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『チームのことだけ、考えた』――社員一人ひとりが力を発揮できる多様性の活かし方とは?

投稿日:2017/07/29更新日:2019/04/09

何かを成し遂げたいと思っても、1人の人間が発揮できる力には限界がある。高い目的を達成するには、「チームで取り組む」ことが重要だ。それゆえに、ビジネスリーダーにとって、「チームワークをいかに引き出すか」は常に頭の中にある問いなのではないだろうか。

本書は、「チームワークあふれる社会」を理想に掲げ、チームワークを高めるソフトウェアの開発・提供を主事業とするベンチャー企業の経営者が、「チームを構成する一人ひとりが力を発揮できるようにするにはどうすればよいか」について真剣に考え抜き、試行錯誤した内容を具体的に記した本だ。失敗や挫折も含めて赤裸々に描かれたエピソードと、密度の濃い学びにぐいぐいと引き込まれる。

中でも示唆深いのは、多様性(=ダイバーシティ)への取り組みだ。働き方に対する私たちの価値観が多様化し、雇用が流動化し、労働力人口が減少しつつある昨今、ダイバーシティ活用が声高に叫ばれるようになった。本書に書かれている、多様性を前提とした制度を整えたうえでいかに個々の力をチームとして活かすかという「多様性を企業の競争優位につなげていく」取り組みの数々は、組織作りに関わる方・企業の人事施策をより効果的なものに変えていきたい方・企業文化を形作りたい方・ベンチャー企業を立ち上げたい方などにとって、大いに参考になるだろう。

まず導入部では、愛媛県松山市のマンションで3人が立ち上げたサイボウズという会社の誕生から上場後までの組織拡大の歴史が書かれている。今は東京日本橋にオフィスを構える同社が昔はどうだったのかという起業の話としても大変面白い。続く2章では、上場して大きくなった組織の運営に四苦八苦する中、皆が共通して持てる理想を探し求め、結果的に「多様性」というキーワードが浮かびあがってくるまでが書かれている。

3章から5章は、多様性を前提とした組織のベースを作り、人事制度を形作り、制度を活かす風土を作る試行錯誤の様子が書かれている。標準化された問題解決の手法が具体例と共に示されており、同種の悩みをかかえる組織にとって、再現性高く取り入れやすい内容といえるだろう。また、現場から挑戦状のように突き付けられる要求に経営としてどう対処し、議論し、実践し、改善を重ねていくかの丁寧に描写も、実践的な学びを与えてくれる。加えて、よくニュースなどでも取り上げられる同社のユニークな人事制度の例やその背景もわかりやすくまとめられており、興味深く読み進めることができる。

最終章には一連の取り組みの結果がまとめられている。例えば、離職率は28%から4%に下がり、採用コストやリテンションコストがさがり、多様性がプロダクト&プロセスイノベーションにつながり、社内の雰囲気と社外からの評価が変わった様子が紹介されている。あなたがダイバーシティ・マネジメントを導入したいと思っており、周囲を説得したい場合、この章は説得力あるエビデンスを提供してくれるだろう。

これらの取り組みは、単に多様性を実現するだけではなく、単に違いを認めるだけでもなく、違いを受け入れて活かす組織づくりだ。戦略として多様性を企業の競争力向上につなげるという、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みだと捉えることができる。一律的な規則で人を働かせるのをやめ、多様な人による多様な働き方を実現することで、違いを活かした創発と組織力の向上を目指しているのだ。さらに、制度は一度作って終わりではなく、常に改善しようと試みている点も見逃せない。

多様性を競争優位の源泉としていくために企業ができることは何か、多様性が個人の働き方にどのような影響を与えるのかについて、具体的に思考を深めていきたい人におすすめの1冊だ。
 

『チームのことだけ、考えた』
青野慶久(著)
ダイヤモンド社
1500円(税込1620円) 

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