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次なるシリコンバレーはどこか?

投稿日:2014/05/27更新日:2019/08/20

バンガロールからテルアビブ、ケンブリッジから深センに至るまで、世界中の都市がITイノベーションの聖地―次なるAppleやGoogleが生まれる可能性のある場所――となることを目指して戦いを繰り広げている。

Google、フェイスブック、Twitterのような大物への初期投資で知られる米国の伝説的ベンチャー・キャピタリストであるロン・コンウェイ氏は、ニューヨークに勝算があると考えている。その理由は、ニューヨークのメンター、ベンチャー・キャピタリスト、起業家のエコシステムが、シリコンバレーのような「クリティカル・マス」に達しつつあるからだと言う。

このコンウェイ氏の意見に対して、僕が即座に反応した。東京はどうか? 東京も必要なクリティカル・マスに達しているが

驚いただろうか?

いや、驚くべきではない。確かに、日本人とビジネスについて次のようなステレオタイプがあるのは承知している。日本人は新興企業を経営する目まぐるしさよりも、定評のある大企業で終身雇用される安全性のほうを好む。日本人は失敗を許さない。日本人にはイノベーションが不可能である……。

だが、これらのステレオタイプは完全な誤りだ。以下のクイズに挑戦すれば、僕の言いたいことがよくわかってもらえるだろう。
問1:ザッカーバーグ氏、モスコヴィッツ氏、サベリン氏、パーカー氏の「フェイスブック4」以外で、世界で最も若くして一代で億万長者となった人物は?

問2:世界で最も成功した女性IT起業家は?

1つ目の「億万長者」に関する質問の答えは、東京に本社を置くモバイル・ソーシャル・ゲーム会社グリーの創設者、田中良和氏である。2013年3月、『フォーブス』誌は田中氏の資産額を推定16億ドルと報じた。しかも、田中氏はわずか36歳である。日本人は「リスク嫌い」であるとのステレオタイプとは裏腹に、田中氏は一流企業での「安全」な仕事を辞め、27歳でグリーを設立した。

では、2つ目の女性起業家に関する質問に移ろう。ほとんどの人は、シェリル・サンドバーグ氏(フェイスブックCOO)、マリッサ・メイヤー氏(ヤフーCEO)、メグ・ホイットマン氏(元イーベイCEO)などの有名人を思い浮かべたはずだ。あなたもその1人ならば、残念ながら不正解である。上記の3人はいずれも偉大なリーダーだが、それぞれの会社を自分で設立したわけではない。

その点で、僕は南場智子氏を世界一の女性IT起業家として挙げる。マッキンゼー・アンド・カンパニーの元パートナーである南場氏は1999年、30代後半でウェブ・サービス会社ディー・エヌ・エー(こちらも本社は東京)を設立した。ポートフォリオに新たな成長エンジン――モバイル・オークションからソーシャル・ゲームまで――を次々に加えることで、南場氏はディー・エヌ・エーを世界10カ国に拠点を置く35億ドルの巨大企業に成長させた。同社は、失敗の「原体験」があったからこそ今の成功があると自認している。ここでもまた、日本人に関するステレオタイプが覆される。

東京が持つシリコンバレー的な強みは、田中氏や南場氏のような成功した起業家だけではない。僕は少なくとも、あと5つは挙げることができる。つまり、メンターと投資家のネットワークがあること。フォーチュン500社が世界で最も多く本社を置く都市であること。GDPがロサンゼルスの約2倍であること。ニューヨークの人口が2,000万人であるのに対し、3,700万人もの膨大な人口を擁すること。韓国に次いで世界第2位の固定およびモバイル・ブロードバンド普及率を誇ることである。

ビジネス・スクールの学長兼ベンチャー・キャピタリストとして、僕は日本経済の現状を間近で見ているが、好材料ばかりである。「オールドジャパン」では、優秀な若者は一流大学を出て、そのまま政府や大企業に就職していた。それが今では、ベンチャー企業を自ら立ち上げているのだ。

僕の会社が過去5年ほどにIPOを実施した企業の創設者のうち、3人は東京大学、1人は京都大学の出身である。僕たちが2013年末に公開したいと考えているある企業のCEOは、シンガポールを本拠地とする日本人だ。17年間のベンチャー・キャピタリスト人生で、世界志向の優秀な若き経営者をこれほど多く目にしたことはない。

だから、世界中の若き起業家、エンジニア、テクノロジー投資家に向けて僕はこう言いたい。「ジャパン・パッシング」の時代は終わった。一旗あげたいなら、中国やインドには行くな。「ニュージャパン」の一端を担いに来い。ここ東京に次なるシリコンバレー がある、と。

写真:グロービス経営大学院の学生と同窓生が参加した「あすか会議2013」。彼らは、社会の創造と革新を担う日本の若きビジョナリー・リーダーである。

[開示情報:堀義人が代表を務めるベンチャー・キャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズでは、グリーに投資するファンドを運営しています]
この記事は、2013年7月19日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。

  • 堀 義人

    グロービス経営大学院 学長/グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー

    京都大学工学部卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事を経て、1992年株式会社グロービス、1996年グロービス・キャピタル設立。2006年グロービス経営大学院を開学。2008年に「G1サミット」を創設。2011年には復興支援プロジェクトKIBOWを立ち上げる。2016年に茨城ロボッツ、2019年に茨城放送オーナー就任。2022年にLuckyFesを立ち上げ、現在総合プロデューサーを務める。2024年よりBARKSオーナー、世界最大のPR会社の米国エデルマン社 社外取締役。

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