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【日経コラム】社員のやる気を引き出す4原則

投稿日:2017/09/13更新日:2019/04/09

「社員をやる気にさせるにはどうすればよいのか」。創業以来ずっと考え続け、試行錯誤を繰り返してきた。経営者の最も重要な役割は、社員が自らの意志で納得して働くようにすることだ。命令や罰則、報酬などだけでは人は動かない。内発的動機に基づき、やる気になってもらうことが重要だ。

僕がその手法を会得したのが「フォーラム」という会である。フォーラムは、僕が所属する世界的な経営者や起業家の組織において、最も人気があるプログラムの呼称である。

フォーラムは8~10人がグループとなり、悩みや課題を共有し、相互に示唆をもらって成長する会である。僕は数年にわたり、世界の若手経営者の集まりである「ヤング・プレジデンツ・オーガニゼーション(YPO)」の国際フォーラムに所属していた。マレーシア、フィリピン、タイ、オーストラリア、インド、シンガポール、香港などのリーダーが集まり、四半期に1回、2泊3日でフォーラムを実施した。

フォーラムには、4つの原則がある。1つ目がロジックより感情に配慮すること。共感を示すことが大切だ。2つ目が「良い・悪い」の判断はしないことだ。批判などは言語道断だ。判断を留保して、感情に配慮するのだ。

3つ目が自分の考えや手法を押しつけないこと。何かを伝えるときも主語は「You」ではなくて「I」、つまり「私があなたの立場だったらこうする」と示唆を与え、受け入れるかどうかの判断を相手に委ねる。4つ目は秘密厳守だ。話し手が安心して悩みを打ち明けられる環境をつくることだ。

僕は経営者として振る舞うときには常にこの4つの原則にのっとりコミュニケーションしている。例えば会社の中で問題が起きたときは「それはダメだよ」というジャッジはしない。その社員の感情に配慮して「お疲れさま。大変だったね」と共感することから始まる。

「あなたはこうすべきだ」とも言わない。必ず「では、どうすればよいのか」を質問しつつ僕の体験を共有しながら「僕ならこうする」という示唆を与えるようにしている。質問と示唆を通して、本人がやりたいことと会社の方向性とが合致するように接している。

家庭でも、5人の息子たちに同じ接し方をしている。1人の人格をもった人間として感情に配慮し、会話の中身は誰にも言わないことにしてきた。感情的に前向きになってもらい、質問や示唆を与えて気付いてもらい、納得して行動してもらうように接する努力をしてきた。

グロービス経営大学院でも、このフォーラムの手法を卒業生に伝えている。経営学修士号(MBA)を取得した卒業生を毎年、一堂に集めて泊まり込みで4原則を教えている。その場で8~10人のグループに分けて、その後、四半期ごとに会い続けてもらっている。

卒業生同士が単に集まって食事や会話をしても、得られる学びの要素は小さい。互いによろいを着たような状態では、話を深く掘り下げにくいからだ。だが、秘密が守られる環境で、よしあしの判断をせずに、感情に配慮して、体験を共有して示唆を与え、気づきを得る手法は、仲間の体験を同時並行的に共有できるし、リーダー育成の手法としても非常に有効である。

卒業生によるフォーラムを「互援ネット」と呼んでいる。互援には「ご縁」と「互いに支援する」という意味を、ネットには「ネットワーク」と「セーフティーネット」という意味をかけた。同じ大学院で学んだご縁でつくられた相互援助のネットワークが、セーフティーネットとして役立つことを願い、僕が名付けた。

信頼関係を醸成し、やる気を喚起させれば、皆が自発的に情熱をもって仕事に取り組むようになるだろう。この4原則は、とても役に立っている。

 

※この記事は日経産業新聞で2017年9月8日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

 

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