※本記事は、GLOBIS学び放題の学習コース、「ファイナンス 後編:事業価値評価編」の内容をもとにしています。実務で活用する方法など、より詳しく企業価値評価について知りたい方は、ぜひ動画をご覧ください。

事業価値評価とは何か?
事業価値評価とは、企業や事業に「いくらの値段がつくか」を客観的に算出する考え方です。
「この会社は将来性がある」「ユニークなビジネスモデルだ」などの定性的評価だけでは、投資判断や企業買収の根拠としては弱くなってしまいます。そこで重要になるのが、お金の流れ(キャッシュフロー)をベースに、具体的な数値として価値を評価する手法です。
これにより、買収価格や投資の妥当性を理論的に説明することが可能になります。
なぜ「利益」ではなく「キャッシュフロー」に注目するのか?
財務分析でよく目にする「利益」ですが、事業価値評価においては「キャッシュフロー」の方が重視されます。
その理由は明確です。利益は会計上の概念であり、実際に企業の手元に入るお金とは限らないからです。たとえば売上があっても、掛け取引であれば実際の入金は数ヶ月後です。一方で、キャッシュフローは企業の現実的な資金繰りを反映する指標です。
また、投資家にとって重要なのは、「いつ」「いくら」のお金が戻ってくるかです。資金の時間的価値を考慮するには、キャッシュフローで評価する方がはるかに実態に即しているのです。
フリー・キャッシュフローとは何か?
事業価値評価では、フリー・キャッシュフロー(FCF)という概念を用います。
これは、企業が事業活動によって得たキャッシュから、将来の事業継続に必要な投資を差し引いた「自由に使えるお金」のこと。言い換えると、「債権者や株主などの資金提供者に自由に分配できる余剰キャッシュ」です。
フリー・キャッシュフローは企業の価値を測る「分子」の役割を担い、将来のFCFを予測して現在価値に変換することで、事業の金銭的価値を算出します。
企業が負う「資本コスト」とは?WACCの考え方
フリー・キャッシュフローの現在価値を求めるには、「割引率」というものが必要です。
この割引率の代表的な考え方がWACC(加重平均資本コスト)です。WACCとは、企業が資金を調達するために負うコストの平均値を表します。
資金提供者には、銀行のように利息を求める債権者もいれば、配当や株価上昇を期待する株主もいます。WACCはこれら両者が求めるリターンを加味して算出され、企業が最低限クリアすべき収益率として機能します。
企業はこのWACCを上回るリターンを出せなければ、投資家にとって魅力的な存在ではないと評価されてしまいます。
将来の予測が難しいときは?「残存価値」という考え方
企業の将来を予測するとき、「何年先まで見通すか」は常に悩ましい問題です。
一般的には5年程度の予測が多いですが、業種や設備の寿命などによって異なります。そして、それ以降の期間の価値をまとめて評価するのが「残存価値」です。
残存価値には2つの方法があります
- 清算法:事業を終了し、資産を売却した場合の価値
- 継続法:事業が今後も継続するという前提で、一定の成長率でキャッシュフローが伸びると仮定して評価
特に継続法は多くのケースで使われており、事業の本質的な価値を反映しやすいとされています。
なぜ事業価値評価が重要なのか?
最後に、なぜこれらのステップを踏んでまで事業価値を計算する必要があるのかを考えてみましょう。
それは、経営の意思決定において冷静かつ客観的な判断材料が必要だからです。新規事業への投資、M&A、資金調達、企業価値向上戦略…。どの場面でも「この事業はいくらの価値があるのか?」という問いへの答えが求められます。
また、フリー・キャッシュフローやWACCといった考え方は、企業の収益性・効率性・リスクのバランスを知るための重要な指標でもあります。
まとめ:ファイナンスの考え方を実務に活かす第一歩
本記事では、数式を用いずに事業価値評価の基本的な考え方を紹介しました。
- 利益ではなくキャッシュフローに注目する
- 事業の価値はフリー・キャッシュフローの合計で決まる
- 割引率(WACC)は、企業が負う資本コストを反映する
- 将来の予測が難しい場合でも、残存価値という考え方で対応できる
こうした知識は、戦略的な投資判断やM&Aの意思決定、企業価値の適切な把握に欠かせません。
これらの概念をさらに深く理解し、実務で使えるスキルとして身につけたい方は、ぜひGLOBISの動画で実際の計算例を学んでみてください。
■実務で活用する方法など、より詳しくファイナンス 事業価値評価について知りたい方はこちら
■その他 ファイナンス 事業価値評価のポイントを学べるおすすめの動画はこちら
■GLOBIS 学び放題で、さらに学びを深めませんか?
GLOBIS 学び放題は、ビジネススクールを運営するグロービスの動画学習サービスです。
上記でご紹介した目標設定、マネジメントに関連する動画を始め、マーケティングや経営戦略など、14カテゴリのビジネススキルが学び放題。
▼特徴▼
- MBAほかで教える講師監修の高品質なビジネス動画を提供
- 17,800本以上の動画(※2025年4月時点)を毎月書籍1冊分の価格で見放題
- 1動画3分〜、スマホやアプリでいつでもどこでも学べる
- ビジネスの原理原則〜最新トレンドまで、仕事に役立つ実践的な知識を体系的に網羅
- 初級・中級・実践まで自分に合うレベルを選べる
- オンラインイベントやユーザー主催の勉強会などで、一緒に学ぶ仲間に出会える
第20回日本e-Learning大賞で厚生労働大臣賞を受賞!

ユーザーアンケートの結果、90%以上の利用者が高評価!

GLOBIS学び放題で、あなたの可能性を広げる一歩を始めませんか?
▼さらに詳しい情報や、無料体験はこちらから▼
