リアル・オプション(RealOption)
金融工学で用いられるオプションの価格決定理論を応用したプロジェクト評価の考え方。
リアル・オプションの原理は、不確実性のある将来において、柔軟性を持つプロジェクトや資産は、そうではないプロジェクトや資産に比べて高く評価できるというものだ。柔軟性を持つとは、ある状況が明らかになった段階で、継続か中止かなどの判断が可能な場合をいう。たとえば、新製品をいきなり大々的に市場導入する場合と、テストマーケティングの結果次第で本格的に展開するか止めるかを決めることができる場合とでは、後者のほうがプロジェクトの価値が上がる。あるいは、いきなり大規模プラントを建設する場合と、まずは土地だけ購入しておいて、経済状況を見ながら上もののプラント建設の是非を検討する場合も、同様の結果となる。これらの分析にあたっては、ディシジョン・ツリーを用いるが、プロジェクトの柔軟性を正しく見極め、実態を反映したディシジョン・ツリーを作る必要がある。
リアル・オプションという評価手法が生まれたことによって、それまでの正味現在価値(NPV)法では却下されたプロジェクトでも、柔軟性を持つ案件であればゴーサインが出るようになった。その一方で、勝算の小さなプロジェクトに対しても、将来の柔軟性をこじつけることでプロジェクトの価値を上げ、着手したという既成事実を作る道具になりかねない、という批判がある。
次回は「イグジット」を取り上げます。
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