数学的素養こそがビジネスパーソンの活躍の幅を決める

今年7月発売の『ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本』から「はじめに」の一部を紹介します。

筆者はながらく経営学を教えていますが、「数字系の科目やおカネ系(会計やファイナンスなど)の科目が得意な人はいますか?」と訊いてもほとんど人は手を挙げません。そして「逆に苦手という人は?」と訊くと多くの人が挙手をします。
正直な話、これは好ましいことではありません。ビジネスには数字がつきものであり、それを適切に用いて意思決定やコミュニケーションをしたり、PDCAを回すこと、あるいは未来を予測することは必須のスキルだからです。そしてそうした場面で必要になるのがある程度の数学の素養です。
たとえば昨今はテクノロジーが指数関数的に変化し、それがビジネスシーンを大きく変えているわけですが、指数関数や、それと表裏一体である対数関数のことを正しく説明できるビジネスパーソンは多くありません。それでは起こりうる未来を予測したり説明したりできないのです。世界を引っ張るシリコンバレーのスタートアップの経営者や、人気職種でもあるプロフェッショナルファームのスタッフは最低限の数学の素養は身に着けているものです。いわゆるSTEMの重要性がどんどん増すこの時代、「自分は数学は苦手です」などと言っていては活躍の幅が大きく狭まってしまうことをビジネスパーソンは銘記すべきなのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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数学的な「ものの見方」「考え方」は武器になる

数学が得意かと聞かれて「イエス」と答えられるビジネスパーソンは多くはないでしょう。むしろ「苦手」「思い出したくない」という人が多いはずです。

特に高校1年くらいで数学をあきらめてしまったという方、いわゆる「私立文系」の方はその傾向が強いかもしれません。

ただ、ビジネスシーンにおいて、まったく数学と無縁でいられるかといえば、それは「ノー」です。ビジネスには数字がつきものであり、定量分析をしたりする際、あるいはファイナンス(財務)を勉強する際にはある程度の数学力、そして数学的思考が必要になるからです。

経済ニュースを聞く際に、数学的素養がある方が、はるかに理解が深まるケースもあります。数学を遠ざけてしまっては、ビジネスパーソンとして活躍できる領域はかなり狭くなってしまうのです。

「とはいえ、いまさら数学を勉強するのは」と逡巡される方も多いでしょう。

幸いなことに、高校レベルの数学をすべて学び直す必要性はありません。一般的なMBAのカリキュラムを理解するのであれば、高校までのごくわずかな数学の基本さえ習得すれば、95%以上はカバーできるのです。

実際、筆者も長らくビジネスや経営学の分野に携わっていますが、高校の数学で学んだことで、一度も使ったことのない、あるいは発想する必要すらなかったものは多々あります。

サイン、コサインや積分は、9割の人が捨てていい

具体的には、以下のような内容は一般のビジネスパーソンにはほぼ必要ないといってかまいません。

  • 整数の性質(素数など)
  • 二次関数、三次関数……
  • 三角関数(サイン、コサイン、タンジェントなど)
  • 複素数、虚数
  • 積分
  • ベクトル

たとえば多くの人が苦手にしている三角関数。工学などでは必須の知識ですが、多くの人にとっては一生関わる機会はないはずです。

ゲームのプログラミングなどで「回転」という動作と付き合わないといけない人や、建築で図面をみる必要がある人などはあきらめて学び直すしかないですが、そういう人はおそらく限定的でしょう。

本書は、そうした内容は思い切って捨て、MBAの内容を学ぶうえで最低限必要な数学知識に絞り込んで説明をしています。経営の実務における代表的な使用例、応用例も適宜盛り込みました。また、受験で数学を選ばなかった私立文系の人がついていけるようなレベル感を意識しています。数学専門の方からみると、多少厳密性を欠く箇所もありますが、そこはご容赦ください。

ビジネスで数学を活用できることのメリット

ビジネスで数学が使えることのメリットは数多くあります。

まずは良い意思決定ができるようになります。例えば企業を買収する際の買収金額をどう決定するか。ここにはある程度のファイナンスの知識が必要になりますが、そのためにはやはり数学の知識は欠かせません。

あるいはA案とB案のどちらを選ぶかという選択も、定性情報や勘だけで行えるものではありません。ある程度の確率論やリスクについての素養は必要です。ビジネスは突き詰めれば「どちらが得か(マシか)」を選択する積み重ねともいえます。その多くの場面に数学的な素養が必要なのです。

数学力が上がると未来を予測しやすくなるのも大きなメリットです。特に昨今はテクノロジーの進化が急です。そうした中、たとえば指数関数の考え方を知っているだけで、世の中の見え方が変わってきます。

一番大きな効用は人にだまされにくくなることかもしれません。ある程度の数学の素養さえあれば見抜けたことを見逃してしまうということは多いものです。投資商品の売り込みなどはその代表的なシーンといえるでしょう。ネットの情報などをみても、「これは違うのでは?」と気づけるようになります。

情報の洪水の中で、数学的見地からその妥当性を検討できるというのは大きな武器なのです。

ビジネスで使える数学の基本が1冊でざっくりわかる本
著者:
グロービス 執筆:嶋田毅 発行日:2022/7/29 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社

グロービス出版
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