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JR西日本の牡蠣養殖事業を考える「アンゾフのマトリックス」

投稿日:2016/12/11更新日:2019/04/09

先日、JR西日本が広島県内の養殖業者と協力し、地下海水を使って養殖した牡蠣を東京と大阪で試験販売し、最終的には一般販売を目指すとのニュースが流れました。

「なぜ鉄道会社が養殖牡蠣の販売を?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。それまでの鉄道会社の典型的な多角化と言えば、バス運行、百貨店、不動産開発、アミューズメント施設の運営などでした。これらはすべて沿線住民向けのサービスとも言え、比較的わかりやすい多角化でした。

その点、牡蠣の養殖販売はかなり異質です。沿線の養殖業者と組んでいるとはいえ、必ずしも沿線住民や鉄道利用者だけが顧客ではありませんし、そもそも本業からの距離感が離れすぎているように思われるからです。

JR西日本がこうした多角化を志した背景には、成長へのプレッシャーがありそうです。同社も株式公開企業である以上、株主は当然成長を求めます。しかし、鉄道会社、特に国鉄の流れをくむJR西日本にとって難しいのは、メーカーなどとは異なり、海外にメインの製品・サービスを輸出することでの成長ができない点でしょう。しかも日本はこれからどんどん人口が減っていきます。メインビジネスである鉄道輸送の顧客が減る中で成長を果たすためには、多少飛び地的に見えても積極的に多角化に取り組んでいかないといけないわけです。

多角化を考える際の有名なフレームワークにアンゾフのマトリックスがあります。これは、「製品(サービスも含む)」と「市場」のそれぞれについて、「既存」と「新規」を考え、2×2の合計4つの方向性で成長を模索するマトリックスです。ここでは、JR西日本について、オリジナルの事業を鉄道事業と考え、その成長の方向性を検討してみましょう。

まず「既存製品×既存市場」のハコに入るのは、鉄道事業の強化です。これはこれでもちろん疎かにはできませんが、人口が減少していくことを考えると、自ずと成長には限界があります。

「既存製品×新規市場」のハコは、先に述べたようにJR西日本という会社にとっては成長の足枷をはめられた分野です。企業の特性上、日本の他地域に進出するわけにはいきませんし、海外に行くのも容易ではありません。もちろん、運行ノウハウなどの一部は海外鉄道会社に売ることも可能は可能ですが、ライバルも多く、そう簡単に勝てるわけではありません。

「新規製品×既存市場」のハコに入るのは、先に挙げた百貨店、不動産開発、アミューズメント施設運営などの事業群です。これは今後とも新しい業態が模索されるでしょうし、伸び代はまだまだありそうです。しかしこれも基本的に鉄道利用者や沿線住民を前提としており、競争もありますから、これだけに頼るわけにもいきません。

そこで必然的に意識せざるを得ないのが「新規製品×新規市場」のハコです。ここは事業の可能性は無限にありますし、その気になれば輸出型の事業を行うことも可能です。今回の牡蠣も、その気になれば近隣諸国への輸出も十分に可能なのです。

ただ、可能性は無限にある一方で、成功確率が最も低いのが、この「新規製品×新規市場」のハコでの多角化です。特に自社の強みが生かしにくかったり、その事業をマネジメントできる適切な人材がいない場合は失敗の可能性が高くなります。

JR西日本の置かれた経営環境を考えればあり得なくはない牡蠣の養殖販売事業ですが、それがどこまで成功するのか、あるいは成長に寄与するのかは、現段階では未知数です。正直、「難しいのでは」と思われる方も多いかもしれません。しかし、だからと言って手をこまねいていては企業の成長はありません。

国内人口減少に悩まされる多くの日本企業にとっては、こうした「本業とは距離感のある多角化」の成功確率をいかに高めるかは、喫緊の経営課題なのです。皆さんもぜひアンゾフのマトリックスを使って自社の成長の方向性を考えてみてください。

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