各国首脳らの節税実態を暴露した「パナマ文書」の流出によって一躍脚光を浴びた「タックスヘイブン」であるが、これは税金のかからない税金天国(Tax Heaven)と誤解している人が多い。タックスヘイブンとは“Tax Haven”(租税回避地)、つまり税金から逃げ込む避難所・港のことである。
タックスヘイブンとは、税金がかからないか、もしくは極めて低い税率の国や地域であり、カリブ海にあるバハマ、ケイマン諸島そしてパナマやバージン諸島がその典型である。小さな島国などで産業基盤に乏しい国が、海外から資本を集め国際物流や金融の拠点となるべく編み出した政策といえる。これらの国では、法律事務所の名義でペーパーカンパニーを設立し、このペーパーカンパニーに資金を集め・運用することで運用益に対する本国での課税を免れることが可能となる。
税率が低いという点では、マカオ(12%)、香港(16.5%)、シンガポール(17%)等も同様で、これらの国に設立した子会社経由で取引を行い、利益を落とすことで、本国での高い税率での課税を免れることができる。また、グーグルやアマゾンのようなインターネット企業を中心に、ライセンス収入等特定の支払いに対しては源泉税を課税しないアイルランドやオランダ等の国を活用して節税を行う動きもある。そのため、各国の税務当局は合法ではあっても過度の節税に網をかぶせようとしている。各国ともタックスヘイブン税制を制定しており、低税率国(日本の場合20%を下回る国)と認定された国に所在する子会社については、その業務実態が乏しいと認定されると、本社の利益に加算され本国の税率で課税される。