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マンションの価値はどう決まるのか?「収益還元法」で考える

投稿日:2015/10/24更新日:2019/04/09

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9月下旬、横浜市都筑区にある大型マンション全4棟のうち1棟が傾斜する事件が発生した。基礎工事を請け負った旭化成建材の杭打ち作業が不十分だったことが原因で、発注元に対して隠ぺい工作までしていたと言う。販売元の三井不動産レジデンシャルは事態を重く受け止め、マンション全4棟の建て直しを住民に提案しているが、住民の一部は「仮に建て替えたとしても風評被害もあり、資産価値が下がることは必至」と怒りをあらわに話す。人生で最も高い買い物と言われる不動産。無理からぬ話である。

ところで、マンションなどの不動産の価値はどの様にして決まるのだろうか。

結論から言うと、そのマンションが将来稼ぐ家賃キャッシュフローを、期待収益率で現在に割り引いた価値で計算するのが一般的な考え方である。例えば、このマンションを月額家賃20万円で他人に賃貸できるとしよう(単純化のために、管理費や修繕積立費などの諸費用を無視する)。仮に期待収益率が4%だとすると、このマンションの価値(=値段)は6000万円という計算になる【=(20万円/月×12カ月)÷4%)】。従って、この不動産物件を6000万円以下で買うことができれば「お買い得」と言える。

ちなみに、この計算手法は一般には収益還元法と呼ばれているが、その根底には、ファイナンスの根幹概念であるディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)の思想が流れている。

この概念に照らし合わせると、前述したマンション住民のコメントを定量的に検証することが可能になる。今回の問題によりこのマンションに対する需要が冷え込み、たとえ他人に賃貸しても月額家賃は期待値20万円を下回る可能性が高い。仮にその家賃を12万円と仮定すると、不動産価値は3600万円に下落し【=(12万円/月×12カ月)÷4%】、この住民は2400万円もの損害を被るのである。従って、マンションの住民達はこの様な評価アプローチを当てはめて今回のマンション不正問題の被害額を具体的に定量化し、販売元の三井不動産レジデンシャルに対する補償額の根拠とするのも一案であろう。

ここで理解しておきたいのは、将来受け取ることができるキャッシュフローを手掛かりにして資産価値が算出されるという極めて単純明快なメカニズムである。広義に解釈すれば、およそキャッシュフローを生むものであれば不動産などの“目に見える”資産だけではなく、優れたビジネスプランなどの“目に見えない”ものにもその対象が広がり得るという汎用性ではないだろうか。

好奇心の強い読者であれば、年収やボーナスというキャッシュフローを生む「自分自身」の価値も計算することができると気が付くはずだ。

  • 星野 優

    グロービス経営大学院 教員

    慶應義塾大学法学部卒業、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修士課程修了(MBA)。大手総合商社にて、主に東南アジアの資源開発・輸入案件向けのプロジェクトファイナンス業務に従事。約3年にわたる海外駐在時には、石油化学製品の製造・販売合弁事業会社の非常勤役員に就任、出資・融資・製品引取も絡めた複合取引を実現。株式会社グロービス入社後は、ファイナンス系科目の教材開発等を担当する傍ら、グロービス・マネジメント・スクール及びグロービス・オーガニゼーション・ラーニング(企業研修)にて講師も務める。主著に『[実況]ファイナンス教室』(PHP研究所)。

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