11月15日の夜10時に起業家リーダーシップのクラスを終え、羽田空港に向かった。深夜零時30分発のシンガポール行きに搭乗。翌朝シンガポールに着き、現地時間朝10時ごろNZのオークランド便に搭乗した。そして、オークランドのホテルに着いたのは、現地時間深夜零時を周っていた。日本との時差が、4時間もあるのだ。結局、20時間かけて、NZに到着したことになる。
翌日の朝9時から会議が始まる。溜まりに溜まったメールに返信して、早目に就寝することにした。
翌朝のアジア・太平洋州の年次総会が始まった。このアジア・太平洋ビジネススクール協会(AAPBS)は、数年前に始まった会合だ。韓国のKAISTがリーダーシップを発揮して、中国の精華大学や日本の慶応大学が、発起人として名を連ねて始まった。目的は、アジア・太平洋地域のビジネススクールの連携である。
このAAPBSには、日中韓・アジア豪州との名門校が参加している。中国は、20以上の大学が参加するが、日本・韓国は、それぞれ数校程度。あとは、マレーシア、インドネシア、香港、フィリピン、シンガポールそして豪州等だ。グロービスが正式に参加するのは、初めてだ。末席に入れてもらう新参者として、一人一人の参加者に丁寧に挨拶をしている。
グロービスのビジョンは、アジアNo.1の大学院になること。そのためにも、アジア太平洋のビジネススクールとの協力関係は不可欠だ。このコミュニティでも良い評判を創ることが重要だ。ネットワークを創る場としては最高である。
グロービスでは、管理職クラスが皆積極的に海外の会合に参加している。その際の最低限の役割は、1)50人以上と名刺交換する。2)最低2回は、会場で発言する、3)そして、全社に出張報告をする、だ。僕も、頑張って名刺交換と発言のノルマをクリアしないといけない。率先垂範だ。
朝9時に会議の主催者のオークランド大学の学長の挨拶が行われた。冒頭は、マオリの言葉と歌だ。こうして、アジア太平洋州のビジネススクールの会合がスタートした。続いて、今年度の幹事校のクイーンズランド大学のDeanの挨拶があり、主催者のオークランド大学のDeanへと続く。
Deanという言葉は、聞きなれないかもしれないが、ビジネススクールのトップを意味し、通常は大学の学長(President)の傘下にある。日本語では、「研究科長」という呼称を使う事が多いが、ここでは雰囲気を出すために、Deanという呼称を使う事にする。
NZは、人口400万人で、1/4がオークランド近郊に住んでいる。最も近い国と大陸が豪州と南極大陸だ。最も疎外された経済圏だ。テーマは、「起業家精神と革新」だ。僕の得意分野だ。
1950年代は、NZは世界で3番目の一人当たりGDPだったが、今は30位近くに落ちた。挽回の為には、起業家精神が必要だ。それをオークランド大学が一生懸命やっている、と報告を受けた。
面白かったのは、SPARKというビジネスプランコンテストを中核とした、起業家精神の醸成である。10年ほど前に始まった試みだが、既に70億円以上の出資を受け、300人以上の雇用が生まれていると言うのだ。実際に、2人の起業家が来てスピーチをしていたが、とても発想は、グローバルだ。ここで、僕が、一回目の質問をした。「Exitはどうするのですか?」、と。やはり、NZでは規模が小さく、上場市場も発達していないので、殆どは海外の企業への売却が中心となる。だが、本当に海外企業は、400万人の市場に興味を示すだろうか。そう考えると、日本市場にいられるメリットを痛感することになった。
他のプログラムは、教授のスピーチが中心だった。正直言って、冗長で面白くない。グロービスの講師のレベルの高さを痛感する。
午後6時までの会議を終えて、バスに乗りオークランド博物館に来た。ハッカの歓声で、マオリ風の歓迎を受ける。NZのリーダーは、一様にマオリ語をしゃべる。最初は、「ワオ!」と思ったが、皆がそうすると食傷気味になる。フィリピン地域から始まったポリネシアの進出が、10世紀前後にNZに至ることを学ぶ、マオリの人々は、基本アジア人なのだ。
博物館の入口に設定された即席のレストランで、食事を楽しむ。赤ワイン特にピノ・ノワールが美味しい。ちょっとほろ酔い気分になる。
そして、翌日朝9時から年次総会の2日目が始まった。久しぶりにスピーチをしない、一参加者の立場でのコンファレンス参加だ。新参者なので、スピーチをする機会を与えられない。だからこそ、その分、場から発言することにしている。議論に貢献しながら、さりげなく存在感を示すことが重要だ。場からの発言の機会を多く持ったので、かなり、良い意味でのデビューを果たしたと自分では思っている。
この年次総会に来て思ったことは、アジア・太平洋には、実は多くのビジネススクールが存在する、ということだ。だが、規模的にも質的にもそん色は無い。むしろ光っている気がする。GLOBISは、来年から英語のフルタイムのMBAを開始する。やっとスタートラインに立った気がする。これからが勝負だ。
アジア・太平洋のビジネススクール年次総会は、2日目の14時で終了だ。来年の幹事校は、日本の慶応ビジネススクールだ。グロービスとしても、「成功に向け、惜しみない協力をします」とお伝えした。その後、15時から夜の11時まで、NZ在住の僕が尊敬する先輩経営者と歓談。とても楽しい一時を過ごした。
土曜日の予定が空いたので、NZで一日時間ができた。「さあ、どう過ごそうか?」を考えた。やはり、NZを体感するには、レンタカーをして、自然を満喫しようと考えた。先ずは、Kumeu Riverというワイナリーを訪問。そして、Waitakereとうい原生林が広がる高台を、ドライブした。
ドライブ中、光が射し、森林のマイナスイオンを体感できた。Pihaという西岸のビーチに到達した。高台から見下ろす景色に思わず息を飲んだ。Pihaとは、マオリ語で「ライオンの岩」というらしい。ビーチが広がる中、1枚のデカイ岩が海岸に聳え立っているのだ。とても幻想的な景色だ。
Pihaの岩は、マオリ人にとっては神聖なる岩である。幸い登頂が可能なので、登ってみることにした。酋長が座ったと言う場所に腰を下ろし、一人目を閉じる。エネルギーが体の中へ突きあげてくるのがわかる。強いパワースポットである。静かにその感覚を楽しみ、心に浮かびあがってくるものに、感じ入っていた。
Piha訪問の後、半島の付け根を東海岸まで、横断した。North Shoreと言われる地域のビーチを訪問した。荒々しい西の海とは打って変わって、東の海は湖のような静けさだった。ハーバーブリッジを越えて、スカイタワーを横切り街中へと向かい、ハーバーに位置するホテルに滑り込んだ。
翌日の日曜日は、オークランド・ドメインにある博物館を訪問し、旧火山であるMt. Edenに登った。360度パノラマの絶景である。ホテルに戻る際、トライアスロンのワールドカップレースのために、そこら中が通行止めで、やきもきした。何とかホテルにたどり着き、空港に向かい、シンガポールへと旅立った。
初めてのNZへの出張は、この様に実りが多いものとなった。
2011年11月20日
機内で執筆
堀義人