ビジネスリーダーにぜひ読んでほしい1冊を紹介するこのコーナー。今回は2015年4月23日に発売された『27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力』(グロービス経営大学院著、東洋経済新報社刊)をピックアップする。
本書は、2014年8月に発売以来、大好評を得ている『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』の続編である。グロービス経営大学院でMBAを教えている3人の執筆陣(研究科長と副研究科長)が、忙しい毎日のなかで「自らが学び続ける」ために工夫してきた方法を公開。グロービス経営大学院やグロービス・マネジメント・スクールの学生が編み出してきた様々な「学び方」から、広くビジネスパーソンに役立ちそうな極意を抽出し、「結果を出す人の学びのコツ57」として整理したものである。とても具体的で、実践的な内容になっている。
私自身は、少し悔しい思いをしている。28歳の時にグロービス経営大学院でMBAを学び始めたのだが、この本のタイトルにもある「27歳からの」というコンセプトにドンピシャリだった。もし、その時にこの本があったら、経営大学院での2年間の学びはもっと深まっていたのではないか、本を読む、人に会う、仕事をするなど学びの機会をもっともっと広げられたのではないかと思ってしまう・・・。
もちろん、学び方というのは試行錯誤を重ねて自分に最も合ったカタチを作っていくものであって、学び方を見つけるのも学びの大切な要素だ。しかし、ビジネスパーソンは既に自分なりの学び方を持っていて、定着していることが多い。それに疑問を抱き、新たなカタチを作るのは簡単なことではない。だから、「学び方を学ぶ」ためのガイド役となる良書が必要なのだ。その意味で本書は、20代の若手だけでなく、30代、40代のミドル層の先輩諸氏にとっても新たな気付きを得ていただけるものだと思う。
特にユニークだと思う2点について触れておきたい。
1.個別体験ではなく、衆知から57の「コツ」を導き出している
世にある勉強法や学び方は、著者個人の学習体験から語られるものが多い。「自分はこのような方法で学び効率的かつ効果的に良い成果が得られた」という話だ。具体的で説得力があり、とても参考になるが、学び方は多様で「合う、合わない」の相性もある。誰かの学習における成功体験が、必ずしも自分の成功体験になるとは限らないのだ。本書は、グロービス経営大学院でビジネスリーダーを目指して学んでいる社会人学生の衆知であり、そこから57の原則(コツ)を抽出している。自分に合う「学ぶ技術」を見つけやすい。
2.特別な活動ではなく、「日常の活動」に落とし込んでいる
本書では、(1)キャリアから学ぶ目的を定める、(2)インプットする、(3)次のために振り返る、(4)アウトプットする、(5)フィードバックを受ける――という「学びのサイクル」を提唱している。「学び」を日常の活動にまで落とし込み、定着させることを狙っているからだ。経営大学院でのMBAの学びは、禅道で言うなら滝行や座禅などの「修行」である。非日常の極限環境に身を置き、自分自身を追い込んでいく。それを、日常にある当たり前の活動に溶け込ませていくことによって、本当の意味で学びが身についていくし、学びを続けられるというのが本書の発想だ。禅道で言うなら掃除や食事などの「所作」のレベルで実践するということである。
57の原則のなかで自分自身が実践していて、読者の皆さんにもお薦めしたいものを2つ、ご紹介しよう。「原則29: 仕事とは直接関係ないものにも積極的に触れる」と「原則40:文字・文章に残す」である。前者としては、古典から生き方に関する先人の知恵を学び、座禅を組むことで感じ取る力を養っている。後者としては、本を読みっぱなしにするのではなく、新たな気付きや自分の解釈をノートに書き残している。理解が深まり、記憶に定着し、日常会話に学びを生かせる実感がある。「自分にとって何が新しく、自分の中でどういう意味を持つのか」をより深く考えるようになった。
ぜひ、あなたにとっての「学びの原則」を見つけ、学びのサイクルを最高速でグルグル回していただきたい。そして、あなたにとっての目標を一日も早く実現していただきたい。
『27歳からのMBA グロービス流ビジネス勉強力』
著者: グロービス経営大学院、執筆: 田久保善彦、荒木博行、村尾佳子
2015年4月、東洋経済新報社刊
1,500円(税込1,620円)