ラーニング学派(learningschool)
より現場に近いところからの戦略提案が重要だと考える戦略論。組織学習を重視する。
昨今の複雑かつ変化の早い経営環境下では、(ポジショニング学派が主張するような)トップダウンによる分析的な戦略立案では適時・的確な対応は必ずしも容易ではない。そうした傾向が強まった90年代から台頭してきた戦略論がラーニング学派だ。ミンツバーグはそのように組織内から生まれる戦略を創発的戦略と呼んでいる。
ラーニング学派の代表は、「学習する組織」を提案したピーター・センゲであり、コアコンピタンスを提唱したゲーリー・ハメルやK・プラハードなどもラーニング学派の範疇に含まれる。また、ボストンコンサルティンググループが唱えたケイパビリティ・マネジメントにもラーニング学派の影響を見て取ることができる。
ラーニング学派では概ね以下のことを大前提としている。?戦略は創発的なものであり、形式的な計画で生まれるものではない、?戦略家は組織のいたるところに存在している、?戦略の形成と実行は相互に絡み合っている、?組織内で創発したアイデアや行動を戦略にまとめ、組織に展開することが重要である、?組織学習が創発的戦略の立案・実行・修正を促進する。
ラーニング学派の考え方は、日本企業にとっては決して目新しいものではない。むしろ、かつての日本の成功企業における戦略立案・実行のあり方を理論化したものと見ることもできる。往々にして戦略不在とみなされることも多い日本企業であるが、それはポジショニング学派から見た評価であり、ラーニング学派から見た場合には、また別の評価となるのである。
次回は「コンフィギュレーション学派」を取り上げます。
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