今年6月発売の『グロービス流 あの人頭がいいと思われる 考え方のコツ33』から「21.ストーリーで考える」の一部を紹介します。
物語(ストーリー)で考えたり伝えることの効果は、21世紀になってビジネスの世界でも非常によく取り上げられるようになりました。ストーリーは読み手にとっては優しい表現手法ですが、それを作る作り手にとっては逆に難しい作業になります。どうすれば読み手に正確にイメージを伝えられるか、どのような構成や順番で語るのか、どのような言葉をピックアップするのか、どのようなトーンで語るのかなど、考えるべきことが多々あるからです。もちろん定番の型がないわけではありませんが、あまり安易にそれらを繰り返していては、往々にして「紋切型」になってしまい、ストーリーという表現ならではの意外性や情緒性が欠けてしまいます。だからこそ、人々を鼓舞するようなストーリーを徹底的に考え抜くことはまたとない思考トレーニングにもなるのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
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人は物語(ストーリー)が好き
皆さんが若い頃好きだったものは何でしょうか? 最近はゲームという人も多いかもしれませんが、アニメや本、あるいは映画やドラマといった「物語」が大好きだったという人は多いでしょう。おそらく、どんな人であっても、これらの中に好きなストーリーがいくつかあるはずです。そしてそれは単に好きというだけではなく、大まかな粗筋はもちろん、人によってはかなり細かいエピソードなども話せるでしょう(ちなみに筆者の場合、子どもの頃好きだったストーリーであれば、シャーロック・ホームズ物は今でも多くのものをお話しできます)。
このストーリーを用いて考えを深めたり、他人に対する説得力を増そうというのがストーリー思考です(ストーリー思考にはさまざまな定義がありますが、ここではストーリーで考えること、効果的なストーリーを考えること全般を議論します)。経営戦略やマーケティング、さらにはキャリアデザインなど、さまざまな分野で応用されています。
ストーリーの効用についてはすでにさまざまなものが紹介されていますが。念のためそれらを挙げると以下のようになるでしょう。
- 具体的にイメージしやすく、具体性を持って考えられる
- 因果関係などが分かりやすい
- 関心を引きやすく記憶にも残りやすい
- ワクワク感を持ちやすい、あるいは恐怖心を与えやすい(感情に働きかけやすい、共感を得やすい)
- 他人に説明しやすい
- 上記のことをチェックしやすい
ストーリーで(ストーリーを)考えることは実務的にも役に立ちますし、その妥当性をチェックすることで自分の思考力や、それに付随するプレゼンカなどのアップにもつながるのです。
まずは成功ストーリーを考える
ビジネスにはさまざまな場面がありますが、物事を良い方向に持っていこうと考えるのが一般的です。そこで、まず考えたいのが「物事が好転していくストーリー」です。現状をしっかり認識したうえで、施策が当たっていくとどうなるかをストーリーとして考えます。逆に、かなり悪くなるシナリオを提示し、「まずい、変わらなくては」「その落とし穴に気をつけなくては」と思わせるのが俗にいうホラーストーリーです。
なお、ストーリーの冒頭は皆が同意する共通認識から入るのが無難です。特に他人に話す場合は、(あえてそれを狙わない限り)いきなり反論を巻き起こすようなところからスタートすると、状況がこじれる可能性が高くなるからです。
そして、ホラーストーリーのようにならないためにはどうすればいいかということを、なるべく具体的に検討します。そしてそれらを実行した結果、人々はどのように変わり、会社の業績にどのようなポジティブな変化があるのかを想像力豊かに頭の中に描くことが求められます。人々がワクワク働き、最終的に皆が喜ぶようなストーリーが描けることが最善です。
『グロービス流 「あの人、頭がいい! 」と思われる「考え方」のコツ33』
著:グロービス 発行日:2021年6月16日 価格:1,650円 発行元:ダイヤモンド社