新卒大量採用が復活。ゴールデンウィークも過ぎ、研修を終えた新入社員たちが続々と現場に配属されていく。意欲に溢れる新卒フレッシャーへ、悩んで大きくなった先輩たちからの経験的アドバイスをお届けする。(企画・構成:水野博泰=GLOBIS知見録「読む」編集長)
植本宰由(UEMOTO Tadayoshi)さんからの助言
大手広告会社勤務 メディア営業/入社4年目/グロービス経営大学院在学中(2016期生)
首都圏の教育機関様(大学、専門学校)にメディアを駆使して学生
ところが、3年目に大試練に直面しました。お客様にとって想定通りの効果が出なかったり、僕自身のミスがいくつか重なったりして、取引総額が前年の半分くらいに落ち込んでしまったのです。入社以来学んできた仕事の「型」や「定石」は全く通用しません。何をやってもうまくいかなくて、苦しくて、会社を辞めたいと思ったほどでした。泣きましたよ。そんなとき手を差し伸べてくれたのは直属の上司でした。というよりも、自分からすがるような思いで教えを乞いました。その経験からの学びをお伝えしたいと思います。
◆ 助言その1 ◆ 「n=1」を自分の足を使って見つけよう
「結局、誰に、何を、どのようにして届けたいの?」という、上司からのシンプルな問いかけによって、自分に欠けているものに気づくことができました。それは、現場に足を運んで、徹底的に一次情報を取るということです。弊社は膨大かつ詳細な情報データベースを持っています。それまではそのデータベースを検索して情報を集め、仮説を立て、ターゲットを絞って企画提案書を書くというやり方でしたが、それを根本的に変えてみました。徹底的に泥臭くなってみようと決めました。
クライアント(大学など)にとってのカスタマー(学生)に直接会い、じっくりと話しを聞く。今何に関心があるのか、どんな学校に行きたいのか、なぜこの大学を選んだのか、将来何をやりたいのか――。すると、「n=1」のリアルな姿が見えてきました。家族構成や親の年収、価値観などは一人ひとり皆違います。データベースの情報から「n=1000」の平均値や傾向を見るやり方では見えてこないものです。
「外国語系志望、東京以外に住んでいる女子」というレベル感ではなく、「中学時代に海外ホームステイ経験があり、将来外国語を活かして海外で働きたいと思っているが、東京の難関大学に行けるくらいの偏差値はなく、家計にも東京に出すほどの余裕がないので、地元の大学を志望している」といったところまで具体的に落とし込んでいきました。一つひとつが深いストーリーなのです。それを知り、伝えることによって共感という価値が生まれるのです。
そして、カスタマーとクライアントのことを考え抜くと、自社だけでなく他社のサービスを組み合わせて提案するという発想や選択肢も見えてくるようになりました。もちろん自社サービスを売りたいのですが、一段高い視点からお客様のことを考えられるようになったのは貴重な成果でした。「広告会社の営業マン」から、「クライアントのための営業マン」になれたように感じました。
◆ 助言その2 ◆ 自分とは違うタイプの上司から学び取ろう
先輩や上司もいろいろです。実は、自分とは違うタイプの上司から多くのことが学べます。
入社時の上司は、「イケイケどんどん」「考える前にまず行動」という弊社の文化を体現しているような方でした。僕もそういうタイプなのでウマが合いました。次の上司は、「一つひとつ考えてから行動しよう」「なぜやるのかという意味付けが大切だ」という真逆のタイプでした。上司で組織の雰囲気も大きく変わるなと思ったものです。
でも、僕が壁にぶつかった時に、「誰に、何を、どのような手段で伝えるのか?」というシンプルな問いを投げかけてくれ、1年間にわたって伴走してくれたのは、その上司でした。本当に辛い時に、今までとは違う発想や視点を見せてくれたのです。素直な気持ちで実践し、突き詰めて考えることの大切さ、「n=1」を見極める泥臭い営業を学びました。
◆ 助言その3 ◆ まず行動し、量をこなそう
以上を踏まえた上で、新入社員の皆さんに何よりもお伝えしたいことは、「入社3年ぐらいまでは、とにかく行動して量をこなし、仕事をやり切る」ということです。最初はこれがすべてだと思います。僕の場合も、3年目に壁にぶつかるまでは、120%で突っ走ってきました。自分というフィルタを一切なくし、「まずやってみる精神」で突き進んでいくイメージです。
今、僕の課題は、「型」を破り、自分の頭で考えて道を切り拓いていく実力を養うことです。そのために、今春、グロービス経営大学院に入学しました。全力で疾走し、成功と失敗の両方を味わった今だからこそ、MBAの体系的な学びから得られることは大きいと思っています。
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