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ハーバード歴史博士による『水戸維新』、日本語版が先行出版へ

投稿日:2021/01/28更新日:2021/03/10

明治維新と水戸をテーマにした歴史書『水戸維新 近代日本はかくして創られた』が、PHP研究所より2021年1月28日に出版される。ハーバード歴史博士であるマイケル・ソントン氏が英語で執筆したものの日本語版を先行的に発刊し、今年中に英語版が遅れて米国で出版される予定だ。本書の出版企画を思いついたのは、2016年2月に発足した水戸ど真ん中再生プロジェクトがきっかけだ。このコラムで、その経緯と趣旨を簡単に説明したい。

「ふるさと水戸を盛り上げたい」

僕は、水戸の歴史が深く根ざす場所で育ってきた。小学校は徳川斉昭公が藤田東湖に命じて創設した「弘道館」の跡地にできた三の丸小学校、中学校は徳川光圀公が大日本史を編纂するために設立した「彰考館」の跡地にできた水戸二中。そして高校が当時の「水戸城本丸」にあたる水戸一高だ。「尊王攘夷」の思想が根付くこの地で、「文武不岐」の精神で勉学と水泳とに励み、「一張一弛」の理念に従い遊んできた。

しかし、1981年に高校を卒業して京都大学に進学して以降、両親の東京転勤もあり、水戸とは疎遠となってしまった。その間に商社に就職し、ハーバードに留学し、グロービスを設立し、子供5人を授かり、「日本を良くする」G1を立ち上げた。

2015年8月、水戸スイミングクラブの同窓会に参加するため久しぶりにふるさと水戸に戻ってきて、街なかの光景に愕然としてしまった。通行客が途絶え、廃墟となったデパートやシャッター街と空き地ばかりだったからだ。

過去30年以上も水戸に何も貢献できなかったことに深く反省し、高橋水戸市長に直談判して発足したのが「水戸ど真ん中再生プロジェクト」。思いはただ「ふるさと水戸を盛り上げたい」、この一点だけだ。

まず着手したのが、プロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」に経営参画しオーナーとなったことだ。そして、「グロービス経営大学院茨城水戸・特設キャンパス」の創設、水戸ど真ん中の空地にアリーナ・カフェ・スタジオ・公園の複合施設を建設、偕楽園の横と千波湖畔の土地を取得して観光地としての魅力を増す計画を練るなど、矢継ぎ早に実行していった。さらに、茨城県で唯一の民間県域放送局である茨城放送の経営権も取得して改革を進めてきた。

こうした動きの傍らで、「明治維新を中心的な立場で完遂した水戸の歴史を、日本・世界の人々にもっと知ってほしい」という思いが常にあった。2016年、知人を通して、本書の筆者であるマイケル・ソントン博士を紹介された。意気投合し、その場で本書の英語での執筆・出版をお願いすると、幸いマイケルは快く引き受けてくれた。

そこから、M-SPO代表でグロービス水戸キャンパスリーダーの川﨑篤之とともに、プロジェクトメンバーを組成した。日本語本執筆の中心人物が、僕のスイミングの後輩でもある、清真学園の稲葉寿朗教諭だ。翻訳の監修、史実の確認、資料の整理など全力でサポートしてくれた。

2018年と2020年にはクラウドファンディングを実施して、合計900万円規模の金額が集まって執筆・出版費用に充当した。寄付してくださった数多くの方々には、この場を借りて深く御礼を申し上げたい。

コンセプトは「明治維新は水戸維新」

さて、本書のコンセプトは、明快である。僕は明治維新を起承転結でとらえている。 

 起:光圀公による大日本史の編纂を因とし立原翠軒を経て「尊王攘夷の思想」が醸成された

 承:会沢正志斎や藤田東湖らにより水戸学の精神が「薩長土肥へ伝」し

 転:斉昭公の時代に「桜田門外の変」が勃発し、維新へと換し、

 結:慶喜公による「大政奉還」により、明治維新が完する。

水戸学の尊王攘夷思想の醸成と、幕末の志士らへの伝承。桜田門外の変から大政奉還まで、明治維新の起承転結は、水戸によって完遂されたと言っても過言では無い。200年以上の時を超えて貫かれた水戸の志と大義が、全国の志士たちを鼓舞し新たな時代の幕開けの原動力となっていることは間違いない。

つまり、明治維新とはまさに水戸維新なのである。

ところが、歴史は勝者が作るものと言われるように、維新後の薩長を中心とした藩閥政治の中で、水戸の姿は消し去られていったのであろう。水戸っぽとしてはとても寂しいことだ。僕は水戸こそが現代の礎を築いたものと、確信している。

そこで、上記の起承転結に登場する6人の偉人、

 ・徳川光圀
 ・立原翠軒
 ・会沢正志斎
 ・藤田東湖
 ・徳川斉昭
 ・徳川慶喜

彼らの列伝を軸に、無名ながらそれぞれの時代を彩る人物たちのコラムも加えて、明治維新を振り返るのが本書の目的である。

構成・執筆に当たっては以下の4点の方針を立てた。

1)外国人や歴史に興味がない人にもわかりやすいものにする。

2) 歴史書だけど、人物にフォーカスをして面白いものにする。

3)6人の人物の哲学や思いそして風景や遭遇した事件を章ごとに描くことにより、明治維新の源流となった水戸学から、幕末まで時代の流れを追うことができるようにする。

4)コラムや写真・地図などを多用して、飽きないものにする。

いま出来上がった本書を手にして、ソントン氏、稲葉氏のおかげで、こうした意図は十分に達成されたと感じている。感謝です。

ぜひ本書を多くの方に読んでもらい、水戸を訪問してもらい、この地で明治維新の源流から大政奉還に至るまでの息吹を感じ取って頂きたい。そして、VUCAの時代と言われるこの現代において、創造と変革のリーダーとなる志に火をつけて頂くことを切に願っている。

2020年1月28日

堀義人

水戸維新  近代日本はかくして創られた
著者:マイケル・ソントン 発行日:2021/1/28 価格:1870 円 発行元:PHP研究所

 

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