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ダボス会議2011~(3)国のプレゼンス

投稿日:2011/02/02更新日:2024/11/26

今回のダボス会議で感じたことの一つが、「中国に対する風当たりの強さ」、であった。なぜ中国に対する風当たりが強いかと言うと、いろんな理由があるが、「中国のトップが、今年来ていないからだ」、と竹中平蔵さんは主張する。

今年は、米、英、仏、独、露の主要国のトップがほぼ出揃った(米国だけ、大統領以外でもトップと見なされる)。中国の不在は、とても印象的でもあった。日本からは、菅総理が登場した。

なぜトップが来ることが重要かを今から説明しよう。そのためには、先ずは「ダボス会議とは何か」を説明する必要がある。

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ダボス会議には、世界数十億人の中から2000人余りしか参加できない。その2000人余りがパワフルなのだ。名簿をめくれば、その理由がわかる。世界の先進国の国家主席が先ず名を連ね、国連事務総長を含む、ほぼ全ての国際機関のトップが集う。OECD、世界銀行、IMF、WTO等だ。更に、地域を代表する機関のトップも集う。EU、欧州中央銀行、アラブ連盟等だ。メディアのトップ、学者、文化人。そして、世界を代表する1000社の企業トップ。社会起業家、グローバルに活躍する若手のリーダー、さらにテック・パイオニア達だ。

いわば世界を現在動かしているリーダーがほぼ全員結集しているのだ。ダボス会議の面白さは、他の会議と比較すると、その広がりにある。例えば、G20等には政治家しか来ないが、ここでは全ての分野のリーダーが集うのだ。

招待されるのは大変だし、ましてや、登壇するのは更に大変だ。各国とも、多くの人を出席させ、登壇させたいと思っている。登壇=プレゼンス=影響力=パワー、だからだ。ダボスの場にいて存在感を示せば、自国の発言力が増すのだ。

「自国の発言力が低下して何が問題か?」と思う方もいるだろうが、発言力の低下は、不利な条件を呑まされる状況をつくりだす。「弱小国は、強国の狭間で悪者にされないことから逃れることで、精いっぱいなのだ」と欧州のトップがかつて述べた言葉を思い出す。自国の発言力の低下は、不利な状況に置かれる事を意味するのだ。

従い、このダボス会議は、個人としての存在感を示す場でもありながらも、国の戦いの場でもある。そういう意味では、僕には、この時期に二つの「日本代表」の戦いがある、と思っている。アジア大会のサッカーの決勝戦で戦う日本代表と、ダボス会議における日本のプレゼンスを高めるための「日本代表」とである。「そんな大げさな」と言われるかもしれないが、このダボスの場は、政治・経済・文化の各国の力を誇示する戦いの場だと、僕は認識している。

その高い次元で今「戦うことができている」のが、緒方貞子氏(JICA理事長、元国連難民高等弁務官)であり、竹中平蔵氏(元経済財政・金融担当大臣)であり、川口順子氏(元外務大臣)だ。そして、長谷川閑史氏(武田薬品工業社長、経済同友会次期代表幹事)がそこに加わる。立場が無いと、なかなかそこには加われない。僕は、全く立場が無いので、自力で切り開いていくしかない。僕の次元が高くなれば、日本のパワーが更に増すのだ。日本のパワーが増すとアジアの力も上がるのだ。

では、どうやって自力で道を切り開くのか。それは、簡単だ。自分の能力を高め、認めてもらうことだ。このダボスの場は、「リーダーの品評会」の場でもあるとコラム「ダボス会議2011~(1)リーダーの品評会」でも書いた。僕が、書いてきたようなリーダーの能力評価を、参加者が皆行っているのだ。当然、僕自身も周りから評価されていることを感じている。

その各自の評価で、「面白い」と思われたら、仲間に加えられ、様々なプライベートの場にも呼ばれることになる。黙っていれば無視されるだけだ。従い、積極的に且つさりげなく自分をアピールする。その繰り返しの中で、確実に評価が上がり、会える人の質も上がり、プライベートな場にも招待されていくのだ。

印象深かったのが、僕のハーバードの同窓生で、「パワーなんかいらない」風の雰囲気がある人が、ある私的会合に呼ばれたことをとても喜んでいた。約束の時間になっても彼は、現れない。遅れて来た彼が、僕に言ったのが、「ごめん。中座するともう呼ばれなくなるから、できなかった」、だ。

ただ、いくら個人の能力が高くても、自らを背負っている組織や肩書が評価されなければ、意味がない。逆に組織や肩書が立派でも、能力が無ければ相手にされないのだ。僕の事例で言うと、グロービスの評価が上がると、僕の発言力が増す。僕の能力が評価されると、グロービスの地位も上がるのだ。

僕は、個人としてパワーを持ちたいとは思わない。だが、日本の存在感が低下するのは、耐えられない。サッカーをやっているならば、アジアカップには、「日本代表」として呼ばれたい。当然ピッチに立ちたいし、どうせやるならば優勝したい。同様に、ダボスには呼ばれたいし、ピッチに立ち(登壇し)、勝ちたい(評価されたい)のだ。

その登壇(戦い)の一番重要な「スペシャル・アドレス」の場には、国家のトップしか座れない。小国は、トップでも、その場を与えられない。この「スペシャル・アドレス」の時間帯は、ほぼ全てのセッションが休みとなる。普段は、10~20ぐらいのセッションが同時並行的に開催されているが、この時間帯だけは全てストップするのだ。つまり、多くの人が集まりやすくなっている。そして日本からは、その場に菅総理が立つのだ。

「国内では異論があっても、外に向けては、日本代表として一枚岩になるべし」、というのが僕の見解だ。国内では、政治的に議論を戦わせても、対外的には、菅総理は現時点での日本の顔だ。全面的に応援しなければならない。スピーチが成功すれば、日本のイメージと株が上がるのだ。

僕にとっては、4回目にして初めて、ダボス会議の場で自国の総理を向かい入れることになった。過去の3回(森総理、福田総理、麻生総理)の時は、僕は不在だったからだ。

僕は、当初は、土曜日の朝にダボスを発つ予定だったが、菅さんが来る日程を聞き、急遽フライトを夕方に変更した。ダボスからチューリッヒへの帰路も、ヘリコプターでの移動に変えてしまった。ホテルの部屋で、「勿体ないから」と下着を自らが洗うような人間が、ヘリで移動するのだ。それだけの価値があると思ったからだ。

こうして、菅総理のスピーチの当日を迎えることになった。

2011年2月2日

三番町の自宅にて

堀義人

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