICTシステムとの連携が必要だが、そうしたインフラとの連携に問題があるケースは決して少なくない(特に中堅企業の場合)。数字は集められていても可視化の工夫が弱く、現場に浸透しないというケースもある。
  • 導入時のスピード感や設計が不適切
    一気にBSCを導入すると、失敗した時のリスクが大きすぎることがある。特に大企業であればいきなり全社で始めるのではなく、まずは子会社や一部の部署にテスト的に導入するという方法も効果的なことが多い。BSCの導入初期は、戦略マップやKPIの完成度が低いことも多い。そのため必要に応じて随時それをアップデートする必要があるのだが、これも拙速に行うとかえって現場は混乱してしまう。正確さを追うのか、現場のわかりやすさを追うのかの判断は容易ではない。
  • BSCが更新されない
    初年度の導入時にその内容が二転三転するのは問題だが、数年単位で見た時に、経営環境が大きく変わっているにもかかわらず、戦略マップが更新されなかったり、KPIがそのままだったりするのも問題である。ここでもPDCAを意識し、実効ある戦略マップやKPIに進化させていくマインドや仕掛けが必要だ。
  • BSC至上主義になってしまう
    BSCは適切に用いれば大きな効果をもたらすが、往々にしてBSCを導入することが目的化してしまうことがある。手間暇がかかるツールほどその傾向は強いがBSCはまさにそれに当てはまる。手段やツールありきではなく、そもそも何のためにBSCを導入するのかという経営陣の意識のすり合わせが必要だ。

こうした失敗パターンを踏まえて、BSCの展開を加速するポイントをまとめると次のようになるだろう。

  • マネジメントレベルでBSC導入の目的を明確化し、従業員と共有する
  • 可能な限り初期段階で納得性の高い戦略マップやKPIを作る
  • BSCの意義、使い方、成果などに関してしつこくコミュニケーションをとる
  • ICTシステムにより適切にサポートする

現場の従業員にとっては、BSCと言われてもいきなり上から新しい評価シートが降ってくるようにしか感じられないことが多いものだ。そうした「やらされ感」がある状態では、とてもBSCは浸透しない。 BSCの意義を始め、従業員としっかりコミュニケーションを行うことが求められる。

著・編集:グロービス経営大学院 発行日:2022/9/27 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社

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