1月29日に日銀がマイナス金利政策を発表した。金融機関が日銀に新たに預けるおカネの一部に対してマイナスの金利を適用するというもので、金融機関からみれば手数料、あるいは、ペナルティーが科せられる格好だ。
日銀の狙いは、金融緩和政策により供給したおカネを市中銀行が積極的に企業や個人向けに融資し、投資活動を加速して欲しいというものだが、現在のところその効果は目に見える形では表れていない。それどころか、2月9日には、10年満期日本国債の利回りがマイナスに転ずるという事態に発展した。
ところで、国債は確定利率を約束するものなのに、なぜ利回りがマイナスになるのか不思議に感じる読者もいるのではないだろうか。ここでは簡単な例で説明しよう。
例えば、額面金額100円、確定利率3%の1年物の国債を100円で購入したとする。1年後に元本と利息の合計103円を回収するので、この場合の利回りは(103円-100円)÷100円=3%。仮にこの国債を101円で購入しても約2%の利回りを得られる。
しかし、下落リスクが伴う株式や外国債券の魅力が相対的に低下し、おカネを確定債券に「逃避」させたい投資家心理が働き、104円で購入したとすると、(103円-104円)÷104円=-0.0096=-0.96%。利回りはマイナスに陥ってしまう。この様に国債の「金額が上昇」すると、「利回りが下落」するのである。
この例から分かるとおり、国債の利回りとは額面金額に対して支払う利率ではなく、その利息を計算に入れた上でのトータルの投資利回りを意味する。経済用語としてはIRR(Internal Rate of Return、内部収益率)と呼ばれるものである。
年明けの上海株式市場の下落に始まり、原油価格の下落、欧州の銀行の業績不振など、経済面では明るいニュースに乏しい。金融緩和により膨張したおカネはその行き場を求め、比較的安全とされる日本国債や日本円に流れ込み、日銀の期待とは裏腹に、上記の様な日本国債のマイナス利回りや円高を引き起こした。
が、見方を変えればピンチもチャンスになる。事業会社から見れば銀行借り入れに伴う資本コストが稀にみる低い水準で推移しているので、プロジェクトに対するハードルレート(最低限必要な利回り)も低まる。先々を見通し自社が強みを発揮できる案件に先行投資する事で利益を獲得し、ひいては経済の起爆剤とすべきであろう。