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プレゼンでの「ぶっつけ本番」はミスのもと

投稿日:2017/10/28更新日:2019/04/09

『グロービスMBAで教えている プレゼンの技術』から「リハーサルでのチェックポイント」を紹介します。

何事も、ぶっつけ本番にはリスクが伴います。歌手や舞台俳優といったプロが事前にリハーサルするのと同様、ビジネスパーソンも、「演じる」ことが求められる場面ではリハーサルをすることでそのリスクを小さくすることはやはり必要です。筆者も、それまでにやったことのないタイプのプレゼンテーションをする際などは、ラフなリハーサルをすることを習慣にしています。リハーサルも、数をこなしていくうちに、完全に同じことをしなくても、ある程度は一度やったのと同じ効果が得られるようになるものです。特に経験が少ないうちは、時間が許す範囲でリハーサルすることが本番でのパフォーマンス向上に寄与することを意識しましょう。特にあがり症の人や、伝える内容が複雑な場合などは、ぜひリハーサルすることをお勧めします。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

リハーサルでのチェックポイント

当日の実演を上手く行うためには、リハーサルを入念に行うべきです。よくスポーツの世界では練習でできないことは本番でできるわけがないと言われますが、入念なリハーサルがプレゼンテーションの成否を分けると言っても過言ではありません。手を抜かず、リハーサルを繰り返しましょう。リハーサルを通じて伝えたいことに自信と情熱を持ち、完成度を高めることが重要です。

リハーサルの目的は

一口にリハーサルと言っても、目的とする段階によって大きく二つに分かれます。一つは、本番さながらの状況を作って、それにあらかじめ慣れておくこと、もう一つは、話す内容・話し方を体に覚えさせることです。

前者については、本番になって想定と違うことがあって慌ててしまうという状況を、いかに避けられるかがポイントです。たとえば、会場の広さと座席の配置だけをとっても、話し手から見える光景は大きく異なります。同じ参加人数30名でも、「広い講堂の前の方にパラパラと座り後方には空席が広がっている」という状況と、「狭い会議室にすし詰め状態で、何人かは普段使わないようなパイプ椅子を出してきて壁際で聞いている」という状況では、声の大きさやトーン、聴衆を見渡す素振りなどが変わってくるのはおわかりでしょう。

ほかにも、スクリーンやホワイトボードの大ささや位置、話し手が話す際に動けるスペースの広さ、マイク(使う場合)の使い勝手、部屋の明るさ(と、それに影響を及ぼす、天井の高さや窓の大きさと向き)など、本番の環境に影響を及ぼす要素は、さまざまなものがあります。

スクリーンに映し出された画像を指しながら話すとき、自分はどの位置に立っていたらよいのかとか、話しながら歩き回れるようなスペースはあるのか、それとも演台などがあって立ち位置は限定されるのか、声は後ろの方まで届くか、最も遠い席の人から見てスクリーンの資料の字は読めるか、部屋の明るさでスクリーンの字は読めるか、というように、実際の会場に立ってみないとわからないことというのは意外に多いのです。

つまり、前者のリハーサルのゴールは、本番でやりそうな行動は最初から最後まで一通りやってみて、何か起こるか、どう見えるか(聞こえるか)試してみること、となります。

もちろん、必ずしも本番同様の会場であらかじめリハーサルができる状況ばかりとは限りませんが、できる範囲ならば少なくとも一回は実際の会場を使っておくことはオススメです。

「中身を覚える」タイプのリハーサル時のチェックポイント

さて、「本番さながら」のリハーサルは場所を選びますが、「内容・話し方を覚える」リハーサルは、必ずしも本番と同じ場所で行う必要はありません。場所の自由度は大きくなります。ストップウォッチとプレゼン資料を用意して、資料をめくりながら台本どおり話せるかをチェックしていくのです。具体的なチェックポイントの例としては、以下のとおりです。

1. 一言めをどんなテンションで始めるのか

思い切りハイテンションで行くのか、落ち着いた雰囲気で行くのかといった点です。特に、初めての相手にプレゼンをする場合は、第一印象がきわめて重要になります。

2. イントロから本題に入るまでの長さ

多くの場合は、本題に入る前に、自己紹介や「本日はお時間を頂戴いたしまして誠にありがとうございます」式の定形的な挨拶、あるいは第3章第2節で触れたような聴き手の共感作りのネタを話す、イントロ部分があるものです。

本題の部分は原稿をしっかり作る人でも、この辺りは「挨拶&自己紹介で3分」というように、項目だけ置いておいてアドリブ任せにしてしまいます。そして、いざ話し始めると意外に話が長くなってしまったりしがちです。

3. スライドや手元資料に頼らずに話せるか

慣れないときによくやってしまう典型的なパターンの一つが、資料の映し出されたスクリーンや、手元の原稿(原稿を見て話す場合)ばかり見てしまうというものです。特に、スクリーンばかり見てしまうのは、聴き手から見たときの話し手の姿勢が、いかにもそっぽを向いているように見えてしまい印象が悪くなります。なるべく見る時間を短くするようにしましょう。

手元原稿の場合は、体の向きは聴き手の方を向いているだけにまだ印象は悪くないですが、それでもアイコンタクトができない、伏し目がちで自信なさげに見えかねない、声がこもりがちになるなど、やはりあまりいいことではありません。何より、原稿に頼らず聴き手から目を離さずに話せれば、それだけ「自信がある」「本心から話している」というアピールになります。

4. スライドをめくるときのつなぎ言葉はスムーズか

たとえば、「ここまで、商品コンセプトについてご説明しました。それではこの商品のターゲットとなる顧客はどういう層でしょうか? 次のページをご覧ください」というように、あるスライドに関する話が一段落し、次のスライドに移るときの「つなぎ言葉」があるのとないのとでは、聴き手の印象は大きく変わってきます。

5. 大事なパート、最も伝えたいパートを強調できているか

大事なパートや最も伝えたいパートは、たとえば声のトーンを上げたり、ジェスチャーを加えたり、何らかの演出を施すことになるでしょう。そうした演出がサマになるかどうかは、まずは実際にやってみないとわからないものです。

6. 締めをスムーズに行えるか

オープニングほどの重要度ではないのですが、プレゼンを終えるときの締めのフレーズもやはりきれいにまとめたいもの。一通り練習しておきたいものです。

以上、主なチェックポイントを挙げてきましたが、起こりえることを網羅するのは簡単ではありません。職種や職場に特有のチェックポイントも恐らく多くあることでしょう。経験を積みながら、自分なりのチェックポイントを充実させていってください。

(本項担当執筆者:中丸雄一郎)

『グロービスMBAで教えている プレゼンの技術』
グロービス経営大学院  (著)
1800円(税込1944円)

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