今の子供世代が社会人になった時、現代の私たちの働き方は、彼らの目にどのように映るのでしょうか?「平成時代って毎日決められた時間に、決められた場所に行って、働いていたんでしょ」「育児とか介護とかしながら、よく満員電車に1時間も乗って通勤していたよね。すごいね」…なんて言われているかもしれません。
8月初旬に政府から『働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために懇談会』報告書が発表されました。そこには、20年後の日本が描かれており、「さらなる技術革新により、時間や空間や情報共有の制約はゼロになり・・・(途中省略)個々人の働き方の選択肢はバラエティーに富んだ時代になるに違いない」との記載がありました。時代の流れは確実に個人にフォーカスした働き方へと進んでいます。
とはいえ、今は2016年。ようやく「場所や時間を問わない働き方」を推進する企業がちらほらと登場し始めているレベルです。多くの企業が自社でのリモートワークの実現性を疑問視、あるいは傍観している現状ではないでしょうか?私自身、自社の働き方改革を担当している中で壁にぶつかることも多く、何か手掛かりが得られないかとこの本を手に取りました。
本書は、ソフトウェア企業のソニックガーデンが、いかにしてリモートワークを導入したか、そのプロセスを描いた本です。リモートながらに、敢えて協働を必須とする「リモートチーム」を実現させたことが、彼らの成功の秘訣でした。協働することの喜び、帰属による安心感、同僚との日々の何気ない雑談、そこに居るという存在感、短期的なゴール設定でなく長期的な関係を築くチーム等…従来の会社が果たしていた「場」を全てリモートで実現させる「リモートチーム」という新しいワークスタイルの提唱です。
加え、本書の底流をなしているのは、「前向きに楽しく働ける人を増やしたい」という著者の純粋な思いです。実はソニックガーデンがリモートワーク導入に取り組んだきっかけは、社員の「海外で働きたい!」の何気ない一言でした。彼の夢の実現のために、リモートワーク導入を会社全体で後押ししていったのです。「こんな働き方ができたらいいのに」を実現できる企業、仕事もプライベートも両立して楽しめる生き方、素直にワクワクしませんか。
ビジネスモデルによってリモートワークに向き不向きがあるという前提はありますが、本書には、社員のセルフマネジメント力を鍛える方法、雑談を奨励するためのチャットツールの導入、一部の人だけでなく全員がリモートワークで働くことを前提にするなど、リモートワーク導入を検討している人事担当者にとって、参考にできるティップスがふんだんに盛り込まれています。また、全てのビジネスパーソンにとっても、自分がどう働きたいか、どう生きたいか、見つめ直すきっかけとして、是非、手に取って頂けたらと思います。
『マネジメントの“常識”を変える新しいワークスタイル リモートチームでうまくいく』
倉貫義人著 (著)
日本実業出版社
1,500円(税込1,620円)