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よい仮説とは: 自己研鑽と訓練で仮説のセンスを磨けば百人力

投稿日:2015/10/24更新日:2019/04/09

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『グロービスMBAクリティカル・シンキング』の補論から「よい仮説とは」を紹介します。

仮説は闇雲に立てればよいというものではなく、「筋のいい仮説」というものがあります。最初からこれを実現するのは容易ではありませんが、常日頃から仮説思考を意識するとともに、業界情報や世の中の情報にアンテナを張り巡らし、なおかつ自分ならではの独自性を加味していくと、徐々に当初からいい仮説を立てられるようになっていきます。これができれば、仮説検証のスピードは上がりますし、競合に対する差別化にもつながりますから、鬼に金棒です。そのためにも、常日頃の自己研鑽を怠らず、学び続ける姿勢が必要なのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

「よい仮説」とは

本書において「仮説」とは、「あるイシューに対する仮の答え」と前述した。では、「よい仮説」とは、どのようなものであろうか。一言で言えば「イシューに対して意味のある仮説」ということになるが、その要素としては、大きく分けて(1)新奇性・独自性があること、(2)イシューからの「ずれ」がないこと、(3)具体的な行動・意思決定に役立つこと、の3つがあるだろう。

よい仮説とは

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(1)新奇性・独自性があること
あまりにも当たり前のメッセージ、以前からさまざまな場面で言い古されていたメッセージでは、わざわざ言う意味がないということになりかねない。たとえば、「競合との差別化ができればこの商品は売れるだろう」とか「これからの時代はグローバルな視点で採用を考えるべきだ」といった仮説では、たしかに間違いではないとしても常識のたぐいであり、付加価値は乏しいと言わざるをえないだろう。

既存の常識や法則と比べて何かしら新たな視点や認識を提供するといった新奇性、あるいは、個別のある限定された場面では一般論は適用できず別の条件が加わることを発見したといった独自性のある仮説が、ビジネスでは求められているのだ。

ここで注意が必要なのは、「新奇性・独自性のある仮説」とは必ずしも記述を細かくしたり、複雑にしたりすればよいというわけではないということだ。たとえば、「Aという液晶テレビについて競合他社の製品とどんな点で差別化できるか」というイシューに対して、従来の「画質で差別化できる」という仮説が陳腐化し、何か新たな仮説を立てようとなったとする。ともすると「動きのある場面での画質」「目の肥えた中年以上の視聴者にとっての画質」「3D映画を見るための画質」……というように従来の常識や通説を土台としてそれをさらに精緻化したり複雑化したりという方向に思考が向かいがちだ。この方向が有効な場合もあるが、「画質よりも操作性のほうが差別化できる」のようにまったく別の視点、評価軸を持ち出したり、「画質ではもはや差別化できない」のように従来の常識の否定、単純化に向かったりするのも、仮説としての価値を持つことがある。また、「新奇性」というのも、あくまで現状で支配的となっている認識から異なっていればよいのであって、「まったくの新説」である必要はない。

(2)イシューからの「ずれ」がないこと
ある程度の新奇性・独自性を有した仮説だとしても、そこで考えるべきイシューからずれてしまっては、意味のある仮説とは言いがたい。

イシューからずれるとは、1つには、たとえばもともとのイシューが「今期採用する人材に求める要件は何か」だったのに、「採用後の集中研修の出来が重要である」のようにそもそも別の話になってしまうことが挙げられる。

もう1つは、話題は重なるところが多くても、いくつかの段階に分かれるうちにどの段階の話かとか、誰にとっての話かというような、部分的な「ずれ」がある場合もある。たとえば先の「採用する人材に求める要件は何か」というイシューに対し、「ソーシャルメディアを通じて募集するとよい」のように採用の方法論について仮説を立ててしまうといった具合である。

(3)具体的な行動一意思決定に役立つこと
学問的な仮説と違って、ビジネスならではの特徴は、常に何らかの成果が求められるという点である。言い換えれば、ビジネスにおけるイシューは、常に「それを考えることでどんな成果につながるのか」という問いに対して答えがあるものでないといけない。

そう考えると、よい仮説の条件として、成果を残すための具体的行動や意思決定において明快な指針となること、およびその仮説を活かすことであがる成果が大きいことが挙げられる。たとえば、先の「採用する人材に求める要件は何か」についてであれば、「ボランティア活動への参加歴が1つの指針となる」という仮説は、独自性やイシューとのずれのなさという観点で見れば十分よい仮説と言える。しかし、ほかの要素と比べてどの程度重視したらよいか、どの程度の参加歴なら合格なのかといった点に答えるものではないので、具体的な運用面での「明快度」で見ればもう一息という評価になろう。ただ、「ボランティア活動歴の基準」を入れることで、採用できる人材の質が大きく上がったり、採用活動が大きく効率化したりするのであれば、「成果の大きさ」での評価は高まる。

次回は、『新版グロービスMBAリーダーシップ』から「リーダー行動の2つの軸」を紹介します。

◆グロービス出版

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