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ビジネスリーダーの必読書 ―『いちばんやさしいグロースハックの教本』

投稿日:2016/03/26更新日:2019/04/09

本書は、ファッションアプリ「iQON」を広告費をかけずに、まさにグロースハックの手法で100万DL(2015年現在では200万DL以上)を実現した2人の日本人実務者が書いた、文字通り「いちばんやさしいグロースハックの教本」である。表紙(やや漫画チック)や体裁のビジュアル(参考書を模している)に凝っているので一見易しい本と錯覚しそうではあるが、内容はかなりしっかりと現代のWEBマーケティングの先端が描かれている。WEBマーケターのみならず、あらゆるマーケターやビジネスパーソンにとっても参考になる部分大である。

さて、「グロースハック」は人によっては耳慣れない言葉かもしれないが、単純に定義するなら、「製品開発とマーケティング(プロモーション)を統合し、量的、質的な成長の仕組みを製品の中に組み込む手法」と言えるだろう。たとえばファイル共有サービスのDropboxは、ユーザーが他の人間にDropboxを紹介すると、お互いの利用容量が増えるキャンペーンを実施した。これによってDropboxは一気に利用者数を増やすことに成功した。

あるいは、かつて無料メールサービスのHotmailは、「無料でHotmailを始めよう」という署名を入れることで、メールそのものをすべて広告に変え、ローンチから1年半で1200万ユーザーを獲得した。こうした手法は、FacebookなどのSNSにも取り込まれている。かつては、製品開発とそのマーケティング(特にプロモーション)は別物だったのが、特にネットビジネスではそれは時代遅れである。製品開発とプロモーションが融合し、相乗効果で成長を加速することがいまや常識となっているのである。

本書の優れている点は、筆者らがiQONで実施した方法を包み隠さず公開し、なおかつ体系的にまとめていることである。たとえば、グロースハックにはAARRR(アー:Aquisition-Activation-Retention-Referral-Revenue)というフレームワークがあるが、著者らは、この順番で物事を進めるのは得策ではないとし、順番を変えたARRRAモデル(Acquisitionを一番最後にする)を提唱している。Activation(ユーザーがサービスに価値を感じること)からスタートし、どうすればそれが実現できるかというところから、詳細に順を追って説明をしている。これからグロースハックを学びたいという人間にとっては、実務で成果を出した人間が何をやったのか、そのプロセスの勘所は何なのかということをそのまま追うことができるため、非常に頭の整理がしやすくなっているのだ。

グロースハックの詳細な手順は本書に譲るとして、本書を通じて個人的に面白いと感じた点を3つほど挙げよう。

第一は、数字をしっかり見ることの重要性である。マーケティング全般で数字が大事なことは論を待たないが、意外にKGIやKPIの測定がなおざりになるケースは少なくない。もちろん、定性分析も同時に行うのであるが、それを効果的にするためにも、日常からの定量分析が不可欠である。数字をとりやすいネットビジネスという条件はあるにせよ、どれだけ効果的なKPIを設定し、それをしっかり見ていくかという経営の基本がグロースハックのベースにあることは、グロースハックの有効性を担保する要素ともなっているのである。数字による「見える化」は、グロースサイクルを回す上での大前提であるという点は、当たり前だが重要だ。

第二に、グロースハッカーに必要なマインドセットである。特に、失敗を繰り返し、そこから学びを得るという点は、ネットの特性にかなり連動している。Fail Fast(早く失敗しよう)、Fail Often(たくさん失敗しよう)、Fail Smart(賢く失敗しよう)というキーフレーズが非常によく考えられていると感じた。特に最後の「Fail Smart」はそうだ。何も考えずに失敗するのではなく、仮説や問題意識を持ちつつ、賢く失敗しそこから学ぶことこそが成功への最短距離というのは、スピードの速い現代ビジネスにおいては非常に重要なセンスだろう。

そして第三は、ユーザー体験(UX)の設計を重視している点だ。どれだけ数値の分析やアイデアの発案ができたところで、肝心の顧客が価値を感じ、行動しないと成長はおぼつかない。往々にして提供者側の論理になりがちなUXを徹底的に顧客視点で考え抜き、実現し、その結果をまた次のUX設計に活かすという基本が大切である。特にさまざまなアプリやWEBサービスが乱立する現代だからこそ、UXをしっかり考えられることはグロースハッカーの必須スキルとなっているのである。

グロースハックという手法は基本的にネットビジネスで開発された考え方ではあるが、製品開発とマーケティング(プロモーション)を融合し、成長エンジンを製品の中に組み込むという発想そのものは、あらゆる製品・サービスに応用可能なものと言える。また、その手法は、あらゆるビジネスの経営に共通する本質的なエッセンスを高次元でパッケージングしたものとも言える。「自分はネットビジネスに関係ないから」などとは考えずに、あらゆる人に読んでほしい1冊である。必ず、自分のビジネスに役に立つノウハウや心構えをいくつも得ることができるだろう。

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