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KIBOW、社会的リターンと経済的リターンを両得するインパクト投資に挑む

投稿日:2015/10/09更新日:2019/04/09

38a8a9b2c372023c817ae0c1e8d735c8 堀義人 一般財団法人KIBOW 代表理事

東日本大震災以降、被災地の復興支援を行ってきた一般財団法人KIBOW(東京都千代田区、代表理事:堀義人)が、その活動のステージを大きく拡大する。2015年9月、「KIBOW社会投資ファンド1号」(出資総額は5億円)を設立。「社会的インパクト投資」と呼ばれる新しいコンセプトに基づいた投資を通して、社会的課題の解決を目指す「ソーシャルビジネス」を支援・育成する(ニュースリリースはこちら)。堀義人 KIBOW代表理事に、社会的インパクト投資にかける思いを聞いた。(聞き手は、水野博泰/グロービス知見録編集部)

知見録: 「KIBOW社会投資ファンド1号」の設立に至る経緯は?

堀: 3.11の大地震と津波の後、福島第一原発で爆発が起こり、首都圏でも計画停電が行われ、大きな余震が続くなか、3月14日の夜に仲間が集まり、作ったのがKIBOW(「希望」と「Rainbow(架け橋)」の造語)。大自然の前で人間はちっぽけな存在かもしれないけれど、多くの仲間が集まれば、被災地のために何かできるかもしれない。そんな思いで走り始めた。8000万円の募金、チャリティーディナーからの収益を合わせて約1億円強のお金を集め、この4年間に様々なNPO(非営利組織)や社会起業家に寄付を行い、支援の輪を広げてきた。最大1500万円、少ないケースで10万円、多くの場合300万~500万円。合計で100件以上になる。

その活動の積み重ねから見えてきたのは、(1)一つひとつの規模が小さいこと、(2)長期にわたって持続可能なビジネスモデルになっていないこと、(3)経営に関するノウハウが十分に注入されていないこと――の3点だ。困っている人たちを少しでも助けてあげたいという思いやボランティア精神に満ち溢れているのだが、そこから先になかなか進めずにもがいている人たちがいる。彼ら、彼女らの気持ちはとても清く、暖かく、社会問題を解決するための原点となる動機なのだが、社会に大きなインパクトを与えるうねりになっていかないというジレンマがあった。

知見録: 「思い」を「持続可能な事業」にしていくためにはどうしたら良いのか?

Triangle 出所:KIBOWホームページ

堀: グラント(支援金・寄付)ではなく、エクイティ(投資)を投じていく必要がある。グラントは「背中を押す」「とにかく試しにやってみる」という性格を持っているお金で、あえてベンチャーキャピタル(VC)投資で言うなら「シードマネー」に近いが、あくまで支援金・寄付という一方向のものだ。今回のインパクト投資はエクイティであり、VC投資ならアーリーステージの投資に近い。経済的な価値創造が投資の前提になる。もちろん、成長と収益を確保しながら、社会的なインパクトを長期にわたって持続させ、最大化させることが狙いだ。

ちなみに、VC投資とインパクト投資は似て非なるもの。VCはインターネットやテクノロジー分野を中心に「スケール」「スピード」「リターン」を追求する。社会事業の多くはそうした条件に合致しないので、VCから資金が流れることは極めて少ない。次元が違うと言っていいだろう。だからこそ、インパクト投資という新しい分野を創り出すことの意義が大きいのだ。

知見録: インパクト投資をやろうと決断したのはいつか?

堀: 僕にとっての契機となったのは、エイパックス・グロービス・パートナーズ(グロービス・キャピタル・パートナーズの前身)のパートナーだったロナルド・コーエン卿が来日講演をした際に、15分ぐらい立ち話をしたことだ。2013年のG8サミットで議長国のキャメロン英首相の提案で、「G8インパクト投資タスクフォース」が組織されたこと、コーエン卿が議長として推進していること、各国で2名、民間と政府で1名ずつの代表を立てて定期的に会合を行っていること――を教えてくれた。そして、コーエン卿は「インパクト投資にはVCのノウハウが不可欠だ。Yoshi、お前やらないか?」と言った。僕は即座に「イエス」と答えた。

僕の頭のなかでは、多くのNPOや社会起業家や様々な活動を支援してきたKIBOWをパワーアップすることがイメージされていた。100万~500万円の「寄付」ではなく、1000万~5000万円の「投資」を行い、持続的な事業に育てていく。日本にはあまり馴染みのない社会的インパクト投資だが、「ぜひともやろう」とその時心に決めた。

さっそく、KIBOWが4年間の活動を通じて寄付をしてきた約100件、ダイムラー・ベンツ様が寄付をしてきた30件をリストアップした。精査の末、その中から選んだのが第1号投資先となった「愛さんさん宅食株式会社」だ。今後、一定以上の規模感が見込める社会事業に対して、成長ロケットにブーストをかけるような投資をしていく。成層圏を突っ切って宇宙に飛び立っていってもらいたい。

そうしたインパクト投資の積み重ねによって、社会的リターンと経済的リターンを同時に得る社会事業がたくさん育ち、雇用を創出することができたら幸いだ。

<グロービス・ニュース>

グロービス経営大学院 × 日本財団 共同開催セミナー
社会的投資の新潮流 ~社会を変える「温かいお金」の活かし方とは

■開催概要
日時: 2015 年10月26日(月) 19:00~21:00 (受付18:30~)
場所: グロービス経営大学院東京校(東京都千代田区二番町5-1)
定員: 50名(事前申し込み制)
参加費: 1000円(当日受付にてお支払いください)
主催: 学校法人グロービス経営大学院、公益財団法人日本財団

★お申し込みはこちら → http://mba.globis.ac.jp/seminar/detail-5684.html

学校法人グロービス経営大学院(東京都千代田区、学長:堀義人)と公益財団法人日本財団(東京都港区、会長:笹川陽平氏)は、10月26日(月)、グロービス経営大学院東京校(東京・千代田区)にて、共同セミナー「社会的投資の新潮流~社会を変える「温かいお金」の活かし方とは」を開催します。日本の社会的投資をリードする各団体のキーパーソンや、ソーシャルビジネスを担う社会起業家らを集め、社会的投資の今後について議論します。

社会が抱える様々な課題をビジネスの手法を用いて解決を目指す「ソーシャルビジネス」が、日本でも拡大しつつあります。社会をより良くしたいという熱い思いを持った多くの社会起業家による挑戦が行われ、その活動を支えるための資金が多様な形で流入し始めています。本セミナーは、社会的投資および社会起業家の資金調達の「現状」「課題」「未来」について議論を深めることを目的としています。

【プログラム】
第1部 基調講演 「社会起業家の資金調達の新潮流」
鵜尾雅隆 日本ファンドレイジング協会 代表理事

第2部 「KIBOW社会投資~新たな資金の流れを作る」
山中礼二 一般財団法人KIBOWインパクト・インベストメント・チーム ディレクター、グロービス経営大学院 教員
小尾勝吉 愛さんさん宅食株式会社 代表取締役

第3部 「日本の社会的投資の手法と課題」
鵜尾雅隆 日本ファンドレイジング協会 代表理事
甲田恵子 株式会社AsMama 代表取締役CEO
中川剛之 公益財団法人 三菱商事復興支援財団 事業推進チームリーダー
深尾昌峰 公益財団法人京都地域創造基金 理事長
青柳光昌 日本財団 ソーシャルイノベーション本部 上席チームリーダー(モデレーター)

――― グロービス・ニュース ―――

  • 堀 義人

    グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

    京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事を経て、1992年株式会社グロービス、1996年グロービス・キャピタル設立。2006年グロービス経営大学院を開学。2008年に「G1サミット」を創設。2011年には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げる。2016年に茨城ロボッツ、2019年に茨城放送オーナー就任。2022年にLuckyFesを立ち上げ、現在総合プロデューサーを務める。2024年よりBARKSオーナー、世界最大のPR会社の米国エデルマン社 社外取締役。

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