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スタートアップが利益を出すために 3つのKPI

投稿日:2022/04/23更新日:2022/04/28

今年3月発売の『起業の失敗大全』から1章「ビジネスが先か、経験が先か」の一部を紹介します。

昨今は長期間にわたって先行投資を行い、赤字のままユニコーンになる企業も増えました。ただ、そうした企業であっても、どこかのタイミングでは利益を出す必要があります。テスラのように黒字化までに20年ほどの時間を要した企業もありますが、それはやはり例外中の例外です。健全なスタートアップであれば、投資家を納得させるべく、数年で黒字化すること、あるいは赤字であっても黒字化に至るまでの筋道を示すことが期待されます。その際、意識すべきは利益方程式です。ビジネスモデルによってその重要度は変わってきますが、利益を出すうえで当然のように注目すべきKPIがあります。起業家はこれらを正しく認識し、資金調達計画などを立てる必要があるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

利益方程式

ベンチャーの利益方程式とは、お金を稼ぐための計画のことです。どのくらいの収益を上げ、どのくらいのコストをかけるのか。利益方程式では、収益とコストをさらに詳細に見ていきます。収益はプロダクトの価格と販売数によって決まります。コストにはいくつかのタイプがあり、それぞれ特性が異なります。例えば、(ソーシャルロボットの)ジーボを1台作るための部品などの変動費は、販売台数に比例して増えます。マーケティングコストは、新規顧客の獲得数に応じて変化します。また、役員報酬や本社オフィスの家賃などの間接費(ここではビジネスとの直接的な関係性が薄いバックオフィス的費用を指す)は、短期的には固定費です。

起業家が利益方程式を決めるわけではありません。むしろ、機会を構成する他の3つの要素、すなわち「提供価値」「技術とオペレーション」「マーケティング」に関する選択が、収益とコストを決定します。誰に、どのくらいの数のサービスを提供するのか、プロダクトの価格をどうするのか、新規顧客をどう獲得するのか、「ハイタッチ」のサービスアプローチを採用するのか、それに見合ったコストをかけるのか、などです。

スタートアップが長期にわたって経済的に存続できるかどうかは、さまざまな指標のパフォーマンスにかかっていますが、特に以下の3つは他の指標よりも重要です。

ユニット・エコノミクス(単位当たりの儲け)

投資家は、その企業が販売したプロダクトが、1ユニットごとにどれだけの利益をもたらすかを知りたいと考えます。ジーボのようなメーカーの場合は、1台のロボットが1ユニットとなります。ネットフリックスのようなサブスクリプション・サービスでは、1カ月の加入者当たりの利益を1ユニットとして見るといいでしょう。なお、ここで言う「利益」とは、売上総利益のことであり、1ユニット当たりの売上高から、1ユニットの生産やデリバリーに関して発生するすべての変動費(例:製造コスト、倉庫のコスト、配送コスト、クレジットカード会社への手数料など)を差し引いたものです。

スタートアップのユニット・エコノミクスの分析では、典型的な取引(トランザクション)からどれだけのキャッシュを得て、どれだけのキャッシュを失ったかを見ます。健全なビジネスであれば、

  1. マーケティングコストと間接費
  2. さらなる成長のために必要な投資(在庫や工場設備など)
  3. 負債の利払い
  4. 税金
  5. 投資家への適切な利益

これらを賄うキャッシュフローが、「1取引当たりのキャッシュ収入×取引回数」で得られます。ビジネスはそれぞれ異なるので、「1取引当たりのキャッシュ収入」の健全と言える額を決めることは、一概にはできません。しかし、すべての取引で損失を出しているビジネスは、経営者がその損失をリカバーするための明確な計画を持っていない限り、問題を抱えていると言えます。

LTV/CAC比率

LTV (Life Time Value:顧客生涯価値)は、顧客とベンチャー企業との関係が続く間に得られる粗利益の現在価値に等しくなります。

CAC (Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)は、典型的な顧客を獲得するために発生する、平均的なマーケティングコストを表します。 LTV/CAC比が1.0未満であれば、顧客の経済的な価値は、その顧客を獲得するためにかかったコストよりも低いことになります。したがって、LTV/CAC比が1.0未満の状態が長く続くと、固定費的な間接費をカバーして利益を出すことができず、スタートアップは絶望的な状況に陥ります。そのため、多くのスタートアップはLTV/CAC比を3.0以上にすることを目標にしています。

損益分岐点

LTV/CAC比が健全で、顧客ベースを積極的に拡大しているスタートアップでも、急速に手元資金を使い果たすことがあります。ベンチャーの基本ルールである「資金不足に陥らない」ためには、信頼できるキャッシュフロー予測が必要です。起業家は、どのタイミングでスタートアップが変曲点を迎え、キャッシュを失うのではなく、生み出すようになるのかを、理解する必要があります。言い換えれば、スタートアップはキャッシュフローの損益分岐点に到達しなければなりません。

 

アーリーステージの起業家を対象とした調査から、これらの利益方程式の指標を使いこなすことで、ベンチャー企業の成功確率が高まることがわかりました。苦戦しているスタートアップの起業家は、成功している企業に比べて、ユニット・エコノミクス、LTV/CAC比率、6カ月間のキャッシュフロー予測の推定値に自信を持っていませんでした。

起業の失敗大全 スタートアップの成否を決める6つのパターン
著者:トム・アイゼンマン 訳:グロービス 発行日:2022/3/30 価格:2,970円 発行元:ダイヤモンド社

グロービス出版
グロービス電子出版

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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