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利益管理は細かすぎても大雑把すぎてもダメ

投稿日:2023/02/17更新日:2023/03/13

昨年9月発売の『改定4版 グロービスMBAアカウンティング』から「第3章5 コラム:適切な利益管理軸定義」を紹介します。

企業が最終的に利益を上げるうえで、製品別や事業別、あるいは地域別といった単位でどのくらい利益が上がっているのかをタイムリーに把握することは必須といえるでしょう。

難しいのは、その利益管理単位をどう設定するかです。たとえば製品軸で利益を把握する場合、大雑把すぎる括りでは、ある製品の赤字が他の製品の黒字に埋もれてしまって捕捉できないことがあります。これでは利益の最大化はできません。

一方で軸が細かすぎると、数字を捕捉するための管理費用がかかりますし、共有コストの振り分けの前提の置き方などで揉めることもあります。飲料会社であれば、あるブランドの350mlのペットボトル商品と500mlのペットボトル商品をわざわざ分けなくてもいいという例もあるでしょう。

最適な利益管理軸の設定はなかなか難しいですが、だからこそ工夫することで利益の最大化を図りたいものです。 (このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

適切な利益管理軸定義

管理会計において利益を管理することの目的は、事業利益の計算、分析を通じてその事業の問題点を識別し、有効な対応策の検討につなげることである。そのためには、①利益管理の仕組みが事業のビジネスモデルと整合していること、②利益管理の単位ごとに責任が明らかになっていること、これら2つの要件を満たす必要がある。

①利益管理の仕組みが事業のビジネスモデルと整合していること

例えば販売売切り型のビジネスモデルと、サブスクリプション型のビジネスモデルとでは、どのような製品・サービスで、どのチャネルで、どうやって利益を得るのか、という利益獲得の仕組みは大きく異なる。これにより、売上と費用を集計する単位やモニタリングすべき指標も異なることが考えられる。どんなに卓越したビジネスモデルを構築していても、それに合った利益管理方法を採用していなければ、その事業における経営の非効率などの問題点を正確に把握することができず、競争に打ち勝つことはできない。

②利益管理の単位ごとに責任が明らかになっていること

仮に利益管理を行うことによって経営上の問題点が明らかになっても、それが誰(どの事業、どの部門、どの管理者等)の責任なのかが曖昧になっていては適切な改善活動は期待できず、その利益管理の仕組みは機能しているとは言えない。利益管理の仕組みに基づく業績評価制度に企業の組織及び組織の責任者の責任・権限が一致していることで、問題の責任の所在が明確になり改善活動が進み、ひいては企業目標の実現を確かなものにする。

言い換えれば、一見してわかりやすそうに見え、かつては実際に有効であった利益管理方法でも、上記の要件を満たしていないのであれば見直しが必要ということである。

甲社の事例を紹介したい。甲社は税理士や弁護士事務所向けに業務支援システムAの製造販売を行っている。モニターやキーボード、サーバー等のハードウェアと専用プログラムをセットで販売し、販売後は製品に対する保守サービスを提供することで収入を得るビジネスモデルを構築している。新製品は販売開始後、毎年バージョンアップ(若干の機能のカスタマイズ)が行われている。 製品Aの損益構造を見てみると以下の通りである。

  • 無形固定資産(研究開発費)の減価償却は定額法、耐用年数2年としている
  • 本体(プログラムとハードウェア)の販売数量、販売単価、その他費用の発生額は毎期一定としている

甲社では、製品別に利益の管理単位を設定しており、月次及び年次で期間損益を計算していた。しかし、毎年バージョンアップは行っているものの、同じ製品であり、販売数量、販売価格も一定であるにもかかわらず、保守サービス収入は販売数量の累積に比例して増加し、また各期に計上される減価償却費も期によって異なるため、利益はその影響を受けて変動し、期間比較をしても問題点の把握につなげることが難しかった。

甲社ではこれを解決するために製品別にライフサイクル(研究開発-原材料購入-製造-販売-保守)全体を通じた収支を求め利益管理する仕組みを追加し、長期の視点で採算性を管理するように改善を行った。

また、甲社のもう1つの問題として、製品の損益を構成する各費目について責任部門を設定していなかったために、ある製品の採算性が悪いと感じていても、他の製品の利益によってカバーされ結果的に製品全体で利益が出ていれば良しとする、ある意味無責任な経営が行われていた。これについても、費目ごとに責任部門を明確にし、職務分掌の中でその役割を明確に定義することにより、「数字が悪かった原因はこれだ」ということをはっきり指摘できる文化へと変化を遂げている。

改定4版 グロービスMBAアカウンティング
著・編集:グロービス経営大学院 発行日:2022/9/27 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社

グロービス出版
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  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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