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いまや「IFRSを知らない」では済ませられない

投稿日:2023/01/13更新日:2023/03/13

今年9月発売の『改定4版 グロービスMBAアカウンティング』から「第1章補論:国際財務報告基準(IFRS)の特徴」を紹介します。

筆者が若い頃は日本基準の財務諸表の読み方さえ知っておけば、ビジネスパーソンとしてそれほど問題はありませんでした。しかも当時の日本基準の財務諸表のルールはシンプルで、比較的門外漢でも理解するのは容易でした。しかし時代は変わりました。グローバル展開が当たり前になり、また外国人投資家の重要度が増したこともあり、日本企業でもIFRSを採用する企業が増えています。

ここで悩ましいのは、IFRSはその情報開示のフィロソフィー自体が日本基準やアメリカ基準の発想とは異なるという点です。「資産負債アプローチ」などはその代表的なものです。それゆえ、細かい差異について理解することも大切ですが、根源にあるフィロソフィーを理解することがより重要となるのです。それを理解したうえで、IFRSの財務諸表をある程度読みこなせることが昨今のビジネスパーソンには求められています。 (このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

国際財務報告基準(IFRS)の特徴

IFRSの特徴として以下のものが挙げられる。

①原則主義

IFRSでは基本的に概念に沿った原則的な会計処理の方法のみが示され、数値基準を含む詳細な取り扱いは設けないとする原則主義をとっている。原則主義の下では適切に把握された実態に沿って、原則的な方法を適用し、会計処理を行っていく。これに対する概念として細則主義があり、これは会計基準や解釈指針などで広範にわたり詳細な判断基準や数値基準を示す方法である。IFRSの原則主義においては全体として経営者の判断の必要性が増すため、基準自体はシンプルになる一方、細則に捉われずより実態にあった会計処理を可能とする利点がある。一方、判断の余地を多く残すため、状況や判断によって細かい会計処理方法が異なる状況も生じ得ることに留意が必要である。

②資産負債アプローチ

IFRSでは、財務諸表の構成要素を定義するにあたり、ます資産及び負債を定義し、その差額を純資産とする。さらに、資本取引を除く資産・負債の増減から収益と費用を定義し、結果としての利益を求めている。このような考え方を資産負債アプローチという。これに対し、収益及び費用を先に定義し、そこから利益を算出する考え方を収益費用アプローチという。

③公正価値

IFRSにおいては、公正価値という概念がさまざまな会計処理において用いられている。 IFRSの特徴として、公正価値につき一律の考え方の基準を定め、さまざまな会計処理において共通してこの公正価値の考え方を採用しているという点が挙げられる。公正価値とは、測定日時点で、市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取るであろう価格または負債を移転するために支払うであろう価格である。すなわち、公正価値は出口価格(売却価値)であり、入口価格(購入価値)とは異なる概念である。公正価値測定の評価技法としては、以下の方法がある。市場データ等、観察可能なインプットを最大限用いて測定を行うこととされているが、市場相場がないから公正価値が測定できないというものではないことに留意が必要である。

・マーケット・アプローチ:同一または類似の項目の市場価格に基づく評価

・インカム・アプローチ:将来キャッシュフローの現在価値に基づく評価

・コスト・アプローチ:資産の用役能力の再調達にあたり必要な金額に基づく評価

④国際財務報告基準(IFRS)の財務諸表

IFRSにおける財務諸表は主に財政状態計算書(Statement of financial position)、純損益及びその他の包括利益計算書(Statement of profit f loss and other comprehensive income)、キャッシュフロー計算書(Statement of cashflow)から構成される。それぞれ、日本基準における貸借対照表、損益及び包括利益計算書、キャッシュフロー計算書に相当するものである。各財務諸表の機能としては日本基準とIFRSで大きく異なるものではないが、以下のような異なる特徴があることに留意が必要である。

・財政状態計算書

日本基準では主に流動性配列法(流動資産を上部に記載し、固定資産を下部に記載する方法)が取られる一方、IFRSでは項目を表示する順序や様式は定められておらず、固定性配列法(固定資産を上部に記載し、流動資産を下部に記載する方法)も採用できる。

・純損益及びその他の包括利益計算書

日本基準では特別損益の区分があるが、IFRSでは特別損益という区分での損益計上が認められない。したがって、日本基準にある経常損益という段階利益も表示されないこととなる。なお、IFRSでも日本基準と同様、純損益とその他の包括利益を一括の表とする形式、損益計算書と包括利益計算書を別個の表とする形式の双方が認められている。

改定4版 グロービスMBAアカウンティング
著・編集:グロービス経営大学院 発行日:2022/9/27 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社

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