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サントリーのJT自販機事業買収で生じた「のれん代」って何?

投稿日:2015/06/05更新日:2019/04/09

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JTの飲料自販機事業の売却先がサントリーに決まった。飲料自販機事業はこれまでコカコーラが83万台とトップで2位のサントリー49万台に大きく水をあけていたが、今回のM&Aによりその差がグッと縮まりそうだ。

さて、2014年12月末におけるJTの飲料自販機事業の中核子会社であるジャパンビバレッジホールディングス(JB)のB/S(バランスシート)上の純資産は584億円。サントリーはこのうちの70.5%、すなわち、412億円分を1500億円で買収する。このように、M&Aでは買収金額とB/Sの純資産(買収相当部分)とに差額が発生することがある。ざっくり言うとこの差額が「のれん」である。のれんは、会社のブランド、人財、顧客、販路、ノウハウ等々の目に見えない価値の集合体と言うこともできる。現在の会計ルールではこのような自社で構築した目に見えない価値はB/Sには資産として計上されないが、M&Aにおいて顕在化することになる。

のれんは現在の日本の会計ルールでは、会社が設定する20年以内の一定期間にわたり償却される。サントリーのケースでは、20年で定額法償却すると(1500-412)/20=54.4億円/年となり、毎年約54億円の償却費用が発生し販売費及び一般管理費に計上される。サントリーはJBの営業利益(約30億円の水準)を取り込むことにより約30億の増益が見込まれるが、同時にのれんの償却費約54億円が営業利益の押し下げ要因となり、買収しただけではJBの飲料自販機事業は24億円の営業赤字となる。

M&Aの成否を買収後最高益(営業利益)の更新という見方をすると、今回のM&Aは買収金額が高額すぎた、M&Aの失敗と評される可能性もあるため、サントリーとしてはのれんの償却費を加味しても買収した飲料自販機事業をいかに黒字化するかが課題となろう。

なお、IFRS(国際財務報告基準)ではのれんの償却は不要であり、M&Aを推進している日本企業の中には会計ルールをIFRSに変更する例も見られる。

  • 溝口 聖規

    グロービス経営大学院 教員

    京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。 (資格) 公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)

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