5月13日、日本ならびに海外において社会を良くするための活動に取り組む人を顕彰する「G1・KIBOWソーシャルアワード2015」の授賞式が実施された。
2011年3月の東日本大震災後も東北にとどまって事業活動を継続し、地域密着の復興支援活動に3年間で60億円を拠出したキリングループは社会事業家部門での受賞。農業再生、水産業再生、食の再生、スポーツ振興など、支援活動は今も続き、その幅は大きく広がっている。
震災を機に、様々な関係者を結びつけるための社会基盤として認知されるようになったNPO。日本における先駆けである佐藤大吾氏は、社会起業家部門での受賞。寄付仲介サイト「JapanGiving」を立ち上げ、チャレンジする人と応援する人を結びつける新しいおカネの流れを作り出そうとしている。
そして、震災直後に緊急人道救援活動「トモダチ作戦」を展開した在日米軍、および前駐日米国大使ジョン・ルース氏には、特別賞が贈られた。その経験は、現在も「TOMODACHIイニシアチブ」に発展拡大している。
各受賞者のスピーチに共通していたキーワードは、「続ける」ということ。社会を良くするための活動に本気で取り組む受賞者たちの決意と覚悟が込められたメッセージを紹介する。
“私たちが地域に残ることによって、雇用を含め地元の経済活動を確保できる”
磯崎功典 キリンホールディングス株式会社 兼 キリン株式会社 代表取締役社長 (社会事業家部門で受賞)
キリンの磯崎功典氏
G1・KIBOWソーシャルアワードという栄誉ある賞を授賞いただきましたこと、大変嬉しく思います。ありがとうございます。2011年3月11日の東日本大震災後に私たちの仙台工場を訪問したところ、ほんとうに壊滅的な状態でした。企業活動は非常にシビアな部分もあり、このまま仙台地域から撤退するという選択肢も考えられました。ところが、私たちの仙台工場の隣には製缶メーカーの工場があり、段ボールメーカーの工場もある、さらには製紙メーカーもあります。こうした環境の中、私たちはバリューチェーンでつながっていることを改めて認識しました。私たちが地域に残ることによって、雇用を含め地元の経済活動を確保できる、そうした想いで復興を進めました。その後、私たちが地域でお世話になっている農業、水産業を復活させなくてはいけないと考え、支援を始めました。最初の4年間は財政的な支援を行いました。これからはブランドの育成、人材の育成、販路の拡大に努めていきたいと思っています。そして私たちは復興支援だけではなく、サッカーを通じてスポーツの楽しさや心の豊かさを伝える活動も展開しています。スポーツの領域でも社会に貢献していきますので、よろしくお願いします。
“このような場を作る側の黒子として活動してきた。そして、これからも”
佐藤大吾 一般財団法人ジャパンギビング 代表理事/NPO法人ドットジェイピー 理事長 (社会起業家部門で受賞)
ジャパンギビングの佐藤大吾氏
ビジネスで成功されている方は沢山いまして、社会貢献という方向で言えば、多くの利益を上げて事業を通じて雇用も生んでいます。そうした、自分では足元にも及ばないほどの社会貢献を既に為されている方がいる中で、このような機会をいただけましたことを心から嬉しく思っています。普段私はこのような場を作る側の人間として活動しており、黒子であるべき立場ですから、恥ずかしくも恐縮しています。ただ、今回の選考について、私のこれまでの経歴や事業という単体の評価ではなく、NPO業界やソーシャルセクターを盛り上げ、底上げをしてきたことを評価すると聞きまして、お受けすることにいたしました。まだまだNPOを取り巻く環境には問題が多くあります。これからも皆さまのお力をお借りしながら、若者と社会をつなぐ活動や、インターネットを介した寄付文化の醸成など、社会に貢献する仕組みや環境づくりに取り組んでいきますので、今後ともよろしくお願いします。
“We can never forget. We must always reach out. We must always help.”
ジョン・ルース 前駐日米国大使 (在日米軍とともに特別賞を受賞。授賞式には、在日米軍司令部参謀長、コーリー A. メンデンホール陸軍大佐、ローラ・ウィンスロップ・アボット TOMODACHIイニシアチブ 事務局長が出席)
前駐日米国大使のジョン・ルース氏
(ビデオメッセージ)
Good evening. I'm John Roos, the former ambassador to Japan. I’m so sorry I can’t be with you this evening. I’m back in California. But I wanted to tell you how honored I am, to be the recipient on behalf of the TOMODACHI initiative of the G1 KIBOW Social Award. And I want to thank Yoshi Hori for his vision in establishing both the G1 Summit and this KIBOW award and all of you, who are participating this evening have done for the country of Japan and particularly this evening, we honor the people of Tohoku.
It’s very hard to believe that it’s now been 4 years since the March 11 2011 tragedy. But I want you to know that as with all of you tonight, we continue to not only honor but to remember and to do all we can to help the people of Tohoku because they, in essence, are the backbone of Japan. Each of you, with all you do, honor the people of Tohoku who suffered so much just 4 years ago.
One of the things that I came to realize in my many trips up there half through the March 11th crisis is that we can never forget, and we must always reach out, and we must always help. So again, I just want to thank from the bottom of my heart.
All of you, I want to thank the G1, KIBOW organization, Hori-san, and I wish I could be with you tonight but we will all continue to work together to make the people of Tohoku look to the future while remembering the past. Thank you again, for this great honor. Good evening.
<グロービス・ニュース>
◆「G1・KIBOWソーシャルアワード2015」授賞式を開催
一般社団法人G1サミットと一般財団法人KIBOWは、日本ならびに海外において社会を良くする活動を展開し幅広く活躍する方々を顕彰する「G1・KIBOWソーシャルアワード2015」の受賞者を決定。5月13日(水)、授賞式を執り行い3つの部門でアワードを授与しました。
各部門の受賞者は以下の通りです。
<社会事業家部門>
磯崎功典 キリンホールディングス株式会社 兼 キリン株式会社 代表取締役社長
<社会起業家部門>
佐藤大吾 一般財団法人ジャパンギビング 代表理事/NPO法人ドットジェイピー 理事長
<特別賞>
ジョン・ルース 前駐日米国大使
在日米軍
キリングループは2011年3月の東日本大震災で仙台工場が浸水するなど大きな被害を受ける中、地域に密着した復興支援活動を推進してきました。2011年7月には、3年間で60億円を拠出することを決定。売上げや従業員の寄付を原資に、農業機械の購入支援や販路拡大、人材育成、農業関連高校生への就学支援など、農業再生の取組みを進めています。岩手のわかめ、宮城のかき、福島の青のりなどの養殖設備の復旧とブランド育成を支援し、水産業の再生にも尽力しています。また、G1サミット発のイニシアティブ「東の食の会」が主催する三陸フィッシャーマンズ・キャンプへの協力など、東北の「食」を支える取組みを担っています。復興支援の他にも、岩手、宮城、福島の小学生を対象にサッカーを通じてスポーツの楽しさ、心の豊かさを伝える活動を展開するなど、社会的な貢献は顕著です。
佐藤大吾氏は1996年の起業以来、事業を通じて、企業や官公庁への学生インターンシップを日本に根付かせました。1998年に設立したNPO法人「ドットジェイピー」では、議員事務所へインターン生をのべ2万人以上送り込み、60人を超える政治家を生み出しました。さらにはネット選挙の実現や投票率向上に向けた様々なキャンペーンを実施するなど、一貫して若者のキャリア形成や、若者と社会をつなぐ取組みをリードしています。これらの経験をもとに、新たな挑戦として2010年3月、2500億円を集める英国発寄付仲介サイトの日本版「JapanGiving」を立ち上げ、 日本における寄付文化創造、NPOの手による強くてしなやかな社会基盤の確立に邁進しています。内閣府政策調査員(新しい公共円卓会議担当)をはじめとする政府の要職も務め、日本のNPO界の第一人者としてますますの活躍が期待されています。
2011年3月の東日本大震災では、米軍と自衛隊は協力し、「トモダチ作戦」を通じて東北地方への緊急人道救援活動を実施しました。ヘリコプターによる孤立した被災者の救助や揚陸艇による孤立した島への救援物資の輸送など、迅速で強力な活動は被災地のみならず日本全国を勇気づけました。この経験からTOMODACHIイニシアティブが発足。米日カウンシル-ジャパンと米国大使館が主導し、国内の数多くの企業の支援のもと、日米の絆をさらに強め次世代を担う人材の育成を目的とした活動が展開されています。教育、文化交流、リーダーシップをテーマとした、被災地の高校生の米国への留学などを支援しています。震災の記憶を風化させず、国を超えて共に支えあう精神を未来へとつなぎ、世界の平和に貢献する取り組みの意義を参加者とともに確認し、讃えるため、特別賞を授与します。
◆受賞者の略歴
<社会事業家部門>
磯崎功典 キリンホールディングス株式会社 兼 キリン株式会社 代表取締役社長
1977年4月 キリンビール株式会社 入社
1988年8月 海外留学(米国 コーネル大学ホテル経営学部)
1998年10月 キリンホテル開発株式会社
1999年11月 ホテル<ホップインアミング>総支配人
2004年3月 サンミゲル社(フィリピン)副社長
2007年7月 キリンホールディングス株式会社 経営企画部長
2010年3月 〃 常務取締役
2012年3月 キリンビール株式会社 代表取締役社長
2013年1月 キリン株式会社 代表取締役社長 兼 キリンビール株式会社 代表取締役社長
2015年3月 キリンホールディングス株式会社 兼 キリン株式会社 代表取締役社長
<社会起業家部門>
佐藤大吾 一般財団法人ジャパンギビング 代表理事/NPO法人ドットジェイピー 理事長
1996年 大阪大学法学部在学中に起業
1998年2月 NPO法人ドットジェイピー 設立 理事長
2010年3月 一般財団法人ジャパンギビング 設立 代表理事(※)
2013年6月 株式会社JGマーケティング 起業 代表取締役CEO
(※)設立当初は一般財団法人ジャストギビング・ジャパン。2015年1月より改称
<特別賞>
ジョン・ルース 前駐日米国大使
1980年10月 O’Melveny and Myers法律事務所
1985年 2月 Wilson Sonsini Goodrich & Rosati法律事務所
2009年 8月 駐日米国大使
2013年 9月 salesforce.com, inc. 取締役 (現在に至る)
2013年10月 The Roos Group, LLC CEO (現在に至る)
2013年12月 (株)三菱 UFJ フィナンシャル・グループ
グローバル・アドバイザリーボード委員 (現在に至る)
2014年 4月 Centerview Partners シニアアドバイザー (現在に至る)
2014年 6月 ソニー株式会社 取締役 (現在に至る)
米スタンフォード大学において学士号(政治学)および法学博士号を取得
◆過去の「G1・KIBOWソーシャルアワード」受賞者
【2014年】
<社会事業家部門>
一力雅彦 株式会社河北新報社社長
<社会起業家部門>
宮城治男 NPO法人ETIC.代表理事
<特別賞>
安倍昭恵 安倍晋三内閣総理大臣夫人
【2013年】 (「G1・KIBOW社会起業アワード」)
大西健丞 公益社団法人 Civic Force代表理事
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン代表理事兼統括責任者(CEO)
◆G1サミットについて
「日本版ダボス会議」を目指して2009年2月に創設、2013年4月に一般社団法人としてスタート。各界のリーダーたちが学び、議論し、行動するためのプラットフォーム。G1サミット、G1 Global Conference、G1経営者会議、G1新世代リーダー・サミット、G1地域会議、G1ベンチャー、G1カレッジの7つのイベントと、部会やイニシアティブを展開しています。
◆KIBOWについて
東日本大震災の3日後に始動した救援・復興支援プロジェクト「Project K IBOW」は、「希望」と「Rainbow」から命名しました。長期的に被災地を支援していきたいという思いから、2012年2月に一般財団法人化し、主に被災地で復興支援の架け橋となるべく活動しています。
――― グロービス・ニュース ―――