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帰納法とは: 知識とセンスの差が浮き彫りになるリトマス試験紙

投稿日:2015/09/12更新日:2019/04/09

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『グロービスMBAクリティカル・シンキング』の2章から「帰納法」を紹介します。

今回ご紹介する「帰納法」は、前回ご紹介した「演繹法」に比べると、本質を鋭く突いた結論を引き出すのが難しい論理展開と言えます。なぜなら、同じファクトを見ても、それをどう解釈するかという段階で、その人の持っている知識や価値観の差、あるいはセンスというもの如実に反映されるからです。言い方を変えると、自分の知識や価値観、センスを白日もとにさらしてしまう怖さを秘めるのがこの帰納的な論理展開なのです。「なるほど、そんな結論を出しうるのか!」と一目置かれるように、自分のビジネス能力を向上させたいものです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

帰納法

帰納法は、演繹法とは流れが逆の思考方法である。すなわち、ルールと観察事項から結論を導き出すのではなく、観察されるいくつかの事象の共通点に着目し、ルールあるいは無理なく言えそうな結論を導き出すというものだ。演繹法とは違って、自動的に結論が導き出されることはなく、結論を導き出すには想像力が必要になる。

帰納法の仕組み

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以下に、帰納法の例を挙げる。

「干葉4区は高知3区に比べ『1票の格差』が2.39倍と日本第1位だ」
……観察事項1
「神奈川10区は高知3区に比べ『1票の格差』が2.37倍と日本第2位だ」
……観察事項2
「東京6区は高知3区に比べ『1票の格差』が2.33倍と日本第3位だ」
……観察事項3
(衆議院小選挙区 2011年9月時点)
⇒「『1票の格差』が大きい選挙区は都市部に多い」……ルール(一般論)

「C社の技術資産は素晴らしい」……観察事項1
「C社の株価は非常に割安だ」……観察事項2
「C社の創業社長は後継ぎもなく、引退したがっている」……観察事項3
⇒「C社は買収・合併のターゲットになるだろう」……結論

ここで注意してほしいのは、導き出される結論が1つとは限らないことだ。最初の例であれば結論は、「首都圏の選挙区の『1票の格差』は大きい」となるかもしれない。干葉、神奈川、東京という3つの地域の共通点として何を想定するかで、結論に差が生まれるのだ(ちなみに第4位は北海道1区なので、この観察事項も合わせて示すとこの結論は出てこなくなる)。

つまり、三段論法で必然的に結論が出る演繹法とは異なり、帰納法で有意な結論を出すにはある程度の知識が必要とされるのである。言い換えれば、同じ事象を見ても、有意な結論を発見できる人とできない人に分かれてしまうということだ。C社の例でも、ビジネス、あるいは企業買収に関する知識のない人であれば、何の結論も導き出せないだろう。なお、通常すべての事象を観察することはできないから、帰納法による結論は「……だろう」という推量の形を取るべきだが、実際には数少ない例から結論を導き出し、「……である」と言い切ってしまう場合が多い。

すでに一般化したセオリーも、もともとは帰納法で仮説をつくり、立証していったものがほとんどだ。経営学の世界でも、さまざまな企業を観察・調査することにより、ある法則性を探し出すということがよく行われている。例えば、「企業変革のプロセスはどのようなステップを踏むべきか」という問題について考えたとき、うまく変革を成し遂げた企業を何社か探してそのステップについて調べ、共通点を見つけ出すという作業を行うのである。

帰納法も演繹法と同じく、使い方によっては誤った結論を導き出してしまうことがある。例えば、あまり観察もせずに簡単に一般化してしまったり、観察する対象が適切でなかったりする場合である。これについても、91ページ以降詳しく説明する。

◎――結論を導き出す:帰納法
次に、帰納法を使って結論を導き出す練習をしてみよう。以下の観察事項からは、どんな結論が導き出せるだろうか。

演習
「ホテルビジネスでは稼働率が収益性に大きなインパクトを与える」
「エアラインビジネスでは稼働率が収益性に大きなインパクトを与える」
「コンサルティングビジネスでは稼働率が収益性に大きなインパクトを与える」
⇒「                         」

解説
この問題は、「ホテル」「エアライン」「コンサルティング」の3業界の共通項を何と見るかによって、解答が変わってくるだろう。じっくり考えて、意味のある結論を導き出すようにしたい。ここでは、以下のような結論を出した。

「ホテルビジネスでは稼働率が収益性に大きなインパクトを与える」
「エアラインビジネスでは稼働率が収益性に大きなインパクトを与える」
「コンサルティングビジネスでは稼働率が収益性に大きなインパクトを与える」
⇒「固定費の比率が大きく、かつ在庫のできないサービスビジネスでは稼働率が収益性に
大きなインパクトを与える」

先に述べたように、帰納法を使って結論を導き出すにはある程度の知識と想像力が必要とされることがわかるだろう。

次回は、『グロービスMBAクリティカル・シンキング改定3版』から「MECE」を紹介します。

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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