G1サミットからの帰宅後、寝不足でちょっとダルイ体、お酒を飲み過ぎて違和感を訴えるお腹、極度の緊張感から解放され心地よい虚脱感を楽しむ心。その宴の後の朦朧とした状態で、ツイッターのハッシュタグ「#G1summit」の無数のツイートを眺めている。一つ一つの情景、登壇者の顔、そしてみんなの思いが伝わってくる。
本業に邁進しながら、G1の準備するのは、予想をはるかに超える労力を要した。全てのセッションを、ダボスを超える内容にしたいという、強い思いでやってきた。数多くの参加者、登壇者、ボードメンバー、協賛者、星野リゾート等のお陰で、第3回G1は、大成功裏に終えた。多くの方に感謝するととともに、この成功を高らかに宣言したい。
その高揚感を楽しみながらも、頭脳の冷静さを必死になり保ち、印象に残っていることを振り返り、順不同で書いてみることにした。
-----
1)今回のG1サミットで、財政、外交・防衛、社会福祉、地域のセッションで聞いた日本の現況は、僕の認識をコテンパンに打ちのめすほど厳しい、と言う事を実感した。「1億2千万人総無責任」、という言葉が櫻井よしこさんからあったが、今後は、断固たる行動が必要だと強く思った。
経営共創基盤・冨山和彦さんからも、「我慢比べだ」、という言葉があった。言い続け、行動し続ければ、51%を超えた段階で、流れが変わるのだ。リーダーがしっかりと主張し、行動しさせすれば、必ず変わるのだ。ただ、我慢が必要なのだ。
2)一方、これまで僕は、恥ずかしながらも、「次代」のリーダーという意識でしかなかった。だが、「G1参加者は、既に日本を改革するリーダーなのだ」、という自覚を持たなければならないと強く思った。
その意を強くしたのは、20代、30代の参加者との対話からだ。彼らの切実な思いを聞いていると、「僕らがもうやらなければならないのだ」、と強く認識させられたからだ。事実、政治家の仲間は、政府の中枢にいるし、知事の立場にもいる。もう僕らが、日本の未来に責任を負う時代になったのだ。
3)今回から、ツイッター・ブログを解禁にした。そのことにより、今も読者の皆さんとメールやブログで繋がっているように、180名の参加者だけではなく、数万人以上の方に参画頂き、対話ができている、という感覚を持てた。クロージングでも数人のツイートを紹介させてもらった。多くの人と共感できたのは、率直に嬉しいことだ。
当初2回のG1サミットは、コアなG1コミュニティ創りに専念するために、徹底的な秘密主義だった。今年からは、原則解禁にして、180名でなく、もっと広いコミュニティ創りに乗り出しているのだ。来年からは、ニコニコ動画やUSTREAMを一部セッションに入れていこうと思っている。もっとオープンにしていく方針だ。
会期を通じて、サミットの運営、来賓の送迎、全ての登壇者への表敬訪問している間に、僕は、ツイッターで呟き続けた。そのことにより、多くの方と繋がった。「共感の場」がサイバースペース上にでき上がったことを実感した。
4)さらに、日本には、素晴らしい知識層とリーダーがいる、という事実を再度痛烈に認識できた。野中郁次郎氏、松岡正剛氏、田坂広志氏の3人の「知の巨人」の知恵と思い。櫻井よしこさんの魂を揺さぶる言葉。そして、政治家・財界リーダーの意識と見識の高さ。このクオリティの高さは、ダボスを超えている。
では、なぜうまく行っていないのか。それは、今まで各界のリーダー同士がインフォーマルに意見交換する場が無く、フォロワーシップを生み出す意思の疎通もできていなかったからだ。野中さんの言う、共感の場の設定ができてなかったからだ。でも、これからは、大丈夫だ。G1があり、ツイッターやブログ等の直接メディアが、その「共感の場」の役割を果たすからだ。
5)最後に、日本には素晴らしい知識層・リーダーとともに、大切にすべき価値観が多くあると言う事を認識した。今回セッションを聞きながら、「何を引き継ぎ、変革し、新たに創るのか」を考え続けてきた。「引き継ぎ」、「変革する」ものは、容易に想像ついた。だが、「新たに創るもの」だけが、自分の中では見いだせなかった。恐らく未来に必要な要素が、実は全て既にここにあるからだと思う。
ふと気がついたのは、「新たに創るのではなく」、「新たに呼びもどすべきもの」ではないかと言う点だ。これは、知の巨人3名と櫻井よしこさんとの4人が共通して、一貫して主張されてきたことだ。つまり、呼び戻すべきことは、「日本人としての価値観」だ。
野中さんの言葉では、「暗黙知」であり、「場創り」で、「徒弟制度」であり、「賢慮」である。松岡さんの言葉では、「和」であり「荒」である。「公家のあわれ」であり「武家のあっぱれ」である。そして、神仏習合の様に、それらを包摂する力である。そして、田坂さんの言葉では、「働く=端を楽にする」という意識であり、「自然との共生」である。
それらは、「引き継ぐもの」には、必ずしも入らない。なぜならば、それらの重要な価値観を、日本人は既に失っている可能性があるからだ。
僕は、それらの価値観は、内村鑑三著の『代表的日本人』や陽明学の思想の中に全て書かれていると思っている。歴史を遡れば、ここにあったのだ。その価値観を「呼び戻せ」ば、良いだけなのだ。新たに創る必要も無い。だが、一度捨てたものを呼び戻すのは、容易ではない。だからこそ、努力をして、その良き価値観に触れ続ける必要があるのだ。
これからの乱世を迎えるリーダーには、哲学や信念が必要になる。その基盤となるのは、実は自らの故郷の偉人や日本の歴史に埋もれている気がする。これが、櫻井よし子さんを含む、知の巨人からのメッセージであった。
筆者注記:ちなみに、今回の議論は、可能な限り全て、GLOBIS.JP でオープンにします。問題意識を共有し、一緒に考え、行動していきましょう。
さて、第3回G1サミットが終わった。これから、新たに覚醒した「日本のリーダー」としてやるべきことは、山積している。G1のオープニング・スピーチで、僕は、実は次の様に述べていたのだ。
「日本が下降曲線になり、海外での存在感が低下している中で、僕は民間の立場で何ができるかを考え続けて来た。必死になって考えた。できることは、限られている。でも、やるべきことをしっかりとやろう、と決めて、自分の中で次の3つをすることに決めた。
1番目が、海外に突き抜けて活躍し、日本の存在感を自らが高めることだ。努力に努力を重ね、失敗をしながらも、やっとのことで、ダボス会議でも登壇する機会を持てるようになった。今や、世界最高峰の会合で、スピーチする存在になったのだ。
グロービス経営大学院も日本No.1でなくアジアNo.1を目指すのだ。フィナンシャル・タイムズ紙やエコノミスト誌には、グロービスのロゴとともに、僕の顔写真入りの広告が誇らしげに掲載されている。僕の著書も英語で発売しようと思っている。ハーバードのケースにも取り上げられた。
このように活躍すれば、松井選手、イチロー選手、更には香川選手、長友選手の活躍のように、『日本人は凄い』ということになるであろう。
2番目には、数多くの人に、夢と勇気と知恵を与えるコミュニケーションをしよう、と決めたのだ。だからこそ、ツイッター、ブログ、本を書いているし、スピーチも頻繁に行い、取材も受けている。『日本がダメだ』と思っている多くの人に、夢と勇気と知恵を与えるのだ。これをやり続けて来た。
そして、3番目にやろうと決めたのが、このG1サミットだ。いわゆる、『日本版ダボス会議』。いやそれを超えるものだ。なぜならば、G1の真の目的は、日本や世界を良くする仲間づくりだからだ。その仲間が様々な分野から集い、様々な諸問題を語り合い、日本そしてゆくゆくは、世界のビジョンを描き、行動するのだ。その行動の仲間づくりなのだ。このG1を、やることを決めたのだ」。
こう話をした。そして、成功して終わってしまうと、更に次にやるべきことを思いつく。それは、「日本のビジョン創り」だ。僕が、以前から言っている、「100の行動」だ。それと同時に、G1の熱気と勇気を多くの人に「伝染」させ、行動させることだ。そのために、G1医療、G1観光、G1スポーツなど、各方面でのイニシアティブが必要になる。それを可能な限りオープンに実践することだ。
そのためには、僕の時間を確保しなければならない。何かを犠牲にしなければならない。ま、それも宿命なのかもしれない。日本の現況を考えると、ガンガンにやらないと話にならないからだ。ま、たった一度の人生、面白く生き抜きたい。
今後、僕は、世界に発信しながらも、G1の活動、更には、「100の行動」プロジェクトにまい進することになろう。「次代」ではなく、今の日本のリーダーとしての自覚を持つ必要があるからだ。そして、多くの人々に語りかけるのだ。
「変革の戦士」よ、皆で立ちあがろうではないか。そして、繋がり合おうではないか。僕は、ツイッターのハッシュタグ「#G1summit」を全て読む。意見、提案、感想など大歓迎だ。
いよいよ「行動」に移す時がきたのだ。
僕らの手で、日本の未来を変える時が来たのだ。
子供達が寝ているベッドに戻ろう。この子供達は、1億円近くの借金の負担をすることになるのだ。彼らに良い未来を残そうではないか。
2011年2月15日
三番町の自宅にてツイッターを基に作成
堀義人