「古典から紐解く日本的経営の原風景」の連載をスタートさせたグロービス経営大学院 研究員の奈良美代子が選ぶ「変わるため」の1冊。
『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践』
ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー 著
新年の計は元旦にあり!何年も実現・実行されていない計を立てている人に読んでほしい1冊。
変化の必要性を感じていながらもそれが実現できない理由の1つに、変化しないことによって得ているメリットがあり、そのメリットを失いたくないという無意識が働いているからだと説く自己啓発書がいくつもある。しかし、それを探る方法について言及しているものはなかなか見当たらない。
本書は、変化したい、改善したいという感情やそれに基づく行動を排除し、従来通りであり続けようとする無意識の心の働きを、身体に入った異物を排除しようとする免疫機能になぞらえて「変革を阻む免疫機能」と名付けた。そして、その「免疫機能」つまり変化を阻んでいる行動や、その行動を取り続けることで得ようとする自分にとって都合のいい感情や状態、その行動のもととなっている思いこみなどを掘り起こしていく。たしかに、変化は強烈な痛みを伴いメタファーとしての死を経験することを考えると、そのような状況から身を守ろうとする機能が身体にあるのと同様に、心にあってもおかしくはない。
実は私もここ数年間、変化したいと感じながらもそうできないもどかしさを感じていた。本書に挙げられている事例を読み進めていくうちに、自身の変化を阻んでいる「免疫機能」の存在を直視しなければならない時期が来ていることを悟った。本当は心のどこかでこの「免疫機能」の存在を感じながらも、直視できなかったために、無意識に追いやってしまったものであることに気がついたからだ。
年の初めに立てる計が「今年こそ」といいながら、何年も実現・実行の一歩が踏み出せていない場合は、それを阻んでいる心の働きに注目してみてはいかがだろうか?
『なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践』、ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー著、英治出版(2013年10月発売)