家康、信玄…名将の人事戦略を現代に実装する~「戦国ベンチャーズ」~

群雄割拠の現代で成り上がれ

近年の社会環境の劇的な変化により、厳しい逆風にさらされた企業が淘汰され、生き残りをかけて必死にあがいている業界もあれば、千載一遇のチャンスとばかりに急成長するベンチャー企業もある。急成長の代表として語られているGAFA(Google、 Apple、 Facebook<現Meta>、 Amazon)と呼ばれる企業群の場合、創立して50年も経っていない。ということは、50年後になればトップ企業の顔ぶれが変わっており、もしかしたらそこにあなたが立ち上げた会社が入っているかもしれない。まさに一代にして成りあがるチャンスが誰にでもあるという点では、戦国時代の群雄割拠の時代に似ている。

本書では、そんな戦国時代にも似た現在で成り上がるためのヒントを歴史から紐解いている。戦国時代に一代にして成り上がった名将を見ると、全てが実力主義(成果主義)の人事戦略を用いていた!と述べている。これだけで終われば、抽象度が高すぎて当たり前となるだけだが、本書はそこで終わらず、さらに成果主義制度が機能するポイントを具体的な事例から導き出している。

「強みのコラボレーション」の計算を生かす

著者は「強みの経営」の重要性を説く。強みの経営とは、「人材の強みを生かし、共同の事業を創り上げる組織経営」を指す。近年では多くの企業で成果主義が導入されている。人材の能力を最大限発揮させることで、強みの経営が実現できると考えることができる。

しかし、強みの経営が実際に企業の成功につながるかどうかは、まだ実証の段階で結論が出ておらず、事例から何らかの学びを得ることはできない。そこで歴史の中の名将から学ぼうという訳である。具体的には、三国志の曹操が掲げる「唯才主義(ゆいざいしゅぎ)」、日本史では、徳川家康の人事戦略「賢を尊び、能を使う」、「人は城、人は生垣、人は堀」と称した武田信玄。本書では、これら知名度の高い名将の人事戦略を深堀りしている。

そのなかで、名将が実践した「強みの経営」を現代に実装するためには、「強みのコラボレーションの計算式」を使うべきだと著者は述べている。計算式を構成する主な項目として挙げられているのは、以下の4つの論点だ。

① 真の成果論:長期的な組織の成長に必要な3つの成果を設定する
       (「売上・利益など直接の成果」「競争優位となる源泉を作る」「人材を育成する」)
② 事業課題設定論:上記成果に対する課題の設定と、修羅場体験の重要性
③ 組み合わせ論:必要な強みの組み合わせを理解する(創造性×再現性×共感性、強み×開発レベル)
④ 配置登用論:抜擢と最適なフォーメーションパターンを使い、必要な強みを持つ人材を登用・配置する

各項の中も、例えば再現性はさらに細かく分かれ「戦略性、規律性、達成性、最高性、回復性」の5つに分解されている。しかも、それぞれの項目は、自己分析のツールである「ストレングス・ファインダー」の資質の項目に紐づけて解説されている。この筆者の主張の正しさの根拠として、各歴史上のエピソードが具体的に書かれており、納得感を作っている。

自分の役割を知り、どのようなビジネスパートナーと組むべきか再現性を持って理解することで、この「戦国ベンチャー」の時代を成り上がっていく。そのために本書が一助となれば幸いである。

戦国ベンチャーズ ― 人事の天才・徳川家康と曹操に学ぶ、「強みの経営」とは?
著者:北野唯我 発行日:2021/8/31 価格:1,200円(Kindle版電子書籍) 発行元:SHOWS Books

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