統計学の知識なきアンケートは効果半減

今年7月発売の『入社一年目から差がつく 問題解決練習帳』から「Lesson3 本当に起こっているのかを確認する」の一部を紹介します。

問題の予兆に気がついたら、それが本当に問題なのかを調べることになります。顧客の不満といったトラブルの場合、よく用いられる手法はアンケートなどです。皆さんもアンケートをとった経験は必ずあるはずです。しかし、このアンケートという手法は落とし穴の宝庫でもあります。質問が不適切、サンプルが偏るなどはよく起こりがちです。また、統計学の知識が不足していると、実施方法や結果の解釈で落とし穴に陥ることもあります。たとえば50件のサンプルだけで視聴率に関する問題について語ることは出来ません。調べるべき数が絶対的に不足しているのです。難しい数学まで理解する必要はありませんが、統計に絡む典型的な落とし穴を知っておくことも、現代のビジネスリーダーに求められるリテラシーといえるでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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 「調査に際して、いくつかの留意点を紹介しておきます。

  • 対象者は偏らないようにする

一部の人しか調べられない場合は、調べられた人の属性が偏っていないということが重要です。調べたい集団が、年齢層が幅広い集団であるならば、たとえ一部の集団を調査するとしても幅広い年齢層の構成である必要があります。

逆に、若手に偏る、年配者に偏るといったことが起こってしまうと、調べた対象は、集団の全体を表しているとは考えにくくなるからです。調べたい集団と同じような構成比になるように選ぶといったことが必要です。乱数を使って、恣意性が働かないようランダムに選ぶといった工夫などがよくなされます。

  • 何件調べればよいかは母集団の大きさに依存する

全体の母集団が100名の場合の10件と全体の母集団が20名の場合の10件では、10件の意味が異なってきます。前者は、全体の10%、後者は、全体の50%になりますので、同じ10件でも後者の方が全体を表していると考えてもよさそうです。

このように何件調べればよいのかは、調べたい母集団の大きさによって変わります。

詳細な数式などは割愛しますが、類推したい母集団の大きさごとに、調べればよいデータ数は統計的に算出されます。例えば、何かの比率(例:1年以内に不具合を経験した人の割合)を求めたい場合、許容誤差を5%とすると、95%の信頼性でという前提がつきますが、以下のようになります。

100名の母集団を理解するためには、80名、約8割のデータが必要になりますが、1000名の場合は、278名と3割弱、1万名の場合は、4%弱と人数が増えていくにつれて、必要なデータ数は、それほど増やさなくても大丈夫ということです。

さらに、10万名と100万名の差が、383名と384名の1名しか違わないように、400名弱のデータがあれば、逆に母集団がどれだけ大きくなろうとも大体、数的には類推が可能な量であるということを理解しておきましょう。

なお、許容誤差を3%、1%とせばめていくと必要な人数が増えることも知っておきましょう。

一方で、確認できる事象自体が希少なものも存在します。何万人に1人といった病気などや異常になることが非常に低い確率でしか発生しないものです。また、年間で1回程度しか発生しないもの、1年単位でしか試行が繰り返せないものなどもあります。

いくつのデータがあればいいのかと考えるだけでなく、そのデータはどの程度発生するのか、扱っている事象はどういう性質のものなのかといったことも合わせて考えるようにしましょう。

入社1年目から差がつく 問題解決練習帳
著者:グロービス 執筆:岡重文 発行日:2021/7/30 価格:1760円 発行元:東洋経済新報社

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