「超極端」に本質が隠れている――ビジネスにも役立つ思考実験の習慣化

今年6月発売の『グロービス流 あの人頭がいいと思われる 考え方のコツ33』から「18.極端な例で考える①」の一部を紹介します。

極端なケースを想定して物事を考えることが、ある事柄の本質や、その欠点やリスクをあぶりだすことがあります。たとえば小選挙区制という投票制度の弱点を強調したいのであれば、あるシチュエーションで何パーセントの死票が生まれる可能性があるかを試算するといいでしょう。「実は必ずしも民意を反映しない可能性が高い」という事実が如実に浮かび上がります。一方で比例代表制の弱点を指摘したいのであれば、今度は小政党がキャスティングボートを握り、大政党を振り回すケースなどを提示するとよいでしょう。筆者自身も、何か新しいコンセプトの妥当性や弱点を考える時には、極端に振れたときの例をイメージすることを習慣化しています。世の中は、実は意外に「平凡」あるいは「平均的」なことは少ないものです。「もしこうなったら(こうだったら)」という思考法を習慣化することは、いざという時の備えにもなり、さまざまなメリットをもたらすのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

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極端な例で考えることはあらゆる場面で役に立つ

極端な事例やシチュエーションを想定することは、たとえば、制度設計の際にその落とし穴を発見することにも役に立ちますし、抽象的な事柄を具体的に考える際にも役に立ちます。実際にはそこまで極端なことはないとしても、思考実験の一環としてそれを考えてみることは有効な場面が多いのです。

極端な例で法則を理解する

ビジネスには、いくつかの大事な法則があります。ここでは有名な「大数の法則」を例にとりましょう。これは、サンプルの数や試行数が増えるほど、最初は本来の数字から外れていたとしても、結局は「実力」や「実態」に近い数字に収束するという法則です。

たとえば、サイコロは正確に作られていた場合、振った回数が増えれば、どの目もその回数の6分の1の回数だけ出るようになります。筆者は過去に600回連続で振ってみたことがありますが、一番大きくズレたもので106回でしたから、ほぼすべての目が6分の1ずつ出たといっていいでしょう。

大数の法則は、言い換えれば、サンプルの数や試行数が少なければ、「実力」や「実態」を反映しない数字になってしまうことがあることを意味します。たとえば、競馬では一般的なテラ銭は25%ですから、長く競馬を贍むほど、掛け金の25%を国庫に納める羽目になるのです。

別の例で、プロ野球の打率を考えてみましょう。よく5月頃までは4割に近い打率を残す選手がいますが、結局は実力に見合った最終成績に落ち着きます。「春先は調子のいい選手が多い」などといわれることもありますが、それは錯覚で、単に試行数が小さいことによるばらつきにすぎません。

より極端な例で考えてみましょう。仮に年間の試合が1試合しかなければ、4割といわず、10割(3打数3安打他)や5割(4打数2安打他)の成績を残す選手は一定数いるはずです。しかし、それを100試合以上維持できる選手は現実にはほぼ存在しません。

ここでは大数の法則を取り上げましたが、ボトルネックやトレードオフといったビジネスで生じがちな問題や、規模の経済性や範囲の経済性といった事業経済性なども、極端な事例を考えることにより、その理解を深めたり、インパクトを考えたりすることに役に立ちます。

たとえば、「費用すべてが固定費の会社」あるいは逆に「費用すべてが変動費の会社」を想定することで、それぞれの費用の特性、特にリスクとの関連が明らかになったりします。費用がすべて変動費の会社が仮にあれば、単価が費用を上回る限り(限界利益率がプラスである限り)、どれだけ売上げが減っても赤字にはなりません。そこから、「変動費は売上げのばらつきに対してリスクの低い費用である」という示唆を導けるのです。

グロービス出版
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グロービス流 「あの人、頭がいい! 」と思われる「考え方」のコツ33
:グロービス 発行日:2021年6月16日 価格:1,650円 発行元:ダイヤモンド社

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