東日本大震災から10年 今、読みたい5冊

2011年3月11日から今年は、10年の節目の年です。東日本大震災を忘れずに振り返り、我々は何を学ぶべきか。5冊の書籍をご紹介します。

日本という国が持つ心根について考えさせてくれる1冊

執筆者:村尾佳子 グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長

テレビから流れてくる映像に言葉を失ったあの日。各種報道から我々の想像をはるかに超える被害状況を目の当たりにして、自分に一体何ができるのだろうか?と居ても立っても居られなくなり、4月後半の1週間、休みをもらって石巻に赴いた。

避難所で多くの被災者の皆さんに触れ、深く傷ついた心を抱えながら、それでもなお前を向き自らを奮い立たせようとされる姿に、多くの勇気をもらい、さらに次から次へと届く個人や企業からの支援物資の山を見て、「日本という国に生まれてよかった」と心底感じたのが昨日のことのように思い出される。

この書籍は、震災復興に挑み、そしてそれを支えた7つの企業の現場の風景を通して、平時ではなく危機の状況下でこそさらけ出される日本企業の経営の在り方を余すことなく伝えてくれる。震災から10年、コロナ禍で再び企業の在り方があらわになっている今、改めて日本という国が持つ心根について本書を通してじっくり考えてみてはどうか。

日本型「無私」の経営力~震災復興に挑む七つの現場~

著者:グロービス経営大学院,、田久保善彦 発行日:2012/11/16 価格:814円 発売元:光文社新書

相互理解があって、100%の連携が可能になる

執筆者:髙原康次 グロービス経営大学院 教員/代表室ベンチャー・サポート・チームリーダー

著者のエルドリッヂ氏は、大阪大学大学院の教員を経て、発災時は在沖縄海兵隊政務外交部次長として勤務していた。震災直後に仙台入りし、気仙沼市大島との文化交流プログラムを推進してきた人物だ。本書では、大島と海兵隊の心温まる交流の姿が描かれると同時に、次の災害に向けた日米連携についての課題を示している。

米軍は「トモダチ作戦」を発動し、最大約2万4,500名・艦船24隻・航空機189機を投入した。自衛隊10万名、艦艇59隻、航空機540機に次ぐ規模であり、日米の大規模な共同作戦となった。日本関係者が半年かかると思った仙台空港を1か月で利用可能にしたり、孤島となり水や電気という基本的なインフラが3月終わりまで利用不能であった宮城県気仙沼市大島での復旧活動を行ったり、福島原発事故への放射線等専門部隊の派遣を行ったり――と日米関係の深さと友誼を深めた。

著しい成果をあげているように見えるが、本書の中では、在日アメリカ海兵隊トップの「海兵隊はおそらくその能力の僅か1%しか使っていなかった」(p.71)の言葉が紹介されている。実際、3月17日に東北近海に展開していた艦隊を活用して大島に海兵隊が上陸を果たしたのは4月1日。その間、大島の人たちは救援を待ち、海兵隊員たちは力を余らせ不満を抱えていた。発災時にいち早く救助に入るためには、日米の壁、そしてそれぞれの組織内にある壁を超えた日常の相互理解の重要性を説いている。

本書は、有事には人の助けを借りる勇気を持つこと。そのためには、隣人との理解を日ごろから深めておくことの大切さを思い出させてくれる。

『トモダチ作戦 気仙沼大島と米軍海兵隊の奇跡の“絆”』

著者:ロバート・D・エルドリッヂ 発行日:2017/2/17 価格:616円 発売元:集英社文庫  

ハーバードと東北が生んだ奇跡のフィールドワークを追体験できる一冊

執筆者:山中礼二 KIBOW社会投資 ディレクター/グロービス経営大学院 教員

 2012年から6年間、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のMBA生たちは東北を訪れ、被災地で事業を創造または再生しようとしているビジネスリーダーたちへのコンサルティングを行った。HBSの学生たちは、東北の人たちの思いに触れ、その強い志に衝撃を受け、涙を流し、そして11日間という限られた時間で成果を出した。本書は東北のリーダーたちとHBS生たちの間の交流を伝えた貴重な記録である。

HBSにとってIXP(Immersion Experience Program)というのは、建学以来100年ぶりの大改革の結果生まれたフィールドワークだ。知識ばかり豊かな人間ではなく、自らのあり方(Being)を確立し、学びを実行する(Doing)ことを促すために作られたプログラムがIXPである。世界各国における多様なフィールドワークがある中、特に高い評価を得て6年間という異例な長期間継続されたプログラムが、東北IXPだった。

 HBSのMBA生たちは、東北のリーダーたちに会って衝撃を受ける。その志、復興にかける思いと献身、地域コミュニティに対する愛情などに触れて、「何が成功なのか」という前提を大きく覆される。福島の高校生や女川の中学生と交流した際には、夢や未来を語る被災地の若者の姿を見て「畏れさえ抱いた」。(参加者のコメント)

 一方で東北の人たちも、HBS生たちのあり方に強い印象を受けた。HBS生はどこを訪問しても謙虚に地元の人たちの話を聞き、矢継ぎ早に本質的な質問をして、創造的に提案を創り上げたという。

 この両者の交流の結果、何が生まれたのか。私たち読者は、HBS生の学びを追体験できて、かつ登場人物たちの「あり方」(Being)から学ぶことが多い。

『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか ~世界トップのビジネススクールが伝えたいビジネスの本質』

著者:山崎 繭加 監修:竹内 弘高 発行日:2016/8/19 価格:1760円 発売元:ダイヤモンド社

いかなる状況になっても使命を果たす

執筆者:梶屋拓朗 グロービス経営大学院 教員

本書には、人間として、地域に寄り添い続けた河北新報社の一人ひとりの、感情と行動が綴られている。

 「白河以北一山百文(東北は山一つで百文の値打ちしかない)」という蔑視に対し、あえて題字に「河北」と入れたという。その創刊の精神を受け継ぐ同社の地元への想いを感じることができる。

 震災当時、河北新報社自身が被災し、大きな打撃を受けた。社員の安否確認、情報の混乱、サーバーの破壊などで新聞発行そのものが危うくなった。そのなかにあって、報道を担うものとして、いかなる状況になっても被災者に寄り添い、新聞を発行すると決めた。一人ひとりが様々な葛藤の中で、考え抜き決断し、やり切る。そして、希望をもち、顔を上げて、歩みを進める。

余分なものがそぎ落とされた言葉が、様々な人生のリアルを読み手の心に届ける。あまりにも理不尽な自然の仕打ち、そのなかでの人間の力強さ、優しさにあふれ、涙が流れる。

「では私は、どう生きるのか。生き切るのか」読み進めるたびに、生きる姿勢を問われる気がする。同時に、「命ある限り、誇り高く、生きていかねばならぬ」と、エールをもらったような気持ちもする。

私も震災下にボランティアで東北に入り、グロービス経営大学院仙台校の立ち上げと運営を使命に、十年仙台に暮らした。そこにはいつも河北新報があった。百名近くの河北新報社の方と交流し、支えてもらい、感謝している。今、改めて本書を読み、自らの使命を果たすために行動できているか、自身をふりかえってみてはどうか。

『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙』

著者:河北新報社 発行日:2011/10/27 価格:2980円 発売元:文藝春秋

復興のなかでうまれたミガキイチゴと熱いリーダー

齋藤 麻理子 グロービス経営大学院 スチューデント・オフィス/研究員

2歳の娘はいちごが大好物だ。朝起きた瞬間から、いちごある?とキラキラと目を輝かせながら聞いてくる。今日は特別なものがあるよ、と伝える。つやつやと赤く輝く宝石のような果物を頬張る姿は、周りまでをも幸せにしてくれる。

娘が今、まさに口にしているのは、宮城県山元町産「ミガキイチゴ」。グッドデザイン賞を受賞したパッケージやスパークリングワインをご存知の方も多いだろう。このいちご、東日本大震災直後、復興の最中から創られたものだと知っている人はどれくらいいるのだろうか。

「ミガキイチゴ」は、グロービス経営大学院の卒業生であり(震災当時在学中)、もともと東京でIT企業を経営していた1人の起業家によって生み出された。壊滅的な被害にあった故郷を目の当たりにし、絶望感を抱きながらも地元を、産業を、立て直すために立ち上がった背景と意気込みが本書に書かれている。門外漢だった農業で、助けてくれた仲間の話や失敗談も載せ、熱い想いと未来志向に胸が打たれる。惨い被害と厳しい現実もあるが、クスっとなるような微笑ましい描写も意識的に盛り込んでいるように思う。著者の魅力の一つであり、経営者の強みとも言われるチャーミングさ、一縷の光を希望にかえる強さが伝わってくる。

震災後、グロービスの仙台校を立ち上げると決まった際にも、いち早く応援してくださった。「この場所で経営を学ぶことに意味がある。学ぶことで、行動が、環境が変わっていく」――岩佐氏が自らの経験を元に伝えてくれた言葉は、受講生だけでなく、私たち関わるスタッフにも勇気をくれた。私自身、このような卒業生の存在が心強く、誇りに思い、支えとなった。その魅力で、言葉の力で、東北での仲間の輪を広げてくれた。熱い想いと冷静な判断力を併せ持つリーダーは、未だ混沌とした社会に生きる私たちに、とびきり美味しいイチゴと共に、一歩踏み出すきっかけを今も届けてくれる。

『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』

著者:岩佐 大輝 発行日:2014/3/14 価格:1430円 発売元:ダイヤモンド社

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