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世界が狭くなった現代、地政学は経営者に必須の素養

投稿日:2022/11/04

今年9月発売の『MBA 2030年の基礎知識100』から「第3章38 地政学の視点からリスクに備えよ」を紹介します。

世界が小さくなり、各国・各地域の相互依存性が高まるにつれて、それらの国々の政情や経済状況に通じておくことの意義は大きくなっています。特に自社のサプライチェーンの特定の機能を特定の国に依存しているようなケースでは、その国に問題が起こると一気にサプライチェーンが機能不全に陥る可能性も生じます。難しいのは、人件費が安い国やこれから市場が伸びると思われる途上国ほど、往々にして政情が不安定で見通しがつきにくいということです。たとえばいまやGDP世界第2位となった中国ですら、現在の政治体制や方針がいつまで続くのかを見極めるのは容易ではありませんし、これも日本とつながりの深い台湾との関係もかなり微妙です。世界一の大国のアメリカですら国内の分断は進んでおり、さまざまなリスクを内包しています。最低でも自社が関係する国や地域については、地政学の動向を理解しておくことが必須の時代となっているのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

地政学の視点からリスクに備えよ――不確実な世界に向き合う

地政学とは、地理学と政治学を合成した学問であり、それに付随するリスクを地政学的リスクと言います。地政学を理解するためには、地理や政治はもとより、各国各地域の歴史や経済、文化、宗教などを理解する必要があります。また、国や地域同士の関係性などについても理解が求められます。

ビジネスにおいて地政学が重要になった背景には、グローバル化が一段と進んで、日本が多くの国々と関係を持つようになったこと、また、サプライチェーンが国をまたいで構築されるようになったという事実が指摘できます。例えば、重要な原材料を輸入している国が政情不安になれば、一気に原材料の入手が困難になるかもしれません。あるいは、製造工場を置いている国で大きな自然災害が起これば、これまた自社のビジネスに大きなダメージが生じる可能性があります。

また、人権意識のさらなる高まりもあり、サプライチェーンのどこかで強制労働や搾取のようなことが行われている可能性があるだけで、消費者はその企業の製品にノーを突き付ける時代です。

地政学の難しさは、不確実性にあります。人口動態などは予想から外れることは少ないかもしれませんが、それ以外の要素については予想がなかなか当たらないのです。特に新興国についてはその傾向が強いと言えます。そうした国々では、2030年になっても民主主義が必ずしも根付いていないことが予想され、政治的な不確実性が常に付きまといます。特にアジアやアフリカの大きな人口を抱える国々は、市場として魅力的ですが、日本の常識は通じないと考えておく方がよいでしょう。

国同士の関係も、なかなか見通しの立たないケースは多いものです。特に、宗教が異なったり、歴史的に長年不仲だったりする隣国は、その傾向が強くなります。例えばインドとパキスタンは長年小さな諍いを繰り返してきましたが、それが何かのはずみで大きな惨事を招かないとは断言できません。核保有国である両国には理性を保ってほしいものですが、権力者が必ずしもロジカルに行動するとは限らないのです。2022年のロシアのウクライナ侵攻は、そうしたリスクを改めて世界に示しました。「世界の警察」であったアメリカが内向きになる傾向が、こうしたリスクをさらに増大させているという状況もあります。

グローバル化によって、世界はフラットになるどころか、民族意識がさらに高まったことは周知の事実でしょう。民族意識の高まりは人々の不平不満をさらに増大させ、それが常に紛争の火種になるのです。テロなども増えることが予想されますが、それを正確に予測することはほぼ不可能です。結局、人々を突き動かすのは知性ではなく、感情であるという側面は否定できません。ますます進む富の偏在が、それをさらに加速させる可能性は高いでしょう。

自然災害も予測は難しいものです。特に21世紀になって大きく問題視されるようになった地球温暖化は、世界各地で大きな災害をもたらすようになっていますが、その正確な予測は困難です。それ以上に大きな影響をもたらすのは巨大地震ですが(特に日本)、それに向けて準備が十分にできているとは言えないでしょう。企業としては、事業継続計画(BCP)をよりしっかり磨く必要がありそうです。

なお、不確実性が高い事象については、第1章でも触れたシナリオ・プランニングの手法が効果的ですが、地政学には特にその傾向が当てはまります。例えば半島有事や台湾有事は、両方起きるかもしれませんし、両方起きないかもしれません。しかし、事前にそうなった時のプランを考えておくことで、いざ何かあった時に、慌てずに、より的確な行動を取れるようになるのです。

MBA 2030年の基礎知識100
著者:グロービス 著・編集:嶋田毅 発行日:2022/9/22 価格:2,145円 発行元:PHP研究所

グロービス出版
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  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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