今年7月発売の『入社一年目から差がつく 問題解決練習帳』から「Lesson18思考の軌跡を地図にする」の一部を紹介します。
いろいろと分析を進めていく中でよくあるのは、「何を考えたかを忘れてしまう」ということです。最も重要な部分についてはたいてい覚えているものですが、重要度が低かった部分、あるいは問題がないと判断した部分については「ここって結局どういう結論を出したんだっけ?」という状態になることが少なくありません。特に問題が複雑で分析の時間が長くなり、記憶が曖昧になるにつれてこの傾向は強まります。その際、改めて前にさかのぼっているようでは二度手間ですし、問題解決にとって大事なスピードが削がれてしまいます。何を考えたかを軌跡としてメモに残し、全体像を常に見えるようにすることが効果的な問題解決につながるのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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あなたは、複数のレストランを経営する会社の営業管理の担当です。ある店舗の今月の売上が芳しくないので、少し調査をしてみたところ、以下のような状況になりました。
表を見ると、新規の売上は問題ないのですが、既存の売上、それも、客数が減っているということがわかりました。今月になって、変更したことが3つあります。WEBのリニューアルをしたこと、料理長が変わったこと、そして、現場のオペレーションを変えたことです。そこで、3つの仮説を立ててみました。
・WEBのリニューアルで逆に使い勝手が悪くなったのではないか
・食事がまずくなったのではないか
・接客品質が下がったのではないか
さて、既存の客数が下がっている原因となりそうなものはどれでしょうか。
ここで、改めて考えてみましょう。確かに既存の客数が減っているということが問題だったのですが、今、考えていることを図示すると、以下のようになっています。
一方で、調べた過程において、わかっている情報が実はあります。それは、新規は問題がないということ、そして、既存の単価は減っていないということです。
新規が減っていない、既存の単価は減っていない、既存の客数が減っている。この3つの情報をもとにして、先はどの3つの原因を考えてみましょう。
まず、WEBを考えてみましょう。使い勝手はリピート客にも影響を及ぼす可能性はありますが、これが原因であれば、新規の顧客も下がる可能性があります。しかし、新規には問題は起こっていません。
次に、食事です。食事がまずくなっていると、確かにリピートにはつながらないかもしれません。一方で、既存の単価は減っていないということは、注文は減っていないということになります。そう考えると、食事がまずくなっているという訳ではないかもしれません。
ここまで考えると、残るのは接客。これは、新規のお客さんには体感できない内容です。単価にも影響はないとは言いきれませんが、食事がまずくなったことと比べるとこちらの方が可能性は高そうです。
このように、わかった情報をもとに原因を考えるということは重要ですが、実は変化がなかったという情報も重要な情報になるということです。
『入社1年目から差がつく 問題解決練習帳』
著者:グロービス 執筆:岡重文 発行日:2021/7/30 価格:1760円 発行元:東洋経済新報社
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