リヤド空港に夜中の2時に着き、ホテルにたどり着いたのは、夜中の3時近くだ。すぐに就寝し、朝7時前に起床した。軽くメールチェックをして、朝7時半からのミッションの結団式に参加する。
結団式で、JETROの専務理事、駐サウジの遠藤大使等が挨拶された。遠藤大使の言葉が印象的だった。「サウジほど、日本と違う国はない。一方、こんなに興味深い国もない」、だ。
サウジには、殆ど下調べをしないで来た。昨日の友人との会合で、「何か、気を付けることはあるか」と聞いたら、「女性にだけは、気をつけよ」と言っていた。僕がその意味を理解するには、多少の時間を必要とした。
政府ミッションを乗せたバスが、投資家と会う場所に向けて出発した。車内には、日本を代表するプライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルの経営トップが乗っていた。当然、業界の情報交換が花盛りとなる。この交流も、今回の目的の一つである。普段東京では、なかなか会えない人が多いからだ。
リヤドにある、インキュベーション・センターに着いた。そして、トープに身を包んだサウジの方々が登場された。彼らは、前方のふかふかのソファ―に陣取り、僕らは、後方の堅い椅子に座った。朝9時半から、一通りの挨拶、基調講演、日本の技術の紹介やベンチャー企業の紹介があり、休憩に入った。午前11時から、3つのチームに分かれ、分科会セッションが開催された。僕が分科会
Cで、トップバッターとして登場した。喋り始めてすぐに、僕はスピーチのスピードとトーンを変えた。可能な限り、ゆっくりと分かりやすく、心をこめて、話すこととした。最後の質疑応答も、丁寧に対応した。
ランチタイムは、サウジ料理だ。基本は、マトン等の脂っこい肉類だ。意外にデザートが美味しかった。同じテーブルのサウジの方々と話がはずむ。商談というよりも、ライフスタイルへの関心が高いので、どうしてもそっちに質問が行ってしまう。「子供は何人?」、「どうやって結婚を決めたのか?」、「妻は、何人欲しいの?」、「スポーツは何が盛ん?」等だ。
その会合の合間に、僕のツイッターにサウジからレスが入っていた。「ようこそリヤドへ! 以前お会いした、リヤドのグロービス生(休学中)です」。更に、メールも入っていた。「たまたまツイッターを拝見したところ、リヤドにお越しになられているとのことで、大変驚いてメール致す次第です」。
彼と連絡を取り合い、急遽会うことにした。分科会後のランチ、そして、全ての会合が終了した15時にインキュベーション・センターで待ち合わせした。聞くところによると、3か月ぶりに何気なくツイッターを開いたら、僕のツイートがあり、驚いてコンタクトしたのだと言う。僕も、グロービスのGMBA生にリヤドでまさか再会できるとは、思ってもみなかった。
一旦ホテルに戻ってから着替えて、外出した。目的地は3つだ。(1)国立博物館に向かい歴史を学ぶこと、(2)モールに行ってライフスタイルを学ぶこと、(3)繁華街に行きナイトライフを観ること。その間、GMBA生に色々と質問した。
多くの人からヒアリングした内容から、「サウジでビックリしたことランキングTOP10」を以下の通りにまとめてみることにした。ちなみに僕は、ヨルダン、UAE、エジプト、モロッコ等の中東のイスラム国に行ったことはある。だが、これほど違う国は初めてだ。
- サウジでは、女性は、車を運転してはいけない。従い、一人で移動するときには、外国人労働者に車を運転させ、女性は後部座席に乗るのだと言う。
- サウジでは、結婚は母親が決め、結婚前に男女が会う事が無いのだと言う。さすがに、「結婚前には、相手の顔を見たいよな~」と呟いている同僚に、在サウジのGMBA生が共感したと言う。
- サウジでは、男女が一緒の空間にいてはいけないのだ。博物館も、(1)男性シングルの時間と、(2)ファミリー(ここに独身女性が含まれる)とに時間を分けて開放される。ビルも男女の出入り口が別になっている。僕らが行ったインキュベーション・センターでは、全く同じ形をした入口が正面と裏とに二つあるのだ。全ての学校は、男子校と女子高に分かれている(但し、最近初めて共学の大学KAUSTができたと言う)。レストランも当然、男女が別のセクションにいなければならない。
- サウジでは、外出の時は女性はアバーヤが基本となり、肌や髪の毛を見せてはいけない。外国人女性であっても免除されないので、アバーヤを身につける必要がある。それが守られないならば、宗教警察が強制的に帰国を促すのだと言う。
- サウジでは、アルコールが一滴も飲めない。外国人ホテルでも駐在員も一切所持できないし、飲めないのだ。誰であろうが、見つかれば厳重の処罰を受ける。日本で言う麻薬と同じ扱いを受けるのだ。
- サウジでは、映画館が一つも無い。レストランでも音楽は流れないし、当然コンサートなど全く開かれない。
- サウジでは、女性は22-24才で結婚することもあり、基本子沢山だ。20歳以下が人口の50%以上を占めると言う。僕がランチで同席した人は、子供が4人と6人だ。YPOの友人は3人で少ない方だという。そのために、街中には子供向けの遊技場が多い。
- サウジでは、一日5回のお祈りの時間には、全ての活動が停止する。また、日中が熱いので(夏は50度を超えると言う)、夜の生活が基本となる。従い、夜7時の最後のお祈りの後からが、活動が盛んになる。一番の交通渋滞は、夜の10時ごろに発生するのだと言う。
- サウジでは、個人所得税も消費税も無く、法人税も無い。法人には、5%の喜捨を税的に行っているだけだ。80%以上の国庫は、原油の収入で賄うのだという。失業手当も充実しているので、国民に不満が溜まることも余り無いのだと言う。エジプトで動乱があっても、サウジでは静かなものであった。
- サウジでは、お金を使うのは、車、買い物、そして海外旅行になる。特に旅行の際には、国内で厳しい戒律の下にいるので、かなりハチャメチャになるのだと言う(僕は、その気持ちが良く理解できる)。
いや~~、サウジでは、「ビックリ」することが多い。まだまだ書ききれないほどだ。サウジでは、独身女性と交際をすると、(1)犯罪者として刑務所に入るか、(2)結婚するかの二者択一になるとか、だからこそ女性には気をつけなければならないのだ。他にも、サウジでは、サウジでは……とビックリし通しだ。
そのGMBA生と僕とは、博物館・モールを訪問した後に、繁華街のレバノン料理店に入った。ノンアルコール・ビールで乾杯した後に、ノンアルコール・シャンパン(炭酸入りのリンゴジュース)を飲み、音楽が無い男だけの空間で、静かに夜を楽しんだ。
そして、案の定、夜10時台の交通渋滞にはまり、ヒヤヒヤしながらホテルに戻り、空港に向かった。離陸後、シャンパンをリクエストしたが、「離陸後30分はサーブできません」と言われてしまった。サウジ領内を飛んでいるうちは、アルコールはダメなのであろう。
一方、領内であっても、客室乗務員も乗客の女性も、アバーヤを脱ぎ、スカート姿で、顔も肌も露出していた。ごく普通のストッキング姿や手の肌が、妙に色っぽく感じられた。僕は、疲労からか、シャンパンを飲むことも無く、そのまま8時間爆睡した。
そして、香港着陸寸前に起こされて、香港経由で羽田便に乗り換えて帰国した。こうして、パリ、チューリッヒ、ダボス、ジェッダ、そしてリヤドの6泊10日(機内3泊)の長旅は、エンディングを迎えた。
羽田便でも離陸後すぐに眠りに着いた。羽田直前になり、むっくと起き上がり、初めてシャンパンにありつくことができた。(^^)¥
2011年2月6日
三番町の自宅にて執筆
堀義人
(前回はこちら)