基本を身に着けることで大きな成果が出る問題解決
本書は、昨年グロービスが上梓して好評を得た『入社1年目から差がつく ロジカル・シンキング練習帳』の続編、第2弾に当たります。執筆者は前回同様、グロービスの「思考ファカルティグループ(思考FG)」(「正しい考え方」に関連する科目群に責任を持つ教員たち)のリーダーを務める、グロービス同僚の岡重文です。練習帳(ドリル)という形式で問題解決のエッセンスを伝え、定着させることを目指しています。
問題解決とは、何も大きなトラブル解消や、難しい課題への挑戦だけを指すものではありません。本書でも改めて解説しているように、「あるべき姿」と「現状」のギャップを埋める活動すべてが問題解決といえます。例えば昨年度の売上実績に対して105%の達成度であったとしても、売上を110%とすることを目指していたとしたのであれば、それを下回っているのですから問題ありと考え、しかるべくアクションを講じていくのです。
このように考えると、ビジネスパーソンの日常は問題解決の連続と言えます。「あるべき姿」をどこに置くかにもよりますが、問題解決をスムーズに行える人ほど、ビジネスパーソンとしての生産性が高く、良いアウトプットを出していると言えるでしょう。ビジネスリーダーとして活躍したいのであれば、問題解決力を高めることは必須の条件なのです。
幸い、問題解決の方法論については、それを生業(なりわい)とするコンサルティングファームなどで洗練された「型」やツール、あるいは「心得」的なものがあります。闇雲に数をこなすのではなく、まずそれらを理解することが、問題解決力の土台となります。本書はその中でも、基本的な「型」と、それに付随するいくつかの心構えを紹介しています。
問題解決力強化のための厳選ドリル20題
本書の具体的な章立ては以下のようになっています。このうち、CHAPTER1から4までが基本的な問題解決のプロセス(「型))であり、CHAPTER5はこれらのプロセスを効果的に進めるための工夫の紹介となっています。
CHAPTER1 何を扱うのか「問題」を考える
CHAPTER2 何が見えているのか「事象」を考える
CHAPTER3 なぜそうなるのか「理由」を考える
CHAPTER4 何をすればいいのか「解決策」を考える
CHAPTER5 上手く進めるための「工夫」を考える
卒業試験
それぞれのCHAPERには4つのLESSONがあります。つまり計20のLESSONと卒業試験で問題解決力を身に着けるわけです。そして各LESSONは基本的に以下の構成をとっており、およそ10ページ程度となっています。
・問題提起
・基本的な解説
・POINT
・演習問題
・解説
・ステップアップの解説(さらに一段上を行くためのTips)
・まとめ(重要な心構えや学びのカギ)
各LESSONの中の演習については、前回と同じように、いきなり解説を読み進めるのではなく、まず自分なりに考えてみることをお勧めします。可能であれば10分、10分が難しい場合でも数分は考えたうえで解説に進んでください。一見簡単なようで実は奥が深いと感じたもの、あるいはどう考えればいいか見当がつかなかったものもあるかもしれません。その現実を自分なりに受け止め、自分の現在の力を確認することも非常に重要です。
本書のまえがきでは、「型」の重要性に加え、自分の思考を客観的に捉えること(メタレベルで自分をとらえること)、そして実践することの重要性を説いています。まずは本書でベースとなる考え方を身に着けたうえで、これらを意識して問題解決に当たると、その効果は大きく変わってくるはずです。
もちろん、問題解決の力は一朝一夕に高まるものではありませんので、まずは実践してみたうえで、改めて本書に戻り、どこが上手くいったのか、あるいは上手くいかなかったのかを振り返ってみるといいでしょう。ビジネス全般に言えることですが、何かに上手くなるコツは、実践と振り返り(リフレクション)です。本書を手引きに、それを確実に実行されることをお勧めします。本書の本文中にも出てくる事柄ですが、「頭の中で考えた(つもり)」というレベルに留めるのではなく、文字として書き出してこれらを行うと、上達はさらに早くなります。ぜひ励行してみてください。
本書は問題解決をこれから勉強しようという若手を第一の対象にしています。ただ、すでに問題解決を勉強したけどいま一つ自信が持てていない、あるいはさらなる定着を図りたいという方にも大いに示唆があるはずです。問題解決に関心のあるあらゆる方にお勧めの1冊と言えるでしょう。
『入社1年目から差がつく 問題解決練習帳』
著者:グロービス 執筆:岡重文 発行日:2021/7/30 価格:1760円 発行元:東洋経済新報社