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誤ったマネジャーの採用はスタートアップの致命傷となる

投稿日:2022/05/28

今年3月発売の『起業の失敗大全』から7章「助けが必要」の一部を紹介します。

急拡大するスタートアップは、規模が大きくなるほど多くのマネジャー(管理職)を必要とします。しかし、スタートアップが常に必要なマネジャーを採用できるとは限りません。これは、単にそうした人材が労働市場にいないという理由による部分も大ですが、もう1つの理由として、経営陣が必要とするマネジャーの資質を見誤りやすいという傾向にもよります。たとえば経験が圧倒的に重要な職に、経験不足の人材を採用してしまうなどです。また、大企業では機能していた人材がベンチャー企業の物事の進め方に馴染めないということもよく起こることです。特にスピード感やプロアクティブな姿勢などは、往々にして大企業のマネジャーには欠けていることも少なくありません。スタートアップのCEOや経営陣は、自社に必要なマネジャーの資質を正しく理解し、そして実際にその役割を果たせる人材を採用するという難しい仕事をこなさなければならないのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

マネジャーの不在

資金調達のリスク以外にも、リソースの不足が、規模化を進めるスタートアップの生存確率に大きな影響を与えることがあります。具体的には、重要な機能を担う有能なスペシャリストを束ねるマネジャーの不在は、スタートアップの業績を悪化させ、予想以上の速さで資金を使い果たしてしまう原因となります。

(オンラインストアの)ドット&ボーは、最初のシニアスペシャリストの採用に苦労しました。(創業者の)スーフーがオペレーションリーダーを必要としていたとき、スペシャリストではなくシニアジェネラリストを採用しましたが、結果は芳しいものではありませんでした。元々、スーフーはこの人材をCOOに育てようとしていました。COOにはジェネラリストのスキルが必要だと考えていたからです。しかし、残念なことに、彼には深刻な問題に対処するために必要な経験が不足していました。

後任のヴァイスプレジデントは、関連する職務経験を持ち、ドット&ボーの経営を安定させることができました。しかし、スーフーはこのヴァイスプレジデントのパフォーマンスに満足しておらず、最終的には彼も交代させてしまったのです。

「彼は大企業の人間で、言われたことをそのまま実行するタイプでした。例えば、受注から決済に至るまでの平均費用など、指標は改善されましたが、必ずしもビジネスにとって健全なやり方によってではありませんでした。彼はオーナーのようには考えていませんでした。彼は物事を難しく見せる達人で、数字を操作して、物事がうまくいっているように見せるのです」

(ベンチャーキャピタリストの)ベン・ホロヴィッツは、大企業で磨かれたマネジメントスタイルが、スタートアップのリーダーには「政治的すぎる」と受け取られる可能性がある、と警告しています。ホロヴィッツはまた、大企業のマネジャーは外部からの情報のインプットや決断のリクエストに埋もれるのに対し、スタートアップでは自分が行動を起こさなければ何も起こらないという事実に、多くのシニアマネジャーが適応できないだろうと指摘しています。

もし、ドット&ボーの経営陣がもっと早く適切なオペレーション担当のヴァイスプレジデントを見つけていたら、深みにはまることなく、十分なキャッシュを蓄えられたかもしれません。スーフーは、シニアのマーケティング担当者を採用したときにもミスを犯しました。そのジェネラリストは良い仕事をしていましたが、チームを管理した経験がなかったのです。スーフーはこのように述べています。

「外部の人間が何かを教えてくれると思っていました。しかし、彼は最悪で、4カ月しか持ちませんでした。彼は几帳面すぎて、私たちの学習や成長を遅らせてしまいました。若いジェネラリストを担当に戻したところ、再び軌道に乗ったのです。内部の人間が問題を解決しているときに外部の人間を入れるのは、よく考えるべきです」

このように、ドット&ボーは、ある機能では早く、別の機能では遅く、スペシャリストのリーダーを採用することになりました。これは、規模化をしているスタートアップが直面する問題を、浮き彫りにしています。ある機能(例えばエンジニアリング)で働いたことのある起業家は、経験のない他の機能にスペシャリストを採用するための準備ができていないことが多いものです。起業家は、その職務で成功するための重要な要素を理解しているとは限りません。どんなスキルが必要なのか? 技術的な知識は、優れた問題解決能力と比べてどの程度重要なのか? また、厳密なデータがない場合、過去の経験に従うことがどのくらい信頼できる行動指針となるのか?といった要素についても知る必要があるのです。

起業の失敗大全 スタートアップの成否を決める6つのパターン
著者:トム・アイゼンマン 訳:グロービス 発行日:2022/3/30 価格:2,970円 発行元:ダイヤモンド社

グロービス出版

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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