早いもので、グロービスMBAの前身であるGDBAプログラムが始まってから、もう9年が経つ。最初の卒業生を送り出したのが2005年だ。それから7年。グロービスの教育の3つの柱の一つでもある「人的ネットワークの構築」のためにも、リユニオン(同窓会)は、とても重要な役割を果たす。
一年以上も前から構想を練り、いよいよリユニオン当日を迎えることになった。グロービスは、卒業年よりも入学年を基本に考えている。今回の対象者は、2003年から2006年入学組だ。2006年よりグロービスは大学院化したので、東京校・大阪校ともGDBAとMBA双方のプログラムの参加者により構成された。
同窓会をただ単に「飲み食いとネットワークの場」にしてはもったいない。せっかくならば、「創造と変革の志士」に刺激を与えるためにも、びっしりと学びができる様な場にしようと考えた。大阪からの来場者を考えると、朝9時半スタートが最も早い時間だ。そして当日帰る方を考えると夜7時半には終えたい。その時間の中でびっしりとプログラムを組むことにした。
70名以上の登録があった。「創造と変革の志士」達が、どれだけ成長しているかが楽しみだ。いよいよ当日を迎えた。自宅を出てラウンジに顔を出したら懐かしい方々ばかりだ。何だか、最初はちょっと照れ臭い気分だ。皆明らかに成長しているのを実感できた。やっと慣れて来て普通に交流できるようになってきた。
冒頭は僕の挨拶40分間。僕からは、「これから数千年と続くグロービスの歴史の中で、初めてのリユニオンを本日開催できてとても嬉しい。皆さんはグロービスの黎明期に、海のものとも山のものともなるかわからない、グロービスを恐らくは最終学歴として選んでくれたパイオニアだ。僕らは、グロービスを発展させるための運命共同体でもある。一緒になって成長しよう」と切り出し、スピーチを始めた。
先ずは、「創造と変革に必要な5つの要素」を話し、グロービスがアジアNo.1に向けて何をしているかを説明した。彼らが卒業してからのグロービスの発展は、(自分で言うのも何だけど)本当に目覚ましい。5キャンパス体制、日英双方の言語、フルタイムMBAのスタート、更には新たなカリキュラムの増設などだ。アジアNo.1に向けて更に突き抜けるほどのイノベーションをしていきたいと締めくくった。
次は、二つの教室に分かれる分科会セッションだ。僕が座ったのは、「新メディア時代のブランディング」。実に面白い。マーケティング3.0は、「人間が中心。差別化から価値へ」。1.0 は商品が中心、2.0は顧客が中心。ビデオクリップを観ながら進化を学ぶ。
リユニオンでは、教員が研究してきた最新の経営トレンドを卒業生に教える。卒業生がグロービスの教室に戻り、学び、明日からの「創造と変革」に活かすコンセプトだ。平日の昼間は教室が空いているので、祝日を選び開催している。僕にとっても新鮮な学びが多い。
新しいマーケティング;Valueに関して「共感」を生み、「自分ごと化」させ、新しいメディアで繋がり、伝える。高度なバランス感覚、スピード感、顧客・社会との対話が必要。心理学者を使ってメッセージを分析する。(嶋田教員)
新しいマーケティング=3つのR。Relationship;ブランドをパートナー化。参加、貢献、共生へ。Reputation;ブランドを評判化。発信、推奨、伝道へ。Relevance:ブランドを自分ごと化。認知、受容、確信へ。支援者、消費者を巻き込むことが鍵。(嶋田教員)
リユニオン分科会第一部のもう一つのセッションは、「6重苦に立ち向かう日本企業の戦略像」だ。コマツやインドネシアの電機メーカーの事例を駆使した説明が行われている。卒業生が一生懸命にメモをとっている。グロービスは、本当に知の集積・発信拠点になっていると実感できる。
ランチタイムは、ラウンジを使ったネットワーキングだ。皆嬉しそうだ。僕も、終始ニコニコだ。「いや~リユニオンがこんなに楽しいものとは、思わなかった」と言うのが率直な印象だ。
食後に、リユニオン分科会の第二部が始まった。僕が座ったのは、アカウンティングのファカルティ(松田教員)が企画している「アップルとフォックスコン」のセッションだ。隣はヒト系が企画している「パワーと影響力」だ。今回のリユニオンは、各ファカルティグループごとに最新研究を披露する仕組みだ。
「アップルとフォックスコン」というタイトルに惹かれた人々はIT系が多いのだが、どうやら会計ファカルティが企画しているセッションとは知らなかったようだ。PL、BSの数字が並ぶ紙が配られて、静かにペンを走らせて問題を解いている。久しぶりの問題に、戸惑っているのかな!?
パワーと影響力;パワー源泉には、ポジション、パーソナル、リレーショナルなものがある。パワーによってのみでなく、合理的、感情的、生理的要因(無意識)で人々は動く。無意識な面に訴えかけるためには、社会心理学を理解し、駆使する必要がある。(芹沢教員)
「ティピング・ポイント」多くの人々を動かすために。1)少数のキーマンを抑える。2)粘り強くメッセージを伝える。3)背景を活用する。(芹沢教員)。現場で使えるヒントが満載である。
グロービスのリユニオン最後の分科会セッションは、創造系ファカルティが企画するネットビジネス戦略(加藤教員)と変革系ファカルティによる「変革を導く“現実直視力”とは?」(鎌田教員)だ。最後の分科会は、グロービスらしく「創造」と「変革」で締めくくった。
締めの全体会セッションは、卒業生パネル「創造と変革の志士に求められる役割とは」だ。上場企業の執行役員、ベンチャー企業に転職した社長、自らインキュベーターを立ち上げた起業家3人によるパネルだ。皆が成長しているのが、実感できる。
先に行ったグロービス卒業生へのアンケート結果は驚異的だった。2007年以前に卒業した人々の年収は、平均で(平均ですよ!)50%も上昇している。2010年以前の卒業生は平均で20%以上も年収アップだ。MBA前が7%程度だった執行役員以上の比率は今や20%以上になっている。凄い!
学びの部を終えて、会場を変えての懇親会だ。懇親会だけに駆けつけてくれた卒業生もいた。そして、グロービス初のリユニオンを終えた。数多くの卒業生にお会いできて嬉しかった。「創造と変革の志士」達の成長は輝かしく、眩しい程だ。
僕は、小雨降る中、帰路心の中で呟いた。「グロービスも負けずに成長します。僕は、アジアNo.1に相応しい学長に必ずなりますので、皆さんもNo.1に相応しい卒業生になってください」と。
2012年9月18日
ボストンに向かう機内にて執筆
堀義人