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レピュテーション・マネジメント: 評判の守り方

投稿日:2016/03/05更新日:2021/10/23

『グロービスMBAマーケティング』の第8章から「レピュテーション・マネジメント」を紹介します。

企業のブランドや評判というものは長い時間をかけて構築されます。企業活動の実態が良好でステークホルダーからの評判が良いことに加え、広告やPR、対人的な接触などさまざまなコミュニケーション機会を活用し、それを広く伝えて初めて良いブランドや評判が出来上がります。怖いのは、そうしたものは、構築には長い時間がかかる一方で、崩れるのは瞬時に起こりかねないということです。特に近年はITの発達もあって、その傾向が顕著です。過去の努力を無駄にしないためにも、日常から危機管理を正しく行うことはもちろん、万が一トラブルが起こった時にもブランドや評判へのダメージを最小限にするような、誠実かつ機敏な動きが企業にとって必要条件となっているのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

レピュテーション・マネジメント

本論でも述べたようにITの進化に伴って、近年、企業のレピュテーション(評判・名声)をいかに良好に保つかということが重要性を増している。平常時のマーケティング・コミュニケーションとは異なる緊急時のクライシス・コミュニケーション(危機管理コミュニケーション)の対応如何によって、企業の命運が分かれた事例もある。企業は「マイナスをプラスに変える」というコミュニケーションを理解しておく必要がある。

レピュテーション・マネジメントとは

レピユテーション・マネジメントとは、企業の評判・名声を管理する機能のことであり、顧客や株主などのステークホルダー、加えて社会一般の人々に対して良好な企業イメージを保持してもらうよう働きかける活動を指す。

レピュテーション・マネジメントは大きく2つに分類できる。1つは「平常時のコミュニケーション」で、企業イメージをできるだけ向上させるためのプラスのコミュニケーションである。これについては、ブランディンク活動として第9章で取り上げる。もう1つは「緊急時のコミュニケーション」である。有事の際に企業イメージをマイナスからゼロに戻したり、プラスに引き上げるコミュニケーションで、「クライシス・コミュニケーション(危機管理コミュニケーション)」と呼ばれる。

ITの発達によって、不特定多数が閲覧できるサイト上の掲示板や個人のブログなどのメディアを介して個人が自由に意見を発信できる環境ができたことから、企業にとってネガティブな情報が多くの人に容易に知られるようになった。食品の産地や消費期限などの偽装、リコール隠し、オペレーションミスによる人身事故などのさまざまな事件・事故をマスコミ各社が一斉に報道し、企業責任が厳しく問われる事例も相次いでいる。社会一般やマスメディアも、企業市民としての企業活動のあり方により厳しい目を向けるようになっているのだ。

  • 【近年、マスコミで取り上げられた主な事件・事故】
     ・食品会社の管理ミスによる食中毒発生事件
     ・鉄道会社のオペレーションミスによる事故
     ・マンション分譲会社の耐震強度偽装事件
     ・食品会社の産地・消費期限偽装事件、外食会社の材料使いまわし事件
     ・大手自動車会社の欠陥商品隠し事件
     ・大手銀行、大手自動車会社における大量の個人情報漏洩事件

改めて言うまでもないが、レピュテーション・マネジメントの観点からも、企業はその社会的責任をまっとうし、顧客・社会の信頼に応える真摯な企業活動を実行する使命がある。

だが、不幸にも事件・事故が発生してしまった場合には、適切なクライシス・コミュニケーションを行えるかどうかが、企業の命運を分ける時代となっている。事件や事故そのものの責任が問われるのはもちろんだが、事後のコミュニケーションの稚拙さによって信用被害が拡大した事例が少なくない。交通事故の事後対応で広報責任者(スポークスパーソン)が報道陣を怒鳴りつける姿や、食品偽装が明るみに出ても開き直って悪びれない社長の会見などはテレビで延々と報道された。ひとたび事件・事故が発生すれば、売上げ減少、株価低下などの金銭的被害はもちろんのこと、訴訟などの法的被害、さらにはレピュテーションの低下による信用被害が企業を襲う。企業倒産に至るケースすらあり、その被害は甚大である。

その一方で、事件、事故が起きたにもかかわらず、レピュテーションを維持し、かえって向上させたという事例も存在する。1982年にアメリカで起きたジョンソン・エンド・ジョンソンの「タイレノール事件」が有名である。何者かによって解熱鎮痛薬タイレノールに毒物が混入されたという情報が入ったとき、同社は即座に新聞、テレビなどを通じて全米に情報提供を行うとともに高いコストをかけて自社回収に踏み切った。タイレノールはいったんは全米の店頭から姿を消したが、この迅速かつ誠実な対応によって。事件発生2カ月後には売上げの80%まで回復した。同時に、事件を通じて同社の高い法令順守(コンプライアンス)の姿勢が社会に伝わったことにより、かえってそのレピュテーションは高まったのである。

次回は、『グロービスMBAマーケティング』から「コーポレート・ブランディングの新潮流」を紹介します。

https://globis.jp/article/4092

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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